前回の記事では
ヴィヴァルディの協奏曲に基づく
オルガン独奏のための協奏曲 ニ短調 BWV596 を
ウィリアム・マードックが
ピアノ用に編曲したのを聴いて
「こういうのを聴くと
バッハのオリジナルや
さらにはヴィヴァルディのオリジナルを
聴き比べてみたくなるなあ」
と書きました。
そういう聴き比べに便利なのが
かつてクラウンから出ていた
『ヴィヴァルディ=バッハ』という
企画もののレコードです。
このレコードは
皆川達夫のガイドブック
『ルネサンス・バロック名曲名盤100』
(音楽之友社/ON BOOK、1992)にも
ヴィヴァルディの原曲の項で
紹介されていました。
それを読んで
面白そうだなあと思っていたところに
タイミング良く出たのが
以下の2枚のCDです。
(左:ヴィーナスレコード TKCZ-79203、1993.6.25
右:同 TKCZ-79225、1993.8.25)
「シャルラン名盤コレクション」
というシリーズの2枚で
ライセンスはフランスのシャルラン レコード、
日本での発売(製造)はヴィーナス レコードですが
販売は徳間コミュニケーションズです。
管理番号に TKC とあるのは
そのためでしょう。
この2枚には
ヴィヴァルディの
合奏協奏曲〈調和の霊感〉作品3から
第1集には第3番と第10番
第2集には第8盤と第11番が収められ
バッハによるその編曲である
第1集だとオルガン独奏のための協奏曲が
第2集だとチェンバロ独奏のための協奏曲と
4つのチェンバロのための協奏曲が
原曲とカップリングで
収められています。
LPレコードだと
ヴィヴァルディがA面
バッハがB面で
第1集がオルガン アレンジ編
第2集がチェンバロ アレンジ編
といった構成だったんでしょうね。
当時、自分は
ヴィヴァルディの〈調和の霊感〉を
皆川が先に掲げた本で薦めている
イ・ムジチ合奏団の盤で
すでに買っていたのではなかったかと。
でも、バッハの独奏オルガン用の編曲や
独奏チェンバロ用の編曲を収めたCDは
まだ入手していなかったかと記憶します。
だから喜んで買ったのだと思いますけど
新譜で買ったか中古で買ったか
ちょっと記憶にありません。
おトクな廉価盤ですから
たぶん新譜で買ったんだと思いますけど
どこで買ったのかについては
記憶の彼方です。(^^ゞ
ヴィヴァルディの〈調和の霊感〉と
バッハの4つのチェンバロのための協奏曲の演奏は
アルベルト・ゼッダ指揮
ミラノ・アンジェリクム室内合奏団。
第2集の方に入っている作品3の11は
2つのヴァイオリンおよびチェロと
合奏群とが掛け合いをする曲で
ヴァイオリン独奏を
ブルーノ・サルヴィとロマーナ・ペッツォーニ、
チェロ独奏をロベルト・カリアーナが
それぞれ担当しています。
オルガン協奏曲の方の演奏者は
アレッサンドロ・エスポジート。
と書いてはみたものの
ほとんど馴染みのない人ばかり。
演奏はもちろん古楽演奏ではなく
それだけに古楽に慣れた耳で聴くと
テンポなど、ちょっと違和感があります。
指揮者のゼッダは
ロッシーニのオペラ復興に
一役買った人として知られているらしく
(Wikipedia によります)
それを知ってみれば
本来の得意分野ではないから
仕方ないか、などと
偉そうに思ってみたり。(^^ゞ
オルガンは、ライナーによると
ミラノ・アンジェリクム歌劇場の
大オルガンだそうです。
ライナーにはそれしか書いてないので
よく分かりませんが
やっぱりイタリア様式のオルガン
ということになるんでしょうか。
こちらは
音色的にもテンポ的にも
あまり違和感を覚えませんでした。
よっぽど妙なレジストレーションをしない限り
極端に違和感のある音になるはずも
ないわけでして。
ちなみに第1集に入っている
〈調和の霊感〉作品3の10に基づく
4つのチェンバロのための協奏曲の
チェンバロ奏者の中に
指揮者として有名な
クラウディオ・アバドがいるのは
ちょっと珍しいかも。
金沢正剛(この人の書いた本を
本盤を聴いた後に読むことになるとは
当時は思いもよらず。まあそれはともかく)
の書いているライナーによれば
若手指揮者として
めきめき売り出していた頃だそうです。
Wikipedia によると
ロッシーニ・ルネッサンスの立役者の一人
とのことですから
ゼッダと親交があって参加したのかも
とか考えたりしちゃいますけど
実際はどうなんでしょうね。
ちなみに本盤には両方とも
どこにも録音年が書かれていないのですけど
湧々堂[わくわくどう]さんがアップしている
シャルランのカタログによれば
第1集は1963年、
第2集は1966年のようです。
このシャルランのカタログに到達するまで
ちょっと時間がかかったこともあって
なんでここまでさせるのよ、と
発売元か販売元あるいはライナーの執筆者に
恨み言のひとつもいいたくなったり。
本来の目的である
マードックの編曲との比較ですけど
ヴィヴァルディの原曲やバッハの編曲が
全3楽章だったのに対し
マードックはその第1楽章を
ふたつに分けていることが分かって
びっくりでした。
聴いているはずなのに
すっかり忘れてたもので。(^^ゞ
ヴィヴァルディの原曲は
1楽章の中にアレグロとアダージョ、
フーガを入れるという
変則的な構成だったんですね。
バッハはそれを忠実に編曲したわけですが
マードックは少しいじっていたわけで。
またマードックの編曲が夢幻的なのは
オルガンの低音部を再現しようとしたから
といったことなども分かりました。
そういう確認をするには
やっぱり便利な1枚(2枚)なわけで
今では廃盤のようですし
バッハの独奏オルガン用の協奏曲が
意外と簡単には聴けないことを思えば
買っといて正解なのでした。
ブログのネタにもなったし。( ̄▽ ̄)