以前、バッハの
世俗カンタータ、すなわち
貴族や市井の人々の慶弔時用に作曲された
器楽伴奏つきの声楽曲について
書いたことがあります。
ただし
自分が世俗カンタータを
初めて聴いたのは
シュライヤー盤で、ではなく
エリー・アメリングと
コレギウム・アウレウム合奏団による
こちらの盤でした。
(BMGビクター BVCD-1840、1992.5.21)
ドイツ・ハルモニア・ムンディと
セオン・レーベルからなる
オーセンティック・ベスト50
というシリーズの第44巻です。
以前にも書いたことがありますが
タスキ(オビ)に相当する
アウター・カバーは
全面を覆うタイプのもので
外すと以下のようになります。
収録されているのは
第211番「お静かに、おしゃべりせずに」
通称〈コーヒー・カンタータ〉と
第202番「消えよ、悲しみの影」
通称〈結婚カンタータ〉の
世俗カンタータを代表する2曲です。
録音は
「Recorded: 1964/66」
と記されているのみ。
どちらが1964年で
どちらが1966年なのか
はっきりしませんが
最近になって調べてみたところ
収録順とは逆に
コーヒー・カンタータが1966年
結婚カンタータが1964年のようです。
コーヒー・カンタータは
コーヒー好きの娘に困った父親が
コーヒーをやめないと
夫が見つからないと脅しつけ
コーヒーをやめると言わせたものの
愛飲を許す人と結婚すればいいわ
というオチがついて終わる
オペラ・ブッファのような1曲。
当時ライプツィヒでは
コーヒーが流行っており
本曲も、バッハが率いる
大学生の演奏団体
コレギウム・アウレウムが
毎週、演奏会を開いていた
ライプツィヒのコーヒー・ハウスで
披露されたものです。
もう1曲の結婚カンタータは
結婚式の披露宴の後で演奏された
ソプラノ独唱カンタータで
3曲ある結婚カンタータの中でも
録音される機会が最も多いもの。
宮廷楽長を務めていた
ケーテン時代に
作曲されたとされていますが
誰のために作られたのかは
分かっていないようです。
バッハはケーテン時代に
最初の妻を亡くしてから
2番目の妻アンナ・マグダレーナと
同地で結婚しておりますので
あるいはアンナ・マグダレーナが
歌った可能性もなきにしもあらず。
学術的には
同じく結婚カンタータと呼ばれる
第216番「満ち足れるプライセの都よ」を
歌った可能性があるという方が
定説になってるようですけど
それも第202番の
正確な作曲年代や作曲事情について
分かっていないからではないか
と思われるわけで。
となると
アンナ・マグダレーナが
歌ったかもしれない
と想像する方が楽しいですし
曲を聴く時の盛り上がりも
違ってきます。
というのは
邦盤ライナーを読んで
覚えたばかりの楽しみ方
なんですけどね。
エリー・アメリングは
その冴え渡った声と
オペラ臭の少ない
ノン・ビブラートの歌い方で
バッハの声楽曲歌いとして
評価が高かった存在です。
コレギウム・アウレウム合奏団は
ハルモニア・ムンディによって
1962年に設立された
古楽器演奏によるオーケストラの
草分け的存在です。
ただし現在では
演奏法の考証が甘く
近代的な演奏法が踏襲されている
と見なされているようで
現在では活動を停止していますが
Wikipedia の記事によれば
今日再び愛聴されているのだとか。
でもまあ
たとえばNHK FMの
《古楽の楽しみ》などで
かかる機会は
ほとんどないですけどね。
それでも
演奏の質が極端に低い
というわけではないので
久しぶりに聴き直してみましたが
充分楽しめました。
実をいえば
コーヒー・カンタータは
ドラマ仕立てで
ユーモラスなところもあり
割と聴きやすい
と感じていた一方
結婚カンタータとなると
ちょっと退屈
とか思ってたものでした。
それでも
ソプラノ独唱カンタータをめぐる
最近のマイ・ブームによって
何度も聴いているうちに
結婚カンタータの節なんか
ふと口をついて出たり
するようになってきました。
変われば変わるもんですね。( ̄▽ ̄)
ところで
最近になって
アメリングが
ソプラノ独唱のための
世俗カンタータ第209番も
歌っていることを知り
聴いてみたいと思っていたところ
別のディスクを買うために
新宿のディスクユニオンに行った時
見つけました。
その別のディスクというのは
アメリングのボックスセット
だったわけですけど
それらについてはまた
別の機会にでも。