『文藝別冊 バッハ』掲載の
「ジャンル別 3段階鑑賞法」では
古楽器演奏だけでなく
モダン楽器による演奏も
推奨盤としてあげられています。
声楽曲で
モダン楽器による演奏となれば
カール・リヒターの一人勝ちかと思いきや
《クリスマス・オラトリオ》では
ヘルムート・リリンク盤が
まずトップにあがっています。
「リリンクは「やや単調」と感じる方は、
華やかな演奏を追求した
シュライアー盤を聴いてもいい」
と書いてから、もう一点あげるなら
という前書き付きで
リヒター盤があげられています。
リヒター盤を
最後にあげていながら
そのあとすぐに
リヒター盤の聴きどころを
260字近くかけて語っているので
やっぱリヒター盤が一番なんじゃあ
と思ってしまうんですけど
残念ながらリヒター盤は
いまだに入手できておりません。
代わりに
というとあれですけど
『文藝別冊 バッハ』再読後
秋葉原のBOOK•OFFで見つけたのが
ペーター・シュライアー盤でした。
(ポリグラム PHCP-20198/200、1998.7.15)
録音は
1986年11月21日〜12月5日と
1987年1月3〜5日に
ドレスデンの聖ルカ教会で
行なわれました。
ベルリンの壁が崩壊したのが
1989年11月9日ですから
まだ東ドイツがあったころの演奏
ということになります。
演奏は
別にルートヴィッヒ・ギュットラー率いる
トランペット・アンサンブルが加わり
合唱はライプツィヒ放送合唱団で
シュライアーは指揮の他
福音史家を歌っています。
こういうのって
「歌い振り」
というのかしらん。( ̄▽ ̄)
ソリストは
ヘレン・ドナート(S)
マルヤーナ・リポフシェク(A)
エーベルハルト・ビュヒナー(T)
ロベルト・ホル(B)です。
第1部・第7曲
ソプラノがコラールを歌い
バスがレチタティーヴォで
そのフレーズに解説を加える曲は
ライナーに
「ソプラノ・イン・リピエノ」
とありますから
合唱団からの選抜メンバーですね。
そのコラールを歌うソプラノは
まるで少年合唱のように聴こえますが
もしかしたら実際に少年なのしらん。
この曲に限らず
コラール合唱は
これが伝統の力というやつなのか
大合唱ということも与って
説得力が感じられました。
加藤拓未は
リリンク盤と比べて
「華やか演奏を追求した」のが
シュライアー盤だと
書いています。
リリンク盤に比べると
華やかなのかどうかは
聴き比べてみなければ
分かるはずもなく
これは来年のクリスマスまでの
宿題ですね。
なお、こちらのディスクは
第3部だから3枚組
と意図したわけではありませんけど
タスキ(オビ)にもあるとおり
3枚組になります。
3枚組ディスクお馴染みの
スポンジも入ってました。( ̄▽ ̄)
経年劣化の形跡も見られず
比較的状態がいいのが不思議。
以下、記事タイトルの内容に入ります。
バッハの四大宗教曲のひとつ
《クリスマス・オラトリオ》BWV238 が
6つのカンタータをひとつにした
いわゆる連作長編のような構成で
初演も6日に分けて演奏されたことは
前々回のブログでも書いた通りです。
1734年12月25日に
1734年12月26日に初演されて
第3部〈天を統べたもう君よ〉はその翌日
1734年12月27日に初演されました。
クリスマスの祝日が
三が日もあったことになります。
というわけで
それに合わせて当ブログでも
3日連続で取り上げようと思いつき
いよいよ本日12月27日は
第3部のご案内となります。
第2部で
救世主の誕生を
天使から告げられた羊飼いたちは
相談の結果、ベツレヘムに向かい
確かめることにします。
ベツレヘムに行ってみると
確かに飼葉桶の中で
イエスが眠っており
羊飼いたちから
天使に言われてやってきた
と話されたマリアが驚く一方
羊飼いたちは
神を讃美しながら帰路に着く
……という経緯が歌われるのが
第3部の内容になります。
