寒山百得展2 (灘区原田通り)2024年6月7日
2020年に国立新美術館で開催された「古典×現代2020—時空を超える日本のアート」に2点出展したシリーズについて横尾が語る。
これまでに中国からの影響もあって、日本の水墨画の伝統で多くの画家が「寒山拾得」を描いてきました。それだけみんなが興味を持つテーマなんだということはわかってたけど、僕は「気持ち悪い人物を描くものだ」と思いながら見ていた(笑)。
しかし、あるときに森鴎外が「寒山拾得」をテーマに著した短編を読んで、非常に興味を持ちました。「風狂の禅僧・詩僧」などと呼ばれているけど、伝記があるわけではないし、どうも架空の人物のようだと。一種の(人格化された)理念ですね。
寒山拾得の親玉みたいな存在である、豊干(ぶかん=寒山と拾得を養ったとされ、豊干禅師とも呼ばれる来歴不詳の唐の禅僧)の創作ではないかと僕は勝手に解釈しているわけです。既成の枠をはずれて自由自在に活動させられるわけですから、その生き方を美術に置き換えたらこれほど適切なテーマはありません。それで曾我蕭白の「寒山拾得」がとくに気持ち悪かったので、これを描いたのが始まりですね。
曽我蕭白は「寒山拾得」をモチーフにした作品を幾つか手がけているが、これはもっとも古い時期の作品。 絵の様式が「久米仙人図屏風」のそれとよく似ているところから、ほぼ同時期のものと推測される。 二曲一双の体裁である。 寒山拾得は、中国の伝説上の人物で、日本でも人気があり、多くの画家がモチーフに取り上げた。
横尾忠則の作品には蕭白の作品を下敷きにして描かれたものがある。『群仙図』から触発されて『消された記憶』、『雪山童子図』からは『二河白道図』などが制作されています。