先日、本の山が崩れた際
山の中に紛れ込んでいた1冊
『文藝別冊 バッハ』
(KAWADE夢ムック、2012)
が目にとまりました。
同書は以前にも一度
取り上げてますけど
その頃は
声楽系の曲への関心が薄く
さっと目を通したくらい
ではなかったかと思います。
今回、改めて読み直し
新たな気づきがあって
面白かったんですが
本日はクリスマスですので
《クリスマス・オラトリオ》を
取り上げようと思った次第。
『文藝別冊 バッハ』で
「ジャンル別 3段階鑑賞法」の
声楽曲篇を執筆しているのは
NHK FM《古楽の楽しみ》
パーソナリティーとして
その名に親しむようになった
加藤拓未です。
《クリスマス・オラトリオ》は
「バッハからの“クリスマス・プレゼント”」
と題した章を一章設けて
紹介されています。
そこで薦められている
古楽器演奏のディスクは
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
モンテヴェルディ合唱団&
イングリッシュ・バロック・ソロイスツのもの。
そのディスク、
たまたま持っています。
(ポリドール POCA-2138/9、1992.4.22)
ちょうど古楽にハマった頃に
新譜で買ったもので
アルヒーフBESTセレクションの
第34巻としてリリースされました。
録音は1987年1月に
ロンドンのアビーロード・スタジオで
行なわれています。
再発盤なので廉価盤になりますが
それでも当時の自分にとっては
ちょっと買うのが躊躇われる値段で
まあ、よく買ったなと
今となっては思いますね。
当時、ガーディナーは
アルヒーフ・レーベルに
バッハの四大宗教曲を録音し
カール・リヒターに変わる
新世代の(古楽による)録音として
注目を浴びていたのでした。
結局、ガーディナー指揮の
四大宗教曲のうち
買ったのが
本盤だけになったのは
明らかに懐事情のためでしょう。( ̄▽ ̄)
本盤は買ってから一度、
通しで聴いて
その後、何回か
聴いているかと思いますが
あまり興味を惹かれず。
バッハの四大宗教曲は
いずれも2〜3時間かかるので
繰り返し聴くとなると
よほど惹かれた曲だけになります。
自分にとっては
《ロ短調ミサ曲》が
それにあたりますけど
《クリスマス・オラトリオ》となると
繰り返して聴こうという気に
あまりなりませんで。
ですから
今回、聴き直すのは
かなり久しぶりになりますが
最近、ソプラノ独唱カンタータに
ハマったためでしょうか
以前に比べると
楽しむことができました。
《クリスマス・オラトリオ》は
通しで聴くと2時間半くらいかかりますが
実際は6つのカンタータで構成されている
いってみれば連作長編みたいなもので
初演も6日に分けて演奏されました。
現代のコンサートでは
通しで演奏されますし
本盤を買った当時の自分も
愚直に通しで聴こうとしてましたが
よく考えてみれば
1日に1部だけ聴いてもいいわけで
今回もご案内するのは第1部のみ。
オラトリオというのは
舞台での演技がないオペラ
みたいなもので
新旧両聖書から題材を採って
演奏会形式で奏されます。
第1部〈歓呼の声を放て、喜び踊れ〉は
1734年12月25日初演で
ルカ福音書・第2章に基づき
ベツレヘムの街に滞在中の
身重のマリアが産気づいて
馬小屋で出産し飼葉桶に寝かせる
という経緯が歌われていきます。
第1部の冒頭合唱は
ザクセン選帝侯妃の誕生日のために
作曲された世俗カンタータ
《鳴れ、太鼓よ! 響け、トランペットよ!》
BWV214 に基づいています。
太鼓はティンパニで
トランペットと併せて
祝祭的な気分を
いやが上にも盛りあげています。
トランペットのソロは
クリスピアン・スティール=パーキンスで
以前、ガーディナー指揮の
カンタータ第51番を取り上げた際
トランペットのソロが誰なのか
ライナーに書いてなくて
調べるはめになり
スティール=パーキンスだろうと
当たりをつけましたけど
今回の盤の情報から
妥当性が証拠づけられた感じ。
第8曲目のアリアも
同じカンタータから
転用されたもので
第4曲のアリアは
先日、当ブログでご案内した
《ヘラクレス・カンタータ》BWV213 の
アリアからの転用。
他に第5曲目のコラールが
《マタイ受難曲》でも
使われているもので
こちらはハンス・レオ・ハスラーの
〈わが心みだれさわぎ〉に
基づく旋律ですから
《マタイ》を聴いている人なら
ハッとさせられるでしょう。
面白いのは第7曲目で
ソプラノが降誕節コラールを歌い
その途中でバスが
フレーズの解説を
レチタティーヴォで歌う
という構成になっています。
第1部でアリアを歌うソリストは
アルトがメゾ・ソプラノの
アンネ・ゾフィー・フォン・オッターで
バスはオーラフ・ベアー。
福音史家のレチタティーヴォを歌うのは
テノールのアントニー・ロルフ・ジョンソン。
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター
という名前が載っているのを見て
おお、とか思えるのは
ソプラノ独唱カンタータ絡みで
最近、ソプラノ歌手に
関心を持っているが故ですね。
ただし第7曲目の
ソプラノが歌うコラールは
フォン・オッターのソロではなく
モンテヴェルディ合唱団から
ソロ・パート数名で
歌われています。
というわけで
文字ばかりでもなんですから
以下に動画を貼っておきます。
念のため以下にアドレスも貼り付けておきます。
演奏は
ヴァイオリニストの佐藤俊介が
弾き振りしている
オランダ・バッハ協会のものです。
アリアを歌うソリストは
アルトがウルリケ・マロッタ
バスがマティアス・ヘルム
テノールがダニエル・ヨハンセン。
こちらのブログでよく貼り付ける
ルドルフ・ルッツ指揮の
バッハ財団管弦楽団&合唱団のものは
全6部通しで演奏されているので
1部ずつ聴くという今回の趣旨に
うまく合わず
今回は見送りました。
アドレスだけ貼っておきます。
こちらも福音史家は
ダニエル・ヨハンセンですね。
ちなみに
第4部のソプラノは
当ブログではお馴染みの
ミリアム・フォイアージンガーです。
第1部を聴いただけの印象だと
オランダ・バッハ協会の演奏が
祝祭的な気分に溢れていて
華やかなのに対し
バッハ財団の演奏の方は
やや落ち着いた感じで
素朴さが優っている
といったところでしょうか。
バッハ財団版だと
第5曲目のコラールの
オルガン伴奏が印象的で
《マタイ》と違う
という感じがして
これは聴きものだと思います。