
(映人社、2011年11月1日発行 33巻11号 通巻389号)
先に紹介した『ドラマ』2012年2月号を
パラパラ見ていたら
バックナンバーを紹介するページがあったので、
奈央ちゃん出演のドラマのシナリオが
載ってないかなーと思って確認してみたら、
『UN-GO』特集号が出ていたことを知りました。
掲載されているシナリオは
『UN-GO』の第1話と第2話で、
何とそれだけではなく
1973(昭和48)年に放送された
『新十郎捕物帖 快刀乱麻』
第2話、第13話のシナリオまで
掲載されてるじゃあないですか!
(執筆は特撮ファンにもよく知られた
あの佐々木守です)
そこで慌てて Amazon で購入した次第です。
『UN-GO』第2話は
『明治開化 安吾捕物帖』の
「ああ無情」を原案としていることは
前にも書きましたが、
前に観たときは、白タクに死体を運ばせる理由が
弱いと思いましたが、
シナリオで接すると
前よりも少しは説得力がある感じ。
やっぱり、読み直しできたりして
事件の背景がよく分かるからでしょうね。
ところで『快刀乱麻』第2話
「死と死と人は来ぬか雨」の方も
同じく「ああ無情」をベースとしていて、
これは『UN-GO』の脚本家・會川昇の
希望に基づく趣向のようです。
こちらは割と原作に忠実かと思いますが、
やっぱり真犯人は微妙にアレンジされていて、
それが階級批判のモチーフにもつながっていました。
というか、「無情のうた」も
「死と死と人は来ぬか雨」も
それぞれのモチーフに合わせて
微妙に原作をアレンジしており、
原作と合わせ読むと
そうした微妙な采配のテクニックがうかがえて
興味深いです。
『快刀乱麻』は、自分は途中から観ているため、
この第2話は観ていません。
若林豪演じる結城新十郎の仲間役として
尾藤イサオが出ていたことは覚えていましたが
今回シナリオを読んで、
沖雅也も出ていたことを知りました。
そうしたキャラがいたことを
トンと覚えていなかったのは、
おそらく沖雅也が途中で
降板したからではないかと思います。
というのも
第13話「今年最後の斬り斬り舞い」に
それを匂わすような
台詞のやりとりが出てくるからです。
この第13話、観たかどうか、
観たような気も
かすかにしないではないのですが、
あまりよく覚えていません。
夏純子演じるお嬢さまと
浜田光夫演じる下男の
変態的な心理が、シナリオからもよく分かって
面白いのですが、
放送当時、小学校・高学年だった自分には
よく分からなかったろうなあ(苦笑)
ちなみに13話の毒殺トリックは
有名なトリックの流用ないしアレンジであり、
安吾の原作をベースにはしていないと思います。
『快刀乱麻』は海外ミステリの
シチュエーションやトリックを流用した回があり、
自分が観た範囲でも、
ディクスン・カーの「銀色のカーテン」や
ニコラス・ブレイクの『雪だるまの殺人』を
流用したものがあったことを覚えています。
もっとも当時の自分は
トリック・クイズ本で知っていただけで、
原作を知るのは後年になってからですが。
第13話は、第2話のシリアス路線とは打って変わって
スラップスティックな感じになっているのが
面白いですね。
その中で、夏純子と浜田光夫の絡みだけ
異様に突出している感じです。
まあ、そこが面白いのですが。
勝海舟を演じたのは池部良で、
小糸という、愛人というか、女と
いつもじゃれているような中
泉山虎之介が知恵を借りにくるという、
小糸の存在を除けば割と原作に忠実な演出でした。
当時出ていた角川文庫版のオビには
海舟と小糸のツーショット・スチールが
載っていたことを覚えています。
当時はオビをノートに貼って
保存しようとしたりしてたので、
手許の角川文庫版はオビなし本です。
(オビを貼ったノートは実家に残ってるはずですが……)

(角川文庫、1973.12.20/1974.6.30、3刷)
新十郎とその仲間は壮士崩れの素浪人
というあたりは、
原作とはまったく違うわけですけれども、
新十郎の仲間が政府批判をするあたりの政治性は
形を変えて『UN-GO』でも踏襲されていることが
今回採録されたシナリオを読むとよく分かります。
『快刀乱麻』は最終回しかフィルムが残っておらず
そのせいでソフトが発売されることもなく
当時観ていたものの記憶にのみ残っている状況ですが、
シナリオが残っているのなら
それだけでも全部復刻してほしいなあ。