こちらも、確定申告の帰りに寄った
新刊書店で購入しました。
早川書房の翻訳シリーズ(叢書)である
ハヤカワ・ミステリの新刊は
基本的に無条件で買いますが、
すぐ読むとは限らない(^^ゞ
でも、そもそも作家を主人公にして
業界裏話や創作論を語らせる作品が
好きなこともあり、
すっごく気になったので、
珍しく、すぐ読み始めたんですが、
第1章の書き出しから、もう
ハートキャッチされちゃった次第です(藁

(2010/青木千鶴訳、ハヤカワ・ミステリ、2011.3.15)
主人公のハリー・ブロックは
ポルノ雑誌の相談欄や
エロティックなSF小説、
黒人が主人公の私立探偵小説、
ヴァンパイア小説などを
4つのペンネームで書き分けて
身過ぎ世過ぎとしている
ペイパーバック・ライターです。
そんなハリーの許に、ある日
死刑の執行を控えた連続殺人犯
(シリアル・キラー)
ダリアン・クレイから手紙が届きます。
自分の告白に基づく
ノンフィクションを書かないか、
という申し入れでした。
ハリーを選んだ理由は、
ポルノ雑誌の相談欄の文体が
気に入ったからだというダリアンは、
自分の告白と引き換えに、
刑務所の自分の許に
手紙を送ってくる女性たちを取材して、
自分とその女性たちの
エロティックな関係を描いた小説を書け
(要するに、自分を主人公にしたポルノを書け)
と条件を出してきます。
いろいろと葛藤はあったものの
結局ハリーは条件を受け入れ、
女性たちをインタビューしに向かうのですが……
以上が物語の大枠で、
450ページ中200ページを過ぎてから
恐るべき殺人事件が発生するのですが、
それがどういう性質の事件なのかは
ここでは伏せておきましょう。
全体の半分を過ぎないと事件が起きないので、
読み手によっては
退屈の恐れがないとはいいませんが、
自分的には非常に楽しく読めました。
というのも、ハリーの語り口が
ユーモアにあふれているのに加え、
ハリーが、小説を書いていることを
意識しながら語るナレーターであるために、
ところどころ小説論や読書論が挟まって
それが何とも読んでいて楽しいのです。
出だしの、元恋人とその今の彼氏が書く
前衛文学(純文学)のあらすじ紹介は、
その皮肉な書きっぷりに大笑いしました。
ハリーは文筆だけで食えなくて
家庭教師、というか、
高校生のレポートの代筆を
したりしてるんですが、
その生徒であるクレア・ナッシュとの
やりとりが、また楽しい。
赤川次郎の小説を彷彿とさせます。
そしてもう一人、調査の協力者として
連続殺人犯ダリアンの被害者となった
双子の姉を持つ美人ストリッパーが絡んできます。
ほとんどスラップスティックのような
展開でありながら、
(最初にダリアンの手紙を受け取った時の
ハリーの状況が、実に象徴的です)
時には繊細な面を見せつつ、
ミステリとしてのプロットも
しっかりと練られています。
ユーモアとシリアスとが
絶妙のバランスをとっていて、
シリーズもの小説(シリアル小説)論
にもなっていて、
どちらかといえば草食系(負け犬系?)のハリーが
本物の作家になっていく成長譚(教養小説)
としても筋を通しているという、
その他、自分好みの要素満載の、
奇跡のような傑作でした。
昔風の誉め方をすれば、
読者がある程度の知識・教養
すなわち伝統を共有していることを前提とし、
それを信頼しつつ書いていることが
非常によく分かる作品、
ということになりましょうか。
読み慣れた人なら
犯人の見当はつくと思いますが、
(条件に合う人間が少なすぎるのでw)
そこは、語り口の上手さで
読ませてしまうあたりがすごいのと、
犯人が分かった後の
第4部の展開がすばらしすぎる!
ちょっとびっくりしたのは、
日本でトランスフォーマーが
アニメ化されていることに言及されていること。
もちろん、ただ言及しているのではなく
純文学作家への皮肉と絡ませているのがニクい(藁
あと、英米のミステリ・ドラマの名探偵たちを
あれこれ寸評している場面も楽しい。
早川書房の本なのに、
エルキュール・「ポワロ」と表記しているのは、
ドラマの邦題に合わせたものでしょうか?(藁
ややスノッブな臭みがあり
そこがイヤという人もいるかもしれませんが、
これは超おススメ!
本年度ベストテン圏内登場、間違いなしの秀作!
