$圏外の日乘-『わらの女』(創元推理文庫版)
(1956/安堂信也訳、創元推理文庫、2006.6.30)

上に書いた発行日は改版の初版の年月日で
改版前の文庫は1964年8月30日に出ています。

古い版のカバーには
映画のスチールが使われていて
そちらを持っていたはずなんですが
どこに紛れ込んだのか出てこないので
新刊書店で改めて買いました。

桜庭一樹の推薦オビは、2006年の
再刊当時のものではないと思います。

それはいいんですが
7年前に出ているのに
奥付はまだ初版のまま。
もちろん小口には
ヤスリがかかっていますけど
うーん、人気ないのかなあ
と思ってしまいました。

とかいいながら自分も
この超有名な作品を読むのは
実は今回が初めてだったりします。

お恥ずかしい。(^^ゞ


まあ、だいたいどんな話なのか
ストーリーを知っていた
ということもありまして
読もうという気には
ならなかったのでした。

その昔、小学生向けの学年雑誌の付録で
しっかりとストーリーを
バラされていたこともあり。

以前紹介した『深夜の散歩』でも
福永武彦が本書を紹介していて
ストーリーを最後まで割っています。

本格謎解きミステリじゃないからって
それはないだろうと思いますけど。


まあ、小学生の時に読んでも
面白がらなかったと思いますけど。

ハードボイルド・ミステリとは別の意味で
子どもには付いていきにくい話だと思います。

自分の場合に限っての話かもしれませんが……


福永は上に収められたエッセイで
「奇妙に残酷な小説」だと書いてますが
今風にいえば「イヤミス」でしょうか。

第二部になって
ヒロインが警察に捕まってからの展開は
作者はある人物の行動に仮託して
徹底的にヒロインを追いつめていて
容赦がない。びっくりしました。

そこが魅力ではあるのですが
ちょっとヒロインに同情しちゃいました。

それはこちらが
ロマンチストだからでしょうか。

そういえば、ドイツ人はロマンチストだと
何度も地の文に出てきますけど
フランス人からすればそうなんですかね。

自分的にはリアリストという
イメージなんですが。

そういった感覚の違いも楽しめます。


初訳当時「看護婦」と訳されていたのを
「看護師」と直してあるのには
違和感を覚えましたし
訳文もやや古風ではありますが
まあ、半世紀以上も前の小説であるわけですし
もし未読なら、そして
まだストーリーをバラされてないなら
一読の価値はあるといっていいでしょう。

アルレーの他の小説も
ちょっと読んでみたくなりました。


映画の方は結末を変えたみたいで
そう聞くと観てみたくなるんですが
残念ながらソフト化されていないようです。

ざんねーん!