さて夏が終りに近付く頃、各地の酒蔵から満を侍して出荷されるのが「ひやおろし」である。
春に絞られ、一度火入れされた新酒が、一夏を冷んやりした蔵の中で過ごすことにより熟成され、秋口に瓶詰めされたものである。瓶詰め前に二度目の火入れはしないので、殆ど生酒の味わいである。
新酒の段階で出荷される「あらばしり」の荒削りながらフレッシュな味わいとは対照的な、熟成されたまろやかさが魅力と言われている。
東京駅グランスタのはせがわ酒店を覗くと、各酒蔵自慢の酒が多数並んでいる。目移りする中、今年のひやおろし一番手に選んだのは青森・八戸酒造の「陸奥八仙」。
元々フルーティな爽やかさが人気の酒なのだが、ひやおろしは意外に辛口で男性的な味わい。これはこれで魅力十分である。さすが楽天市場で人気ナンバーワンだけのことはある。
しかしひやおろしは「生きた酒」である。口開けの今日と、一晩越した明日では異なる味わいを見せてくれることだろう。人と違って確実に成長して行く姿が頼もしい。
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