(リマスター版)
ロック自叙伝21
ステージでは機材の入れ替えが始まった。
あらかじめ台車にセットしてあるので意外にスムーズに運ぶ。
さっきより小ぶりなセットで3ピースバンドのようだ。
「今度こそFreeに違いないね。」アンジーは確信に満ちている。
舞台袖にビル・グラハムが現れると歓声が上がる。
今回のイベント関係者に謝辞を述べ観客を大歓迎すると
「Ladys and Gentlemen the Free」のアナウンスにドラムのサイモン・カークとベースのアンディ・フレーザーが出てくる。
更にポールロジャースがギターのポールコゾフと現れると会場は湧き上がる。
タイトなハイハットワークに続きミディアムテンポのブルーズ・ロックが始まる。
「” Fire And W̤a̤t̤er” ニューアルバムのタイトルナンバー」とアンジーは呟く。
この3枚目のアルバムは全米で大ヒットしていた。
2曲目はジャジーな響きのあるスローロック。
メンバーは二十歳そこそこの若さでアンディ・フレーザーは17,8に見える。
この若さで枯れた渋い味が出せるのが不思議だった。
「アンディは殆んどの曲を書いてる。」どうやら彼女のお気に入りはアンディのようだ。
続く"Remember"と"Heavy Load"も渋すぎる。ここではロジャースがエレピを弾く。
”Mr. Big"はスローロックで始まり後半は徐々にテンポアップするスリリングな展開。
特にアンディのウッドベース調のフレーズにアンジーは立ち上がり手拍子を打っている。
"Don't Say You Love Me"は幻想的なジャズロック。こちらもウッドを意識したベースラインが美しい。
この瞬間、俺の中で典型的なハードロックバンドというイメージが崩れ去った。