原題;Spy School(別題;Doubting Thomas)
製作年;2008
監督;マーク・ブラットマン
脚本;マーク・ブラットマン、デヴィッド・デュボス
音楽;スティーヴ・ハンプトン、ジョン・アデア
出演;フォレスト・ランディス、アナソフィア・ロブ、リー・トンプソン、テイラー・モムセン
(ネタバレあり)
学園の問題児が大統領令嬢誘拐計画を知って犯人を捜すファミリー向け学園サスペンスです。
潜入捜査官は登場するけどスパイは登場しません。
12歳のトーマス・ミラー(フォレスト・ランディス)は宿題を忘れても、おばあちゃんが犬に食べられたと、いいかげんな作り話で言い訳をする問題児。
学校に大統領の訪問が決まった時も、校長が名指しで注意するほどだ。
ガールフレンドのジャッキー(アナソフィア・ロブ)もあきれ気味。
トーマスは悪ガキのドレイクや憧れの美少女マディソン(テイラー・モムセン)に、理科の先生は政府の人間で実験室で毒ガス兵器を製造していると嘘をつく。
実験室に入ったトーマスが、骨格標本とドライアイスの煙を使って体が溶けたと脅したら、火災報知機を押されてしまい大ごとになる。
シングルマザーの母親で校長秘書をしているクレア(リー・トンプソン)は、なんとかかばおうとするのだが、すでにトーマスの事件簿は電話帳より分厚くなっていた。
ある日、トーマスは身代金目当ての誘拐計画を打ち合わせている電話を聞いてしまう。
誘拐は学校のダンス大会で行われる。
トーマスはジャッキーにこのことを話すが、オオカミ少年状態で聞いてもらえない。
翌日、ダンス大会のゲストとして大統領の令嬢クリスティーナが来ることが発表された。
誘拐犯のターゲットがクリスティーナに違いないと考えたトーマスは校長に話す。
やはり聞き入れられず、次にトーマスは新任教師ランドール(ライダー・ストロング)に相談する。
だが、携帯電話で話すランドールの口調が犯人と似ている気がして、トーマスは話を切り上げた。
そこでトーマスは先日知り合った用務員のアルバートに事件のことを話す。
トーマスが下校すると、アルバートは何者かに「今夜決行だ」と電話するのだった。
校長はクレアにダンス大会からトーマスを締め出そうとする意向を伝える。
ランドールがトーマスの忘れ物を届けに家までやって来た。
トーマスは疑惑を口にするが、ランドールははぐらかす。
トーマスはランドールの車に忍び込み、彼の家まで行って捜索する。
壁には周辺に地図が書かれ、トランクには銃がしまわれていた。
トーマスが勝手に家を抜け出したことを知ったクレアは別居中の夫キットに相談する。
たまたま見かけたドレイクに父親が清掃業だと知られてしまう。
一方、トーマスが好きなのはマディソンだと分かっていても、彼のことが大好きなジャッキーは、結局トーマスに協力することにして二人でダンス大会に行く。
入り口で先生たちに追い返されてしまった二人は、父親が清掃業だとからかうドレイクたちと揉めてトーマスが怪我をしてしまう。
騒ぎを聞きつけたアルバートが保健室で手当てしてくれた。
そこにランドールが入ってくる。
二人が共犯と思い込んだトーマスとジャッキーは消火器を噴射して保健室から逃れ、
ロッカーに入れてあったスケボーで逃走する。
だが、トーマスとジャッキーは彼を毛嫌いする教師ベイリーに捕まり運動具倉庫に閉じ込められてしまう。
校長の差し金だった。
校長はドレイクに二人を見張らせて、ダンス会場に向かう。
会場にはクリスティーナがSPとともに入場していた。
トーマスたちはドレイクをだまし、ダクトにもぐりこんで移動する。
騒ぎでガス管が外れていることに気づかずベイリーが葉巻を吸ったため爆発。
なんとか爆風を逃れたトーマスとジャッキーだったが、もう一人の用務員グリッソムに銃を突きつけられ、またしても閉じ込められてしまう。
そこにランドールがやって来た。彼とアルバートは潜入した大統領の護衛官だった。
グリッソムの顔がわかるのはトーマスとジャッキーだけ。
一行はダンス会場へ急ぐ。
トーマスはダンス会場でグリッソムの女装を見破るが、クリスティーナを人質に取られてしまう。
グリッソムは大統領の護衛官になることが夢だったが、
20回試験を受けても精神面の問題からパスせず、犯人の側に回ったのだという。
グリッソムは屋上に向かう。仲間にヘリを準備させていた。
トーマスはクリスティーナを助けようと屋上に上るが、あっさり捕まってしまう。
ヘリの操縦士がアルバートにすり替わっていたが、銃で殴られて気絶。
グリッソムがヘリを離陸させた。
