皆川達夫の

『ルネサンス・バロック名曲名盤100』

(音楽之友社 ON BOOKS、1992)には

ペルゴレージの曲が2つ

載っています。

 

ひとつは

当ブログでも何度か取り上げた

お馴染みの名曲

《スターバト・マーテル》ですが

もうひとつがオペラ・ブッファ

(喜歌劇)と呼ばれる

《奥様になった女中》です。

 

 

《奥様になった女中》

(通称《奥様女中》)は

最初、独立した作品として

上演されたわけではなく

3幕のオペラ・セリア

《誇り高き囚人》の幕間に

インテルメッツォ(幕間劇)として

上演されました。

 

オペラ・セリアというのは

シリアスなオペラ、

真面目なオペラという意味で

いわゆる普通にいうところの

オペラ作品を指します。

 

《誇り高き囚人》よりも

《奥様女中》の方が話題となって

その後のオペラの流れを

変えたともいわれており

今日では喜歌劇(例えばモーツァルト

《フィガロの結婚》など)の

源流とも見なされる作品です。

 

 

……というふうに

まあ、解説されるわけですけど

オペラの類いは食わず嫌いで

スルーしてきた自分にとって

いくらペルゴレージの作品とはいえ

積極的に聴きたいものでもなく

シギスヴァルト・クイケン指揮の

CDが出た時に、いちおう購入し

これを持ってればいいか

とか思ってたんですね。

 

ところが

《スターバト・マーテル》にハマり

《奥様になった女中》も

だんだん気になってきました。

 

皆川が上掲書で勧めている

ジュラ・ネーメト指揮のCDも

たまたま見つけておりましたが

それでも聴こうという気になれず

というのも皆川が次のように

書いているからでして。

 

 (ネーメト盤は)

 芸達者ではありますが、

 少しスキがあって

 最上の公演とはいえません。

 (略)

 LP時代には

 ブルスカンティーニたちの歌った、

 なかなかいい演奏が

 あったものでしたが……。(p.153)

 

こんなふうに書かれると

まずはブルスカンティーニ盤を

聴きたくなるじゃないですか。

 

LP時代と書いていますけど

昨今の流れで、名演なら

邦盤はともかく輸入盤で

出ているんではないかと思い

Amazon などで検索しましたが

なかなか、これというのが見つからず

(見つかっても、やたら高く)

諦めて、なんとなく気に留めていた

という状況だったんですね。

 

ところが、たまたま先日

タワーレコード・オンラインにて

リナルド・アレッサンドリーニのCDに

ブルスカンティーニ盤が

カップリングになっているのを知り

慌てて購入したのでした。

 

 

前置きが長くなりましたが

それがこちらの盤です。

 

CD《スターバト・マーテル/奥様女中》

(仏 Diapason: DIAP-151、2022.11.19)

 

リリース年月日は

タワーレコード・オンラインの

データによります。

 

輸入元 Tokyo M-Plus の

日本語のタスキ(オビ)が

付いてくるとは思いもよらず

ちょっと得した気分(笑)

 

 

本盤は

フランスのクラシック専門誌

『ディアパソン』が

歴史的名演を選出し

復刻するシリーズの1枚で

今回の盤はその第151巻らしく。

 

ソプラノのジェンマ・ベルタニョッリと

コントラルトのサラ・ミンガルトが歌う

リナルド・アレッサンドリーニ指揮

コンチェルト・イタリアーノ演奏の盤は

1998年に録音され

OPUS 111から

リリースされたものです。

 

そちらは

輸入盤の再発盤で

持っているんですが

これを逃したら

ブルスカンティーニ盤を

新譜で買う機会はないだろう

と思い、慌てて購入しました。

 

 

ソプラノのレナータ・スコットと

バスバリトンの

セスト・ブルスカンティーニが歌う

レナート・ファザーノ指揮

ローマ合奏団の演奏の録音は

なんと1960年!

 

ところが

リマスターしたおかげで

そんなに古い録音とは思えず

非常にクリアに

ストレスなく聴けます。

 

1960年ですから

古楽器による演奏かどうか

微妙なところですが

レチタティーヴォ(語り)は

ちゃんとチェンバロを

使っているようで

違和感なく

聴くことができました。

 

 

演奏時間は40分ほどで

ストーリーは

皆川のまとめを借りると

「気難しい金持の老人に使える

 才気あふれあ女中が、策をめぐらし、

 奥さまの座につく」

というものです。

 

登場人物は

金持の老人ウベルト

女中セルピーナ

召使ヴェスポーネの3人。

 

ヴェスポーネは

舞台には登場しますけど

台詞がない黙役となっています。

 

セルピーナが

「策をめぐら」した時に

協力する役なのですね。

 

 

歌詞の訳は

手元にあるはずの

クイケン盤のライナーを

引っ張り出してくれば

充分こと足りるのですが

今回は原文も併記されている

以下の冊子を参照しました。

 

『はっち訳 奥様女中』

(私家版、2021.3.15)

 

こちらは

バスバリトン歌手である

畠山茂(愛称はっち)の

手になるもので

ペルゴレージの資料はないかと

 Amazon で検索している時に

見つけたものです。

 

ようやく役に立った〜。( ̄▽ ̄)

 

 

皆川達夫は上掲書の前身である

『バロック名曲名盤100』

(音楽之友社 ON BOOKS、1977)でも

《奥様になった女中》を

取り上げていて

その第14刷(1988)では

次のように書いています。

 

 スコットとブルスカンティーニが歌った

 ファザーノ指揮も活気にあふれ、

 これはこれで

 すてがたい味があります。(p.111)

 

こう書かれると

聴きたくなろうというもの

じゃないでしょうか。

 

そして確かに

「活気にあふれ」た

いい演奏でした。

 

 

これで

長年のつかえが取れたわけで

こうなると《奥様になった女中》の

他の演奏を集め出すことに

なるのかどうか。

 

まあ、まずは

今まで買ったものを

(あるんですね、

 それもなんと複数枚w)

聴くことから

始めるべきでしょうね。( ̄▽ ̄)