だと、個人的には思っています。
(当たるかな~ w)
こういう新人が出るのだから、
アメリカのミステリ業界、
やっぱ、すごいですねえ。
ちなみに、これ読み終わったら、
雪崩れた本を3時間ほどかけて
片付けるくらいの元気が出ました~
(3時間ほどで切れたけど【苦笑】)
新刊書店で購入しました。
早川書房の翻訳シリーズ(叢書)である
ハヤカワ・ミステリの新刊は
基本的に無条件で買いますが、
すぐ読むとは限らない(^^ゞ
でも、そもそも作家を主人公にして
業界裏話や創作論を語らせる作品が
好きなこともあり、
すっごく気になったので、
珍しく、すぐ読み始めたんですが、
第1章の書き出しから、もう
ハートキャッチされちゃった次第です(藁

(2010/青木千鶴訳、ハヤカワ・ミステリ、2011.3.15)
主人公のハリー・ブロックは
ポルノ雑誌の相談欄や
エロティックなSF小説、
黒人が主人公の私立探偵小説、
ヴァンパイア小説などを
4つのペンネームで書き分けて
身過ぎ世過ぎとしている
ペイパーバック・ライターです。
そんなハリーの許に、ある日
死刑の執行を控えた連続殺人犯
(シリアル・キラー)
ダリアン・クレイから手紙が届きます。
自分の告白に基づく
ノンフィクションを書かないか、
という申し入れでした。
ハリーを選んだ理由は、
ポルノ雑誌の相談欄の文体が
気に入ったからだというダリアンは、
自分の告白と引き換えに、
刑務所の自分の許に
手紙を送ってくる女性たちを取材して、
自分とその女性たちの
エロティックな関係を描いた小説を書け
(要するに、自分を主人公にしたポルノを書け)
と条件を出してきます。
いろいろと葛藤はあったものの
結局ハリーは条件を受け入れ、
女性たちをインタビューしに向かうのですが……
以上が物語の大枠で、
450ページ中200ページを過ぎてから
恐るべき殺人事件が発生するのですが、
それがどういう性質の事件なのかは
ここでは伏せておきましょう。
全体の半分を過ぎないと事件が起きないので、
読み手によっては
退屈の恐れがないとはいいませんが、
自分的には非常に楽しく読めました。
というのも、ハリーの語り口が
ユーモアにあふれているのに加え、
ハリーが、小説を書いていることを
意識しながら語るナレーターであるために、
ところどころ小説論や読書論が挟まって
それが何とも読んでいて楽しいのです。
出だしの、元恋人とその今の彼氏が書く
前衛文学(純文学)のあらすじ紹介は、
その皮肉な書きっぷりに大笑いしました。
ハリーは文筆だけで食えなくて
家庭教師、というか、
高校生のレポートの代筆を
したりしてるんですが、
その生徒であるクレア・ナッシュとの
やりとりが、また楽しい。
赤川次郎の小説を彷彿とさせます。
そしてもう一人、調査の協力者として
連続殺人犯ダリアンの被害者となった
双子の姉を持つ美人ストリッパーが絡んできます。
ほとんどスラップスティックのような
展開でありながら、
(最初にダリアンの手紙を受け取った時の
ハリーの状況が、実に象徴的です)
時には繊細な面を見せつつ、
ミステリとしてのプロットも
しっかりと練られています。
ユーモアとシリアスとが
絶妙のバランスをとっていて、
シリーズもの小説(シリアル小説)論
にもなっていて、
どちらかといえば草食系(負け犬系?)のハリーが
本物の作家になっていく成長譚(教養小説)
としても筋を通しているという、
その他、自分好みの要素満載の、
奇跡のような傑作でした。
昔風の誉め方をすれば、
読者がある程度の知識・教養
すなわち伝統を共有していることを前提とし、
それを信頼しつつ書いていることが
非常によく分かる作品、
ということになりましょうか。
読み慣れた人なら
犯人の見当はつくと思いますが、
(条件に合う人間が少なすぎるのでw)
そこは、語り口の上手さで
読ませてしまうあたりがすごいのと、
犯人が分かった後の
第4部の展開がすばらしすぎる!
ちょっとびっくりしたのは、
日本でトランスフォーマーが
アニメ化されていることに言及されていること。
もちろん、ただ言及しているのではなく
純文学作家への皮肉と絡ませているのがニクい(藁
あと、英米のミステリ・ドラマの名探偵たちを
あれこれ寸評している場面も楽しい。
早川書房の本なのに、
エルキュール・「ポワロ」と表記しているのは、
ドラマの邦題に合わせたものでしょうか?(藁
ややスノッブな臭みがあり
そこがイヤという人もいるかもしれませんが、
これは超おススメ!
本年度ベストテン圏内登場、間違いなしの秀作!
だと、個人的には思っています。
(当たるかな~ w)
こういう新人が出るのだから、
アメリカのミステリ業界、
やっぱ、すごいですねえ。
ちなみに、これ読み終わったら、
雪崩れた本を3時間ほどかけて
片付けるくらいの元気が出ました~
(3時間ほどで切れたけど【苦笑】)