地上にいた父親のキットがトラックで追跡、ヘリから荷台に飛び降りるよう叫ぶ。
意を決したトーマスとクリスティーナはジャンプして無事荷台に着地。
一方ヘリでは意識を取り戻したアルバートがグリッソムを逮捕していた。
生徒や父兄の間から歓声が上がり、校長とベイリーも態度を一変してトーマスをほめる。
トーマスは、ようやく清掃業をしている父親のことを、みんなに話せるようになった。
マディソンがトーマスに家まで送ってほしいと頼んでくる。
ジャッキーをエスコートしてダンス大会に来たトーマスは戸惑うが、
ジャッキーはトーマスにマディソンを送っていかせる。
トーマスの脳裏には、いつも味方してくれたジャッキーの姿が浮かぶ。
ジャッキーがベンチにぽつんと座ってると、
マディソンを送ったトーマスが戻ってきた。
トーマスはダンス大会の2日目にもジャッキーを誘う。
本当に好きなのはジャッキーだと気づいたのだ。
翌日のダンス大会では人気アイドルグループのホッカプーがゲスト出演して歌い踊るのだった。
WOWOWのみの放送だったため、allcinema,onlineや映画,comといった映画紹介サイトには掲載されず、
Wikiには項目があるという珍しい作品となっています。(2025年9月18日現在)
トーマスが嘘をつくようになったのは、父親が清掃業であることを隠そうとしたことが始まりと思わせる描写があります。
これは欧米では清掃業が日本では想像できないほど下賤な職業として扱われているためで、
例えば劣勢DNAを持つ主人公が宇宙パイロットを目指す傑作SF「ガタカ」(1997)では、劣勢DNAの持ち主は清掃員になるしかないと描かれていましたし、
名匠ケン・ローチ監督の「ブレッド&ローズ」(2000)はメキシコから不正入国して清掃員をするヒロインが悪すぎる労働条件のため労働条件改善運動に参加していくドラマでした。
清掃員のモチベーションも低いようで、イギリスで日本レベルの清掃会社を起ち上げたら大金持ちになれるという話を聞いたこともあります。
スパイが登場しないのにタイトルが「スパイ・スクール」だったため、
人気シリーズ「スパイ・キッズ」にあやかった最低映画と言われてしまい、
「Doubting Thomas」(トーマスは疑う)と改題したようです。
WOWOW放送時もこちらのタイトルで表示されていました。
そこまでひどくはないですが脚本の完成度は高くありません。
もっと少年探偵物的に犯人捜しをしたほうが子供たちが喜んだ気がします。
クライマックスもヘリとか使って派手にしてますが、
かなり無理矢理な印象でした。
どうやってパイロットが入れ替わったのか全く分かりません。
三角関係設定が必要だったかも疑問でした。
切ない表情を見せるアナソフィア・ロブは、さすがに上手い演技ですが。
あまり考えずに3人の子役の演技を楽しむ作品ということかもしれません。
主役のフォレスト・ランディスは「12人のパパ」(2003)シリーズや「フライトプラン」(2005)などに出演しましたが、本作を最後に出演作がありません。
アナソフィア・ロブは「チャーリーとチョコレート工場」(2005)のバイオレット・ボーレガード役で注目を集め、青春映画の秀作「テラビシアにかける橋」(2007)や実話をもとにした「ソウル・サーファー」(2011)が代表作です。
近年もNetflixの「レベル・リッジ」(2024)やテレビドラマで活躍しているようです。
テイラー・モムセンは、ダコタ・ファニングも出演した「ヘンゼルとグレーテル」(2002)でタイトルロールを演じ、「ゴシップガール」(2007~)のジェニー・ハンフリー役でブレイクしました。
ロックバンド、プリティー・レックレスのヴォーカルとしても活躍していて、「ゴシップガール」終了後は音楽活動に専念しているようです。
本家ともいえる「スパイキッズ2 失われた夢の島」(2002)では大統領令嬢を演じました。
また、プロスケートボーダーのライアン・シェクラーとアメリカンフットボール選手のジョナサン・ヴィルマが本人役でカメオ出演していますが、全く専門外なのでどのくらい有名な人なのか分かりませんでした。
エンディングに登場するホッカプーは、Wikiによるとスパイスガールズから始まった女性グループ人気の流れで結成されたアイドルで、
オリジナルアルバムを発売することはありませんでしたが、
楽曲の多くがディズニーのコンピレーション・アルバムに収録されたとあるので、
日本でも聞いたことのある人がいるかもしれません。