NAXOS《ヴィヴァルディ:宗教音楽全集》第1巻

(NAXOS: 8.557445、2004.12)

 

以前ご案内した

映画《シン・仮面ライダー》

使用されたと思しい音源を

収録しているCDの

日本流通盤です。

 

録音は2003年9月で

演奏はケヴィン・マロン指揮

アレイディア・アンサンブル&合唱団。

 

こちらの団体は

カナダのトロントに

拠点を置いているようです。

 

ただし指揮者のマロンは

アイルランド出身。

 

〈まことの安らぎはこの世にはなく〉を歌う

ソプラノのジェーン・アーチボルドと

グローリア RV588 の序唱(導入歌)

〈喜び歌え〉RV639 を歌っている

メゾ・ソプラノのアニタ・クラウゼは

同合唱団のメンバーではなく

ゲストのようですね。

 

 

ちなみに

〈喜び歌え〉というのは

裏面全面を覆うオビ(タスキ)の訳で

レファレンス・ブックや参考書だと

〈愛すべき人々よ、喜びの叫びをあげよ〉

という邦題で載っていることが

多いかと思います。

 

グローリア RV588 は

一般的に知られる RV589 と

違うバージョン。

 

以前、当ブログでは

RV589 と混ぜ合わせられた

コンチェルト・イタリアーノの演奏

紹介したことがあります。

 

 

それはともかく

〈まことの安らぎはこの世にはなく〉ですが

先にご案内の際

リンクを張った YouTube の

[ナクソス・クラシック・キュレーション♯癒し]

で流れるのは

冒頭のアリアから

ダ・カーポ部分を除いた

6分ほどのみですけど

全体はレチタティーボを挟んで

前半のアリアと後半のアリアが歌われ

そして最後にアレルヤで締められる

12〜13分ほどの曲です。

 

そして

[♯癒し]にふさわしいのは

前半のアリアだけで

後半のアリアは軽快でテンポが良く

《四季》の一節を思わせるような

メロディ・ラインも聴かれます。

 

 

当時のモテットのアリアは

A-B-A' 形式のダ・カーポ・アリアで

最初と最後で同じ歌詞が繰り返され

繰り返しの時は歌い手の自由度が増し

装飾音などが施されたりして

ちょっとした歌唱力自慢になるような

そういう構成様式の歌でした。

 

曲名となっている

〈まことの安らぎはこの世にはなく〉は

前半のアリアの冒頭の歌詞から採られたもので

曲全体の内容を踏まえたもの

というわけではありません。

 

だいたいバロック音楽の

アリアのタイトルというのは

そういうふうにして付けられた

通称であるわけです。

 

タイトルを知り

最初のアリアだけ聴くと

モテット全体で

美しい癒しの歌だと思いそうですが

実際にはそれだけではなく

最後の華麗なアレルヤまで聴いて

楽しんでほしいところ。

 

 

YouTube で

全曲演奏を探したんですが

とりあえず近年のものとして

マリー・リス Marie Lys の演奏を

貼っておくことにします。

 

 

器楽演奏は

ジュリオ・プランディ指揮

イ・カメリスティ・デッラ・スカラ

 

スカラ座の音楽家仲間たち

という意味かしらん。

 

録音はスカラ座ではなく

2020年11月30日に

ミラノの聖ジェゼッペ礼拝堂で

行なわれたのだそうです。

 

マリー・リスの歌唱は

コロラトゥーラのときに

口元がやや歪み気味なのが

気になるところですけど

それに目をつぶれば

演奏として適当かと思う次第。

 

YouTube で演奏を披露すると

口元までチェックされるので

演奏者にとっては

痛し痒しかも。( ̄▽ ̄)