岡田暁生『オペラの運命』

(中央公論新社/中公新書、

 2001.4.25/2006.9.10. 再版)

 

副題の

「十九世紀を魅了した『一夜の夢』」は

カバーや内扉にあるのみで

奥付には併記されていません。

 

 

今回の家庭の事情で帰省中

空いた時間ができても

気軽に出かけられない待機時間内に

読み終えることのできた1冊です。

 

以前、同じ著者の

『音楽の聴き方』(2009)を読み

感銘を受け、さらに

『西洋音楽史』(2005)を読み終え

続けて読みたくなったため

ネット書店で不見転で

買ったものです。

(だからオビがなく再版なわけ)

 

ただ、『西洋音楽史』の読後感を

当ブログでアップした時にも書きましたが

オペラに対してはあまり興味が持てず

バロック時代の章に目を通しただけで

10年近く、うっちゃいといたのでした。(^^;

 

 

その10年前であっても

バロック時代のオペラにすら

たいして関心が持てなかった

というのが正直なところ。

 

ところが、ただ今

ヴィヴァルディの声楽作品に

激ハマりしておりまして

ヴィヴァルディのオペラ作品も

聴きかねない勢い。

 

今回、読み通せたのは

そういう事情があったからです。

 

 

ただし

本書に関していえば

ヴィヴァルディのオペラについては

まったく言及されておりません。

 

ヴィヴァルディが活躍した頃の

ヴェネツィアのオペラ劇場が

他の国々のオペラのように

「王侯の私的な催し」(p.10)ではなく

本書の関心の対象からは

若干、ズレるからです。

 

 

ヴェネツィアは「立て前としては

共和制」(同)であったために

1637年という早い段階で

商業ベースのオペラ劇場が

開設されていたのでした。

 

ただし、それは一方で

オペラが「荒唐無稽なショーと化す」(p.12)

一因となったようです。

 

ヴィヴァルディのオペラは

そういう環境下で作られたものでした。

 

 

というような事情は

ここ最近、読み続けてきた

ヴィヴァルディに関する本を通して

何となくではありますが

すでに知っていたこと

であったりします。

 

そのバロック時代から

どのような有為転変を重ねて

現在に至ったかを書いているのが

本書の内容です。

 

したがって

有名オペラを時系列順に紹介する

という本にはなっていません。

 

いわば

オペラの社会史

とでもいうべき本でして

だからこそ最後まで読み通せた

というところもあります。

 

 

実はモーツァルトのオペラも

ファンダンゴに興味が湧いたとき

『フィガロの結婚』のみ

何枚か買ってみたのですが

いまだに聴いていない

という体たらく。(^^;

 

ですが本書を読んで

いわゆるモーツァルト愛聴家の

視点(聴点かな?)とは異なる(と思う)

モーツァルトのオペラの魅力を知り

聴いてみたくなっただけでなく

『フィガロの結婚』を含む

喜劇三部作に興味が湧いてきました。

 

 

その他

「国民オペラ」と呼ばれる

オペラ史上におけるサブ・ジャンルの

いかがわしさについて書かれた

第4章も面白かったです。

 

だからといってそれらを

矢も盾もなく視聴したくなった

というわけでもないのですが。(^^ゞ

 

 

ちなみに第1章の扉で

カストラートについての言葉が

引用されている

ウィリアム・ベックフォードとは

『ヴァセック(ヴァテック)』(1782)を書いた

あのベックフォードのようですね。

 

Wikipedia を見ると

カウンターテナーとしても

活躍したことがあると書いてあって

これにはびっくり。

 

『ヴァセック』は未読ですけど

これまで得てきた知識が

こうしてつながるのは

面白いものです。

 
 
ペタしてね