今回は
ヴィヴァルディの
アルトのためのカンタータから離れて
ちょっと寄り道なぞ。
ルネ・ヤーコプスの歌う
『ヴィヴァルディ/ボノンチーニ:カンタータ集』を
紹介した記事の最後に
以下のように書きました。
かつて、ジャケット・デザインが同じ
Colectio Argentea[シルバー・コレクション]の
CDを1枚(新譜で)購入したことがある
その、かつて購入したCDが、今回ご案内の
『ムッファト/ビーバー:組曲とソナタ集』です。
Muffat • Biber: Suiten & Sonaten.
(独 Archiv: 437 081-2、1992?)
本盤のリリース年が
どこにもクレジットされておらず
CD番号がヤーコプス盤の
ひとつ前であることから鑑みて
同じ年にしておきました。
演奏はニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス。
録音は1965年3月で
原盤リリース年は1966年のようですが
最初にリリースされたLPのときも
今回のような組み合わせだったかどうかは
ちょっと分かりません。
収録曲は以下の通り。
ゲオルク・ムッファト
組曲 第8番 ホ長調《変わらぬ友情》
合奏協奏曲 第1番 ニ短調《良い知らせ》
ハインリヒ・イグナツ・フランツ・ビーバー
6声のソナタ《農民の教会ゆき》変ロ長調
2挺のヴァイオリン、トロンボーン、
ヴィオローネのためのソナタ ニ短調
ソナタ 第8番 変ロ長調
10声のバッターリア[戦闘]ニ長調
ヴィオローネというのは
ガンバ属ないし
ヴァイオリン属の楽器だそうですけど
ここではバス - ヴィオラ・ダ・ガンバが
使用されています。
曲のタイトルには示されていませんが
チェンバロも加わっています。
なぜこの1枚を
輸入盤にも拘わらず
新譜で買ったのかについては
まったく記憶にありません。(^^ゞ
お馴染み、皆川達夫の
(音楽之友社 ON BOOKS、1992)に
ビーバーの「ロザリオのソナタ」があげられており
そこで薦められている盤を聴いて
感銘を受けた記憶はあります。
また、同書のビーバーのページには
「ビーバーは(…)弦楽合奏のために、
いろいろな愉快な標題がついた
ユーモアたっぷりの作品を多数残して」おり
「新郎新婦が賛美歌を歌いながら
教会に入場し、式が終了すると
会衆とともに酒場にかけつけるという
《農民の酒場ゆき》といった作品」がある
と書かれています。
でも、そこで紹介されているのは
ムジカ・アンティクァ・ケルン演奏の
日本流通盤なので
皆川の文章がきっかけとなって
アーノンクールの輸入盤を買おうと思った
とはちょっと考えられません。
おそらく、同じビーバーの
《バッターリア》が面白い曲だと
ラジオで聴いたか何かの本で読んだかして
興味を覚えたといったところでしょう。
実際
ビーバーの《バッターリア》は面白い曲で
第1番のソナタでは
号砲(?)を表わすためか
何かを叩く音がしますし
不協和音を使って混乱を表現したり
ムチ(?)を使って交戦下の発砲(?)を
表現したりしています。
ムッファトも
(ムファットとも表記されます)
面白さでは負けておらず
組曲 第8番《変わらぬ友情》は
フランス序曲で優雅に始まるのに
第4番 Les Gendarmes(憲兵たち)で
やはり発砲を模しているのか
何かを叩く音が入ったりします。
どうして憲兵が出てくるのか
標題の詳しい内容が分からないと
どう聴いていいのか迷うというのが
珠に瑕なんですけどね。
やはりフランス風序曲で始まる
ムッファトの合奏協奏曲 第1番
《良い知らせ》も
何が良い知らせなのか
よく分かりませんけど
オーボエやファゴットの響きが
なかなか印象的です。
その軽快さで
良い知らせの内容を
勝手に想像するのも一興かも。
今回、久しぶりにライナーを見て
二人が共に1704年没であることに
初めて気づきました。
ビーバーは1644年にボヘミアで生まれ
ザルツブルクで活躍する
今でいうオーストリアの音楽家ですが
ムッファトは1653年にフランスで生まれながら
ウィーン、プラハ、ザルツブルク、
イタリア、ドイツと
いろいろな都市や国を転々とした
コスモポリタンだったため
どこの国の音楽家というふうに
特定して述べることができません。
こんなふうに違う二人がそれぞれに
標題音楽という試みをしていたことが
興味深いという感じですけど
フランスのマラン・マレにも有名な
「膀胱結石切開手術の図」
という標題音楽がありますし
それだけ一般的だった
ということでもありましょう。
そうした流れの先に、例えば
ヴィヴァルディの《四季》などが
あるということですね。