J・S・バッハ《宗教的リート集》

(ポリグラム POCA-3063、1998.8.1)

 

懐かしの

青いタスキ(オビ)で分かる通り

原盤レーベルはアルヒーフで

オリジナル・リリースは1975年

録音は1974年8月です。

 

本体背の邦題は

《宗教的リート》と

「集」の字が落ちてますが

ここではタスキの表記に

拠りました。

 

 

こちらは、先日

塾の会議の際に寄った

秋葉原のBOOK-OFFで

見かけたものです。

 

タスキの裏面側に

「バッハの作品のなかでも

 演奏されることの少ない

 宗教的リートを集めたアルバム」

「現在国内版のカタログに

 この曲集は存在せず、

 大変貴重なもの」

と書かれているのを読み

確か持ってなかったはず

と思って購入しました。

 

 

全26曲のうち

最初の12曲は

エリーザベト・シュパイザー(ソプラノ)

残りの14曲を

ペーター・シュライアー(テノール)が

歌っています。

 

伴奏は

ヘトヴィヒ・ビルグラムによる

ポジティフ・オルガンのみ。

 

バッハには珍しい(と思われる)

オルガン伴奏のみの

単旋律の歌曲集

ということになります。

 

 

収録曲の出典は

《シェメッリ歌曲集》(1736)が中心で

2曲(BWV512と517)だけ

《アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳》

第2巻から採られています。

 

《シェメッリ歌曲集》の序文に

「新旧の宗教性豊かなリートとアリアが

 ソプラノとバスの美しい旋律とともに

 載せられている」とある通り

同歌曲集の全てがバッハの作品

というわけではなく

「バッハが新たに作曲したものと

 通奏低音の面で改良を

 ほどこしたりしたもの」で

構成されています。

(序文の訳は東川清一のライナーから)

 

ただし、同歌曲集には

954曲収録されていますが

そのうち楽譜がついているのは69曲。

 

昔から知られている旋律には

楽譜をつけなかったようなんですね。

 

(上記《音楽帳》収録の2曲は

 その楽譜がついてない曲の歌詞に

 通奏低音譜が付されたものですが

 必ずしもバッハ作曲とはいえないらしい)

 

では

《シェメッリ歌曲集》中

上記の69曲が

バッハが作曲したものかといえば

さにあらず。

 

近年の研究ではそのうちの3曲

(BWV452、478、505)が

確実に真作だとされているようです。

 

 

真作とされている3曲は

いずれもソプラノ用の歌曲で

本盤にはその3曲が

全て収められています。

 

のちに

ペーター・シュライアーが

《シェメッリ歌曲集》からの20曲を

カール・リヒターのオルガン伴奏で

録音してますけど

 

(こちら、持ってたような気がします。

 どこに紛れ込んだやら……w)

 

そちらに収録された真作は

BWV478のみ。

 

その意味でも今回の盤

珍しい1枚といえますけど

現在では様々なディスクが出ていて

珍しさは、やや薄れているかも。

 

 

前回の記事では

ハンドル《モテット集》で

多声部アカペラ合唱を

久しぶりにがっつりと聴いて

心洗われる気がした

と書きましたが

今回の盤でも

同じ印象を受けています。

 

伴奏がポジティフ・オルガンのみ

というのも良いですし

ソプラノやテノールが

1声部をソロで歌うだけというのも

心を落ち着かせる効果があるようで。

 

ヴィヴァルディや

ヘンデルのアリアの如く

技巧の限りを尽くさせる

コロラトゥーラなどを

聴かされないのも

心を落ち着かせることに

与っているんでしょう。

 

 

初めて聴く(と思う)

エリーザベト・シュパイザーの歌も

癖がなく、すっきりとしていて

たとえていえば

バッハの家庭内で

二番目の妻で、歌手でもあった

アンナ・マクダレーナが

歌っているような雰囲気。

 

アンナ・マクダレーナの音楽帳に

入っている曲もあるわけですから

当然といえば当然の印象でしょうか。

 

 

ペーター・シュライアーは

よく知られた大家ですから

何もいうことはありません。

 

タスキによれば

「七十年代の絶頂期の歌唱」

だそうです。

 

 

伴奏のビルグラムは

モダン・チェンバロ奏者として

その名に見覚えがありますし

演奏を聴いたことが

あるような気がしますけど

ここではチェンバロではなく

ポジティフ・オルガンなので

自分のような古楽器至上主義者でも

違和感を覚えず聴き通せます。

 

ポジティフ・オルガンの優しい音色が

親密な家庭的空間のイメージを

補完しているような気もしたり。

 

 

上にも書いたように

当時は国内盤が

なかったようですけど

現在でも

《シェメッリ歌曲集》を

フィーチャーした

国内盤の現役盤は

クリストフ・プレガルディエン盤

(全32曲収録)しか

なさそうです。

 

その代わり

輸入盤のカタログを見ると

さすがにいろいろありまして。

 

バッハ・コレギウム・ジャパン盤は

78枚組ボックスの1枚なので

(アンナ・マクダレーナの《音楽帳》第2巻との

 カップリングになっていて、14曲収録)

とても気軽に買えない値段ですから

それは措くとしまして。( ̄▽ ̄)

 

cpo レーベルから

2枚組57曲収録

というのが出ていることを知り

Amazon にまだ新譜の在庫が

残っていたので

注文することにしました。

 

そちらを聴いてみた感想は

またいずれそのうちに。