以前、ちょっと紹介した
『アイドル冬の時代』(2016)を読んでいたら
『昭和歌謡ポップスアルバムガイド 1959-1979』

 

『昭和歌謡ポップスアルバムガイド1959−1979』

(シンコーミュージック・エンタテイメント、2015.8.18)

 

という本の広告が載っていて
興味が湧いて購入し
暇があると眺めたりしています。

 

同書はその書名通り
1959年から79年にかけて発売された
昭和歌謡のアルバムから
ポップスを中心に
代表的なものをピックアップして
ジャケットの写真入りで
紹介したものです。

 

全ページカラーでないのは
ちょっと残念ですけど
レーベル、発売年、レコード番号、収録曲
CD化されていれば
そのレーベルとCD番号が記されており
基本的な情報は押さえられていて
資料的にも質が高い。

 

画期ごとにテーマを設け

状況解説のコラムが付くほか
代表的な作曲家・作詞家の紹介
重要なディレクターへのインタビューなども
掲載されていて
昭和歌謡に関心がある人への
良いガイドブックになっています。

 

まあ、基本
アイドル歌謡の項目を中心に
読んでいるのですけど (^^ゞ
その他のページも

もちろん興味深いわけで
そんな中で目に入ったのが
今回、紹介する
岸洋子のアルバムでした。

 

 

前置きが長くてすみません(苦笑)

 


『女 女 女』は
A面がアルバム表題曲を含む
いわゆるオリジナル曲で占められていて
唯一オリジナルではないカバー曲が
「死んだ男の残したものは」である
と書かれていあるのを読んで
これはちょっと聴いてみたいな
と思ったのでした。

 

1971年のレコードだから
こりゃ見つけるのがたいへんだ
と思っていたところ
ディスクユニオン新宿
日本のロック・インディーズ館で見つけて

びっくりしたのですけど
オビ(タスキ)がない。

 

それと、ジャケが底抜けだと
注記されていて
買うのをためらっていたところ

先日、塾の会議の帰りに寄った池袋店で

オビ付きのを見つけたのでした。

 

岸洋子『今 今 今』ジャケット(表)

(キングレコード SKD-80、1971)

 

下の写真がジャケ裏。

 

岸洋子『今 今 今』ジャケット(裏)

 

観音開きのジャケを開くと

内側に歌詞が載っています。

 

岸洋子『今 今 今』ジャケット(中)

 

針を落してみると

「死んだ男の残したものは」の際
プチップチッという
スクラッチ・ノイズが入るので
ちょっと気にならなくもないのですけど
なるほど、これが岸洋子流か

と、まずは聴けて満足。

 

その他のオリジナル曲は
シャンソン風の歌唱というか
ストーリー性があって
メロディーに合わせる歌唱ではなく
語りもののような歌い方なので
(まさにエディット・ピアフ風?)
ああ、やっぱりシャンソンの人だなあ
という印象。

 


面白かったというか
すごかったのは
ビルから飛びおりて幽体離脱してしまう

自殺した女の視点で曲が進む
「こんな気持は生まれてはじめて」。

 

「♪エイッとばかり飛び降りました」
という歌詞の
「エイッと」のところが
不謹慎といわれそうですけど

実にキュート。

 

曲のラストでは
男性コーラスでお経が流れたりして
「帰って来たヨッパライ」(1967)を
彷彿させるものがありますが
そのコーラス部分の歌詞で
ショート・ショートのように
落としているのもすごい。

(作詞は藤田敏雄)

 

こんなナンセンス・ソングを歌っていたのか
と、びっくりでした。

 


B面の収録曲は
すべて洋楽スタンダードですが
冒頭の「枯葉」からして
アレンジが変わっています。

 

『昭和歌謡ポップスアルバムガイド』の
解説文を引用すれば
「セルメン風ボサにアレンジ」されている
ということになるわけですが
(セルメン=セルジオ・メンデス
ボサ=ボサノヴァ)
実にゴキゲンなナンバーになってます。

 

ゴキゲンな「枯葉」って
想像つきます?(苦笑)

 

先にブログで紹介した岸洋子のCDには
正調な歌い方のものしか収められておらず
これは貴重かもしれません。

 

 

『ピンポンパン』バージョンというのか

「♪雨だれ小僧さん ポツンと空から落ちてきた」

という歌詞で聴き覚えがある

「雨にぬれても」では
曲間にいきなり
聴き覚えのあるピアノ曲の一節が流れたりして

ちょっと変わってますね。

 

これってショパンだったかな?

 

これも含め

アレンジ(編曲)は全曲

前田憲男という人です。
 


昨今の
紙ジャケ復刻CDばやりを思うと
なぜ本盤がいまだに復刻されていないのか
不思議でなりません。

 

おそらく、
岸洋子を聴こうという層は
「夜明けのうた」や
「希望」のイメージを持っており
「恋心」や「想い出のソレンツァーラ」
「わかっているの」
「今宵あなたが聞く歌は」など
紅白で披露した
朗々と歌い上げる正調シャンソンを
求めているのだと
思われているからでしょうけど。

 

こういう
懐かしの昭和歌謡を
支えている層のほとんどは
昔、自分が聴いたかたちに
こだわる人が多いようなので

(ではないかと思うんですけど)
しょうがないといえばしょうがない。

 

でも、それでは
ジリ貧に陥るだけだと思います。

 

(それは
自分の好きな探偵小説ジャンルも含め
すべての文化において
いえることででしょう)

 

『昭和歌謡ポップス
アルバムガイド』のような本は
そういうジリ貧に陥らせないための
カンフル剤としての役割を
担っているわけですけど
そういうのに啓発されると
どんどん懐が淋しくなるのが
困ったところなのでして( ´(ェ)`)

 

 

ペタしてね