辺見マリの「経験」を

夏木マリのカバーや

中森明菜のカバーと聴き比べると

アレンジの違いがとても面白い。

 

聴いているうちに

ジワジワくるものがあったので

今回はそれについて少し。

 

 

辺見マリのオリジナルはこちら。

 

辺見マリ『経験』シングル盤

(日本コロムビア P-87、1970.4)

 

スリーブが意外とサイケな感じ。

 

ジャケットの表側は

見開き仕様の

ダブル・ジャケットになっていて

 

辺見マリ『経験』シングル盤(ジャケ表・全体)

 

ライナーには楽譜も載っています。

 

辺見マリ『経験』シングル盤(ジャケ裏)

 

英語タイトルが付いていることにも

ご注目あれ。

 

 

辺見マリの「経験」は

安井かずみ作詞、村上邦彦作曲で

編曲を川口真が担当しています。

 

夏木マリのカバーは

川口が全曲アレンジを担当している

『絹の靴下〜マグネット・アルバム』(1973)に

収録されていますが

それもあって

夏木版は、川口によるセルフ・カバー

とも見なせるわけです。

 

 

そう思って聴き比べると

夏木バージョンは

ちょっとピアノが後退している感じ。

 

そのためかあらぬか

全体的にムーディーな感じが

後退しているようにも思います。

 

その代わり

といっていいのかどうか

辺見バージョンではおとなしめだった

ビブラフォン(?)が前面に出ていて

テンポがちょっとだけ

早くなっているようにも感じられます。

 

 

イントロの

特にピアノ(とブラス)による印象的な

♪タンタンタタン、タッタータタタタン

という下降していくメロディは

両バージョンともに残っています。

 

この下降メロディ

専門的には何というのか

分からないのですけど

アダルトでムーディな雰囲気を支える

とでもいえばいのかしら

うーん、自分の表現力の貧しさに

頭を抱えずにはいられないのですが

とにかく、秀逸なイントロだと

今回、聴き直して強く思いました。

 

 

ちなみに

自分がテレビで聴いていた頃

歌謡曲番組のバックバンドは

ダン池田とニューブリードとか

ブラスバンドが主流ですから

当然、ピアノもビブラフォンも

鳴っていなかったわけです。

 

ピアノもビブラフォンもない演奏が

曲の魅力を半減させていた

というのは、いいすぎかもしれませんけど

編曲家の意図を十全には

表現できていなかったことに

今さらながら気づいた次第。

 

当時、番組用のアレンジというのは

やっぱりバックバンドのバンマスが

やっていたのかしら、とか

いろいろ気になるところです。

 

 

閑話休題。

 

 

「経験」における

川口真による印象的なイントロは

中森明菜のカバー・アルバム

『ムード歌謡〜歌姫昭和名曲選』(2009)

収録のバージョンだと

まったく省略されています。

 

中森明菜のバージョンを最初に聴いた時

ブラス主体でテンポ良く始まるイントロが

実にスピーディーで

カッコ良く聞こえたものですけど

今回改めて川口バージョンと聴き比べると

そちらのイントロも捨てがたい。

 

中森バージョンのアレンジは

トロンボーン奏者の村田陽一で

Wikipedia で村田の項目を読み

ブラス主体なのも、なるほどそれでかと

腑に落ちました。

 

が、川口のイントロを活かしたバージョンも

中森明菜のボーカルで

聴いてみたい気がしたことでした。

 

 

やはり中森明菜が

上記アルバムでカバーしている

欧陽菲菲の「雨の御堂筋」なんかは

 

欧陽菲菲『雨の御堂筋』シングル盤

(東芝音楽工業 TP-2517、1971)

 

これもオリジナルは川口真のアレンジですけど

ザ・ベンチャーズのカバーだけあって

管楽器も加わっているとはいえ

いわゆるロックンロール バンド スタイルなのに対し

(ファゴットっぽく聴こえる

 印象的なイントロの楽器は何なんでしょう?)

ジャズの、いわゆるピアノ・トリオ風のアレンジで

(中森版の編成は Pf、Gt、Ba、Dr)

ピアノが絶品であることを鑑みるに

余計そう思われるのでした。

 

 

ちなみに

『雨の御堂筋』のレコードには

ジャケのどこにも

リリース年が表記されておらず

上掲のリリース年は Wikipedia に拠ります。

 

念のため。

 

 

ペタしてね