昭和史研究は、今「アメリカの鏡・日本」(ヘレン・ミアーズ著 中公文庫)を読み進めているが、内容が重くて読了までには暫く時間を要する。
連休疲れか、定年までの疲れが出たのか、一昨日からの体調不良が続いていたので、今日は家で静養に努めた。
そんな時は昭和史研究に勤しむべきなのだろうが、重い読書は頭が受け付けない。能の鑑賞だって能ばかりでは観客が疲れるから、合間に狂言が演じられるのである。
ということで今回ご紹介するのは、一日で読了した、気楽に読める歴史ミステリー「軍神の血脈 楠木正成秘伝」(高田崇史著 講談社文庫)である。
歴史愛好家である特攻隊生き残りの老人が、南朝の大忠臣楠木正成に関して歴史がひっくり返る真実を探り当てた途端、暴漢に毒を盛られ重体になる。
毒薬の成分を解明するためには、老人が残した手掛かりから、楠木正成の真実を突き止めなければならない。
老人の体力から、解毒までのタイムリミットは数時間。必死で動き回る老人の孫娘とボーイフレンドに魔の手が迫る。
以上がこの小説の粗筋である。著者はQEDシリーズなど歴史ミステリーを得意としているらしく、展開は手慣れたもので、破綻なく一気に最終章に至る。
楠木正成をはじめ、その周辺の史料を丹念に集め、大胆な仮説を組み立てた著者の歴史への造詣に敬意を表したい。
元々河内の悪党と呼ばれた楠木正成、その素性や人物は謎に包まれている。
結末も、さもありなんと思わせる説得力がある。
特攻隊のエピソードは、ちょっと詰め込み過ぎの感があるが、ストーリーの展開上止むを得ないか。
いずれにしても一日楽しめたことは確かである。
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