メキシコペソ生活75

  「ペソ・ショック」のリターン

　ドル相場は方向感を出すのが非常に難しくなっています。実際、米雇用統計の結果を受けてドル上昇、米CPIの結果ではドル下落、FOMCの声明でドル上昇と上げ下げを繰り返してます。

　こうした状態はかなり長期化する可能性があって、残念ながら、稼ぎやすいトレンド相場は期待薄だろう。今はレンジ相場を想定しその中で「上がったら売り、下がったら買い」を続けるのが現在の最善策。それが続けば確実にもうかります。

　ドル円は155－158円の中での動きを想定してレンジトレードを続けていく。また、メキシコペソ円であるが、こちらは大統領選挙の結果に想像以上の動揺を見せている。当面、8.0円程度までの下落は想定しておく必要があるだろう。ある程度のポジション調整が終わらない限り、反転して上昇していくのは難しいかもしれません。

　政策金利が10%以上の高金利通貨ながら、対円では、過去4年で倍以上に値上がりし、投資家に大きな利益をもたらしたと見られる「最強通貨」メキシコペソ。ところが、

　6月に入り、メキシコペソが急落する「ペソ・ショック」が起きています。原因として挙げられている、先月末メキシコで実施された「大統領・議会選挙」の結果だけではない、もう一つの要因を考察してみたいと思います。

　目先的には8円を割れてくると、短期的な「下がり過ぎ」懸念からメキシコペソの下落リスクが一巡するでしょう。ただ、中長期的な「上がり過ぎ」修正においては通過点に過ぎない可能性がある。

　この6年間の取引経験から、大幅な金利差によるメキシコペソ優位に加えて、大きく値上がりしたメキシコペソ円は、投機筋にとっても人気の選好対象となってきたようです。

　CFTC（米商品先物取引委員会）統計の投機筋のメキシコペソ買い越し（米ドル売り越し）は、5月28日現在で12万枚。これは、足下における対米ドルでの買い越しとしては最大規模。一方、円の売り越し（米ドル買い越し）は15万枚に達し、これは主要な通貨の中では逆に対米ドルで最大の売り越しだ。以上の2つのデータを合わせると、メキシコペソ買い円売りポジションは相当な規模になっていた可能性があります。

　そんなメキシコペソ円が、週明け2営業日で最大8％以上の暴落となった。この間の高値からの最大下落率は1割に達した。米ドル円に換算すると、160円から一気に145円割れとなった計算になる。

　それでも、上昇トレンドに戻れるのだろうか。

　　　　　

　結論から言えば、ジャンク債になっては元も子もない。次期政権良識ある政策へ向うと観ます。
　次期政権で憲法改正に伴い総合福祉政策に基づく補助金や奨学金への支出拡大で財政赤字が増加し、格下げの懸念も出てくる。

　

　ジャンク債格付となれば、金利の上昇やメキシコへの投資減少に繋がり経済成長にも支障をきたす。AMLO大統領時代にもインフラ整備で赤字が拡大していた。
　電力庁（CFE）の権限強化や国営企業の維持はUSMCAの精神にも反する。ご聡明な次期大統領が理解していないわけでもないので、おそらく格下げにつながらない修正があるだろう。
　そもそも人気取りの財政拡大政策（年金額引き上げなど）は選挙対策だったので、選挙大勝で政策も調整があるだろう。
　米国主導のニアショアリングはメキシコ経済の安定成長や雇用の改善に繋がっている。それに反する左派的な政策を撮り続ければ、対米関係の悪化にも繋がるので市場が危惧する程の独善策は取られないと思います。

　もう一つ要因は、何故、憲法改正案が市場から嫌われたのか。
　市場から嫌われる憲法改正案は今年の2月にAMLO大統領が、18の憲法改正案を含む20の改正案を国会に提出したことに始まる。

国家警備隊の軍への配属、選挙制度改革、正規労働者の年金制度改革や電力庁（CFE）の権限強化などが含まれる。AMLO政権下で進めてきた総合福祉政策に基づく補助金や奨学金などを憲法で保障する改正もあり、一度に行政府が提出した内容としては例を見ない広範囲な内容となっている。
　大統領は、30年続いた新自由主義経済政策（ネオリベラリズム）で失われた国民の権利を取り戻す、人道主義、正義、誠実さ、民主主義の理想と原則に根差した改革と称した。
　野党や有識者からは、確定給付型年金などの理想を実現する財政的根拠に乏しく、独立自治規制機関の廃止や国営企業の権限強化、司法制度改革などにより、市場競争環境が悪化し、行政府への権限集中が起こることで、終いには国としての競争力が低下すると指摘されている。65歳以上の全高齢者に支給する高齢者一律年金だけで2024年の歳出全体の7.2％を占め、2024年度は過去に例を見ないGDP比4.9％の大幅な赤字予算が組まれている。

　羨ましいかといえば羨ましいのが正直なところだが、これを続けていけば遠からず格下げに繋がり、結果はデフォルトです。

　この単純明快な理屈をロペスオブラドール現大統領の路線を引き継ぐシェインバウム氏が理解しないはずはなく、そのシグナルを出すタイミングを見極めているところでしょう。その後、市場は徐々に落ち着きを取り戻すと観ます。５月のレベルを回復するのは年末近く、半年を要すると覚悟しています。

　今週のペソ円は12日の8.18円を底に8.51円まで切り返して引けています。このまま静かなリターンが始まるのでしょうか。