もう去年のことになりますが
ディエゴ・ファソリスが指揮する
ペルゴレージ作曲
当ブログで紹介したことがあります。
ところでファソリスには
ペルゴレージのオリジナルを
指揮したCDもあって
それが今回ご案内のディスクです。
(英 Warner: 50999 319147 2 7、
2013.11.12)
ワーナー・クラシックスは発売元で
レーベルはエラートになります。
エラートはフランスのレーベルですが
ワーナーの傘下に入って
事務所がロンドンに移ったそうなので
「仏 Erato」と表記すべきかどうか
悩ましいところでもあり
上掲のように表記した次第です。
リリース月日は
タワーレコード・オンラインに
拠りました。
録音は2012年3月14~21日。
演奏はディエゴ・ファソリス指揮
イ・バロッキスティで
ふたつのカップリング曲のために
スイス・ルガーノ・ラジオ・テレビ放送合唱団
Coro della Radiotelevisione svizzera, Lugano
も参加しています。
Coro della Radiotelevisione svizzera, Lugano は
DVDの「スイス・イタリア語放送協会合唱団」と
同じですが、そのまま流用するのが
ちょっとためらわれたので
上記のように書きました。
ルガーノ Lugano は
スイス連邦のイタリア語圏
ティチーノ州の自治体ですので
DVDでは合唱団名の訳に
「スイス・イタリア語」
と付けたものと思われますけど
それならいっそ
「スイス・イタリア語圏」とした方が
正確かもしれません。
日本の公共放送などでは
どう訳されるのが慣用なのか
知りませんので
ここでは自己流に訳しときます。
ソプラノは
ユリア・レージネヴァ、
アルト・パートを歌う
カウンターテナーに
フィリップ・ジャルスキー。
というわけで
ジャルスキー、2度目の登場ですが
2度目の録音というわけではなく
ソプラノのエーメケ・バラートと共演した
2014年4月の収録になりますから
本盤が最初の録音なんですね。
こちらのディスクは上記
ナタリー・シュトゥッツマン指揮
ジャルスキーとバラートの演奏が
DVDかCDになっていないかと思い
検索していたらヒットしたんですけど
シュトゥッツマン指揮の演奏より
以前のものとは思いもよらず。
ジャルスキーは
フランス国籍なので
シュトゥッツマン指揮の
フランスの映像作品に出ること自体
自然かもしれません。
イタリア系の指揮者である
ファソリスの演奏にも
参加しているということは
それくらい引っ張りだこ
ということなのかも。
レージネヴァは
ロシア出身のソプラノ歌手ですが
コロラトゥーラ・メゾソプラノも
得意とすると書かれています。
本盤を最初に聴いた時には
高音域のソプラノというより
アルトのような感じに
聴こえるところもあって
違和感を覚えたんですが
なるほど納得。
カークビーや
バラートの録音を聴いて
ペルゴレージの《スターバト・マーテル》を
再認識したということもあり
レージネヴァの演奏は
今ひとつかと思っていたんですが
メゾソプラノも得意とする
という評価があると知って聴けば
また印象も変わりますね。
1989年生まれだそうですから
本盤録音当時は23歳
ということになりますが
エラートのプロモーション映像を観ると
ティーンエイジャーのように見えます。
そのプロモーション映像で
確認したところだと
《スターバト・マーテル》の
ファソリス盤の器楽編成は
第1ヴァイオリン4
第2ヴァイオリン4
ヴィオラ2、チェロ2
コントラバス1、リュート1
オルガン1のようです。
CDのライナーには
楽曲個別ごとの編成が
書かれていないので
映像があると助かりますね。
併録曲は
2人のソプラノ、5声部合唱と
オーケストラのための
《ラウダーテ・プエリ》
(詩篇113「ほめたたえよ、しもべ達よ」)
および
ソプラノ、アルト、5声部合唱と
弦楽合奏と通奏低音のための
《コンフィテボール・ティビ・ドミネ》
(詩篇111「主よ、あなたに感謝します」)
の2曲。
《ラウダーテ・プエリ》が
2人のソプラノという指示なので
ジャルスキーがソプラノを
歌っているわけですけど
レージネヴァは
メゾソプラノ寄りなので
違和感がまったくありません。
合唱を伴うふたつの楽曲では
《スターバト・マーテル》だと
あまり精彩が感じられない
という気がしないでもなかった
レージネヴァの
コロラトゥーラ的な、というのか
見事にコントロールされた
装飾的な歌唱を存分に聴くことができ
面目躍如といったところ。
ジャルスキーも
シュトゥッツマン指揮の
演奏の時と比べると
装飾を効かせるところがあり
別にレージネヴァに
影響されたわけでもないでしょうけど
より精彩に富んだ歌唱になっている
といえるかもしれません。
シュトゥッツマン盤が
ファソリス盤よりも
後の収録ですから
より抑制した演奏に変えた
ということになります。
それが
ジャルスキーの考えなのか
(進捗として捉えるべき?)
シュトゥッツマンの
指揮者としての判断なのかが
気になるところです。
それをいったら
装飾的に歌うのは
ジャルスキーの意思なのか
ファソリスの
指揮者としての判断なのかという
問題でもあるわけですが。
ファソリス盤の
プロモーション映像を観ると
歌曲の場合の解釈は
指揮者と共に作り上げるものだ
という気もしますけど。
シュトゥッツマン版とファソリス盤
いず劣らぬ見事な演奏ですけど
個人的な好みからいえば
より抑制の効いた性格の
シュトゥッツマン盤に
軍配をあげたいところ。
もっとも
歌心という点では
ファソリス盤の方が
優れているかもしれず
そこらへんの違いに
指揮者のお国ぶりが出ている
といえるところかも。
ファソリス盤の
特に合唱を伴う曲が
ヴィヴァルディの宗教曲を
彷彿させるところもあり
聴きものですし
聴きごたえがありますけど
それはそれとして
といったところ。
まあ、
音楽性で判断しているというより
アニメ『アルプスの少女ハイジ』に出てくる
ロッテンマイヤーさんを思わせるような
(つい「さん」を付けてしまうw)
シュトゥッツマン版の
バラートの佇まいの方が
農家の娘然とした
レージネヴァの雰囲気より好み
という萌え的なポイントでの判断
という可能性大ですけど。(^^ゞ
最後に
ワーナーのプロモーション映像を
もう1本アップしておきます。
《スターバト・マーテル》
冒頭の二重唱のみですが
バラート=ジャルスキー版との
雰囲気の違いがよく分かるかと。
音質は
バックヤードを映した
最初の映像の方が
良さそうですけど
うちのPCだけかしらん。
乱文長文深謝。