第1部以来ふたたび
ティンパニとトランペットが
鳴り響く冒頭合唱は
《鳴れ、太鼓よ! 響け、トランペットよ!》
BWV214 のアリアからの転用。
第6曲目
バスとアリアの二重唱は
BWV213 における
ヘラクレス(アルト)と
〈徳〉の精霊(テノール)との
二重唱の転用です。
第8曲目のアリアは当初
ザクセン選帝侯が
ライプツィヒを訪れた際
歓迎のために書かれた世俗カンタータ
《おのが幸を讃えよ、祝されしザクセン》
BWV215 のアリアを
転用しようとしたらしくて
その後、転用ではなく
オリジナルのアリアを書き下ろした
とされています。
旧作アリアの転用が多い
《クリスマス・オラトリオ》の中では
唯一のオリジナルなのだとか。
最後に冒頭合唱が再び歌われて
再びティンパニとトランペットが鳴り響き
3日間にわたる祝日のカンタータは
終了します。
第1日目のカンタータが
ティンパニとトランペットが鳴り響き
華やかに始まったのに対し
第2日目のカンタータは
パストラル風の旋律を基調として
穏やかに進行し
第3日目のカンタータで
再びティンパニと
トランペットが鳴り響き
華やかに幕を閉じる。
こういう構成は
3楽章形式のソナタで
急―緩―急という速度が
設定されていることを
連想させられますけど
バッハは当然それを意識してて
3日かけて3楽章形式の
歌によるソナタを完結させたものと
想像したくなる誘惑に囚われます。
こういうことに
昔、聴いた時には
気づきませんでした
(気づけませんでした)が
これも分けて聴いたおかげ
でしょうか。
もっとも第3部は
最初と最後の合唱こそ
ティンパニとトランペットが
派手に鳴り響きますけど
中間部分は落ち着いた感じで
ソプラノとバスの二重唱だけ
やや軽快かなという感じですから
全体を指して急楽章の曲といってしまうと
牽強付会の誹りは免れないかもしれず。
でも、思いついちゃったので
備忘も兼ねて書いておきます。(^^ゞ
というわけで
恒例によりまして
佐藤俊介の弾き振りによる
オランダ・バッハ協会の演奏を
貼り付けておきます。
例によってアドレスでも。
ソプラノとバスの二重唱が
なかなかいい雰囲気で
歌われています。
アルトのアリアは
ソロ・ヴァイオリンが
オブリガートですので
佐藤俊介が華麗なソロを
披露しています。
ルドルフ・ルッツ指揮
スイス・バッハ財団の演奏も
あげておきましょう。
アドレスはこちら。
チャプター3で
56分8秒から始まります。
福音史家は
テノールのダニエル・ヨハンセンが継続。
フラウト・トラヴェルソの1人は
第2部でも参加していた
向山朝子でしょうか。
ソプラノはモニカ・マウフ
バスはドミニク・ヴェルナーで
ヴェルナーは《コーヒー・カンタータ》の
シュレンドリアンを歌っていた人ですね。
このお二人は合唱にも加わってますね。
アルトのテリー・ヴァイは
カウンターテナーで
ウィーン少年合唱団の
ソリストだったのだとか。
失礼ながら
ヴィジュアル的には
その面影はありませんけど
声はその頃を彷彿させるものが
あるような気がされました。
アルトのアリアは
マリアの心情を歌うので
女性が歌った方が
絵的にはピッタリなんですけどね。
ちなみにヴァイは
ミハエル・ホフシュテッター指揮
ノイマイヤー・コンソートの演奏する
《スターバト・マーテル》でも
歌っているようですが
そのディスク、確か買ったはず。
機会があれば
そのうち紹介しましょうか。
閑話休題。
《クリスマス・オラトリオ》第4部は
1735年1月1日に初演されました。
というわけで
《クリスマス・オラトリオ》を
各部ごとに聴こうシリーズは
ひとまずこれで終えることにします。
第4部を年明けに取り上げるかといえば
当ブログでは1月1日はいつも
干支にちなんだ小説を
紹介しているので
来年の1月1日をどうするか
今、悩んでいる最中だったり。
さて、どうなりますやら。( ̄▽ ̄)