【細かすぎて伝わらない】東京五輪81kg級で金メダルを取った永瀬選手は何故強いのか?(3回戦) | 柔道が足りてない!

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昨今、柔道人口の減少が深刻みたいなので、皆様にちょっとでも興味を持って頂けるような柔道ネタなど書いて行ければと存じます。

前回に続き、なんとなく勝ってしまうように見える永瀬選手の強さの秘密に迫ってみたいと存じます。

 

今回は東京五輪81kg級3回戦。

 

パルラーティ選手(イタリア)
今年に入って調子を上げてきた、勢いのある選手で、今年の欧州選手権3位。
永瀬選手にも以前一本勝ちした事のある曲者です。

長身で永瀬選手以上にリーチがあり、遠間からの大外刈や、相手の虚を突いて突如沈み込む膝付き大内刈などを得意としています。

組み手は基本的には右組みですが、2回戦のアルバイラク選手と同じように左手で永瀬選手の右前襟を突いてくる形だけでなく、
・その形から右手で永瀬選手の左袖を持ち左組みにスイッチしてくる形
・引き手で永瀬選手の左袖&釣り手で左脇の辺りを持ってくる形
・釣り手で突如脇を差して両手で帯を取り、相撲で言う「右四つ」の接近戦を挑んでくる形
など、あの手この手で揺さぶりを掛けてきていました。

しかし、上記のうち「引き手で永瀬選手の左袖&釣り手で左脇の辺りを持ってくる形」は、明らかにパルラーティ選手の作戦ミス。

この組み手は「片襟」なので、長く続けると「指導」を取られるため、パルラーティ選手は引き手を離さざるを得ず、永瀬選手は相手がこの組み手をしてくる度に、左手を内側から巻き替えるように回して相手の袖を確保し、一方的に有利な状況を作り出していました。



事実、最後の足車「一本」につながる流れも、この組み手の攻防が発端となっていました。


それ以外で効果的だと感じたのは、2回戦でも何度か使っていましたが、相手が左手で永瀬選手の右前襟を突いて間合いを取ろうとしてきたときに、相手の左手首をいなす動作です。


この試合の中で、このいなす動作からの小外刈で攻めるシーンが何度かあり、いなす動作の後に小外刈が来るイメージがパルラーティ選手の意識にも刷り込まれていたところに、いなす動作からの足車!

この小外刈と思わせておいて足車というのがまた大変効果的でした。

右の足車を耐えようとする場合、受けは右肩を後ろに引いて、取りの引き手で右手を引っ張り出されないようにするのが通常です。

しかし、パルラーティ選手はこの時、いなしの直後に小外刈が来ると思い込んでいますから、自分の左側への攻撃を警戒し、咄嗟に左肩を後ろに引いて防御しようとしています。

つまり、足車を防御するためのスタンスとは真逆の体勢で技を喰らったため、あれほど見事に一回転したものと考えられます。


この試合では、
・相手の組み手に対して明確な対応策を持っていた
・相手のミスを見逃さず一本につなげた
・「いなす動作からの小外刈」を繰り返し相手に印象付けておいて、「いなす動作からの足車」で仕留める
といったところが秀逸で、永瀬選手の試合としては珍しく(?)その凄さが映像から伝わりやすい試合だったように感じました。


もう一つ付け加えると、前回の対戦ではパルラーティ選手に「膝付き大内刈」で一本負けを喫しており、相手の虚を突くパルラーティ選手の得意技を事前に警戒できていた事も大きかったように思います。