ロック自叙伝 その166
「気を付けて帰りぃよ。」と大学生が蔵本の駅で降りる時に声を
掛けられて目が覚めた。 あれからどうやってフェリーに乗って小松島から汽車に乗り換えたのかさっぱり覚えていない。 ホームにはもう朝陽が差し始めていて、笑顔で手を振る二人の姿が眩しかった。
二人が置いて行ったパンと牛乳で腹を起こした。
それからもう俺は眠らなかった。そのまま眠りに落ち乗り過ごしたらそれは取り返しがつかない。
何とか頑張って起きていて湯立ての駅で汽車を飛び降りて、駅前に預けてあった自転車に積んでいた制服に着替えて、そのまま学校へ直行した。
「大野!」大声に眼が覚めた。
「続き読んで。」なにがなんだかわけがわからない。周りの連中がニヤついている。
後の小川さんが小声で「ここ読んで。」とプリントに丸マークして差し出してくれる。俺は慌てて立上り、「いまはむかし 竹取のおきなと いうものありけり・・・・・。」とその古文を読んだ。
「そこまででええ。『ゆめのここちして』とはどうゆう意味や?」
「・・・・・。」
なんとか始業時間には間に合ったものの、そのまま机に突っ伏して『ゆめのここちして』眠り込んでしまっていたのだ。