被災10周年の日
2012年6月1日その刹那に障害者としての人生がスタートした。
梅雨入り前の薫風心地よい素晴らしく晴れた土曜の朝。
吉野川の河川敷に自ら切り開いたMXコースに出た。
それからの10年が如何に過酷な日々になるのか
その時は夢想だにする由もなかった。
何時になく体調も宜しくリポÐで貰ったTシャツを羽織り
大ジャンプ台にアタックする。
50半ばにして20mを超す過去最高の大ジャンプ。
マシンと完璧に一体となった身体は無重力状態となる。
次の瞬間、小ジャンプ台が壁のように目の前に迫る。
とっさに台の横の茂みに突っ込む。
突然、フロントが切り株に突き刺さりマシンが停まった。
当然、ハンドルを握ったまま体は前転する。
半回転して背中から地面に叩きつけられる。
更に体はバウンドし後頭部から落ちる。
その時、首にゴリっと音がして頭を折り曲げた上に
体はまるまったまま動かなくなる。
息が停まる。
どんなにもがいても首から下は動かず奇妙な体勢は続く。
死を意識した。
1分ほど過ぎただろうか。何とか息を吹き返した。
真面な体勢に戻ろうとしても一切動かない。
唯一、首だけは動いた。首を捩じると全身が揺れた。
続けるうちに揺れは大きくなり遂にゆらりと動いた。
あたかも大きな荷物を放り出すように全身が地面に落ちた。
仰向けに大の字になり 辺りに土埃が舞い上がった、
近くでマシンは立ったまま停まりエンジンは回っている。
一部始終を理解したが何故か体の麻痺は一時的なことで
直に元に戻るはずだと勝手に楽観していた。
埃まみれの顔に6月の太陽が容赦なく照り付ける。
軈てマシンのエンジンは止まり静寂に包まれる。
やはり体は動かず事態の深刻さに気付いた。
初夏の光は消えた。
声は出た。「助けてくれえ…」と叫び続ける。
時折、上の泥道を走る車から「何か声がする…」というが
すぐに行き過ぎる。
2時間ほど過ぎただろうか。近くの畑に来た人に発見された。