(アルテスパブリッシング、2020.12.20)
2018年2月22日に逝去した磯山雅が
大阪のいずみホール
(現・住友生命いずみホール)の
隔月刊の情報誌『Jupiter』に寄稿した文章を
セレクトして収めた一冊です。
いずみホールの
オープニング・スタッフであり
広報や『Jupiter』の編集を担当した
森岡めぐみの執筆になる
「磯山雅といずみホールの三〇年」
という私論を第一部とし
磯山のエッセイを第二部とする構成。
巻末には
「磯山雅・いずみホール企画年表」が
付いています。
バロック音楽の
古楽演奏をCDで聴くことに
自分がハマり始めた頃
磯山雅の『バロック音楽』(1989)や
『J・S・バッハ』(1990)を読み
いろいろ勉強させてもらいました。
それだけに
かなり思い入れが深いんですけど
『ヨハネ受難曲』(2020)が出たとき
初めて亡くなったことを知って
驚きました。
その『ヨハネ受難曲』を
読み終えてからと思っている内に
タイミングを逃してしまい
ブログで追悼できなかったのが
心残りです。
いずみホールをめぐる活動についても
まったく把握していませんでした。
把握していても
いつも手許不如意だっただけに
行けたかどうか
分からないのですが……。
『神の降り立つ楽堂にて』を読み
巻末の企画年表を見ると
その充実ぶりに圧倒されるばかり。
バッハ・コレギアム・ジャパンが
いずみホールから誕生したというのも
本書を読んで初めて知りました。
その他にも
初めて知ることが多く
NHK-FM『古楽の楽しみ』
(旧題『バロックの森』)の
パーソナリティーを務めていたころ
そこで流す曲をセレクトするために
タワーレコードで新譜を買い込んでいた
というのにもびっくりさせられ
敬服させられた次第です。
また、日本の歌曲、歌謡曲にも
関心を示していたことを知り
こちらも藍川由美の録音を通して
そこそこ関心を持っていただけに
意外であっただけでなく
ちょっと嬉しく思いました。
意外だったのが
オルガン曲が日本人には
「ハードルが高い」(p.57)
「縁遠い」(p.81)
という認識を前提に
オルガン作品連続演奏会や
オルガン作品全曲演奏会を
企画している点です。
まあ、自分も
バッハのオルガン曲を全部聴いている
というわけではありませんが
結局のところ
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565 や
フーガ ト短調 BWV578(小フーガ)しか
聴かれていない、親しまれていない
ということなのかもしれません。
バッハの
カンタータを取り上げた企画では
1パート1人で歌うという
いわゆるリフキン方式で
ユニットを作ったということを
今回初めて知って
聴きたかったなあと思ったり。
ですが、そのユニット
バッハ・コンチェルティーノ大阪の
演奏を収めたというCD付きの本、
(『バッハ・カンタータの森を歩む』)
もしやと思い書棚を探してみたら
案の定、持ってました。(^^ゞ
(第1巻、東京書籍、2004.4.21
第2巻、同、2006.1.26
第3巻、同、2009.2.2)
ということは
アンテナをちゃんと
感度良くして張っていれば
いずみホールでの活動も
知りえたはずですが
ついに気づかないまま
今日まで来てしまったという。
何ごともめぐり逢わせ
というわけですね。
それでも
『カンタータの森』全3巻を
買っておいた自分を
誉めてあげたい。
今はちょっと時間がないんですけど
時間がとれるようになったら
遅ればせではありますが
バッハ・コンチェルティーノ大阪の
演奏を聴き、解説を読んで
磯山の仕事を偲びたいと思います。