2月5日(金)20:00から
NHK BSプレミアム
「BS時代劇」枠で放送の
『明治開化 新十郎探偵帖』
最終回(第八回)「維新の遺言」
オンタイムで視聴しました。

念のため
本日7日、18:45からの
再放送も観ています。
(うちには録画機器がないので)


今回ベースになった原作は
おそらく無いだろうと思います。

終盤で西郷隆盛が新十郎に対して
「みな、こん西郷に幻を見ちょる」
と話していたのを踏まえれば
あるいは第13話「幻の塔」かと
考えられなくもないですけど
事件の内容も「幻」の意味するところも

ぜんぜん違いますし。

『明治開化 安吾捕物帖』以外の
安吾の創作なり随筆なりに
基づいているとすると
勉強不足の自分には
原作の特定はお手上げです。


BS時代劇としての最終回なら
今回のエピソード
それなりに
良いのかもしれませんが
探偵ものとしては今イチ。

最初に鹿児島に向かう船上で

新十郎が梨江に対し
「これまでの事件とは違い
謎解きばかりではないんだぞ」
というようなことを言ってましたけど
それは、今回の話が
ミステリとしては弱いことの
伏線だったのかもしれませんね。

それでいて
薩摩にある西郷の私学校で
みなを集めての謎解き場面があるのは
ちょっとウケました。

ちなみに

私学校のシーンは

第四回の林肯會を思わせなくもなく

セットを使い回しているのかも。

(実際のところは知りませんけど)



あえて探偵ものとして見るなら
昔、都筑道夫が
S・S・ヴァン・ダインの
『ガーデン殺人事件』について
ミスディレクションだけで
もっている話だと評していたのを
ちょっと思い出したり。

予告編も含めて
ミスディレクションだけで持っている
というのがぴったりな感じ。


歴史ものとしては
川路大警視が送った使者を
私学校の生徒たちが
暗殺者だと解釈したという史実(?)を
踏まえているのかもしれません。

また、川路ではなく
大久保の策略というふうに変えて
政治方針の違いが招く悲劇
ということに
したかったのかもしれません。

それがうまくいっているかどうか
歴史ものオンチの自分には
判断をつけかねます。

最後には大久保が
西郷との記念写真を前に
国の器を作ってから行くから
待っていろと一人ごちて
涙を流す場面もありました。

結局、悪い人間は
一人もいないという
ヌルくて微温的な話に
なっている気がする
というのが正直なところかなあ。


ちなみにドラマ中では
錦絵新聞によって
西郷の死(西南戦争の終息)に続き
大久保利通の暗殺が
報じられてました。

大久保が暗殺されたのは
西南戦争の翌年、
1878(明治11)年のこと。

それを報じる錦絵新聞が
インサートされたあと
シーンが変わって
新十郎は探偵事務所を

構える場面になります。


虎之介や梨江とともに
現場に向かう新十郎は

自分こそが相棒だと

言い争う二人を見ながら

What buddies.(なんて相棒だ)

と呟くという
爽やかな(?)ラストでした。


それにしても第七回
梨江が告白しかけた話は
どうなったんだ
と思ってしまったり。

 

薩摩の私学校で

酒を呑んで酔いつぶれてしまい

新十郎に背負われて

寝所に向かうというシーンもあり

ラブコメ的な面白さはありましたけど

それだけでは第七回の告白の続きには

ならないでしょうし。


ミステリ・ファン的には
ここから安吾の原作の世界が始まる
と考えるのも一興かもしれません。

ただ
「俺の仲間はみんな死んじまった」

と黄昏れる勝海舟に対し

新十郎は
「先生には明治の世がどうなっていくか
見届ける責任がある」と言って
海舟と握手を交わしてましたから
推理を競い合うというプロットを
そのまま映像化するわけにも

いかなさそうですけど。

とはいえ

原作でも新十郎は
必ずしも推理を競うばかりでなく
海舟の言葉で真相に気づく
ということもありましたし
(まさに「幻の塔」がそういう展開)
海舟に対して
「先生」と呼びかける場面も

出てきますので
そういう方向での展開なら
あり、なわけです。


ちなみに
事務所の看板には
「結城探偵社」とあり
その上に「1877」と
記されていました。

普通に考えれば
1877年開設(創立?)

という意味だと思いますが
それだと
大久保卿暗殺の記事の

後のシーンというのは

時系列的におかしい
と思うんですけど
あえて、なのかなあ。