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隅の老人の部屋

映画やドラマの紹介。感想を中心に
思い出や日々の出来事を書き込んでいこうと思います。

沖縄のサトウキビを使って高級ラム酒を開発した実話をもとに描いた原田マハの小説を原作にした感動のサクセスストーリーです。
客席は空席が目立っていて、インディーズの地方おこしタイアップ映画としては仕方ないかもしれませんが、
作品の出来栄えを考えると残念でした。

沖縄の言葉で真心を意味する名前を持つまじむ(伊藤沙莉)は契約社員として雑用係のような仕事をしていました。
もう一人いた契約社員仲間は司法書士試験に受かって退社してしまい、モチベーションは下がる一方です。
そんなときサトウキビから作ったラム酒の美味しさを知り、
まじむは思いつきから社内ベンチャーコンペに沖縄産サトウキビを使ったラム酒醸造を提案しました。

提案は一次審査をパスして、まじむは本格的にラム酒醸造プロジェクトに取り組んでいきます。
納得のいくラム酒を目指すまじむは南大東島のサトウキビを使いたいのですが、
現地の高齢者は新しい事業に懐疑的で難航します。
一方、醸造家にはネームバリュー目当てに人気のセレブ醸造家が候補となりますが、
ラム酒を労働者向けの酒とあしらい明らかに金目当てな態度に、まじむは不信感を抱きます。

いよいよ最終審査が近づき、まじむはの人々の説得にまたしても失敗しますが、
たまたま届いた高級のグレイスラム酒で利き酒を行ったところ、
若者を中心に賛同者が現れ、南大東島での工場建設が決まりました。
醸造家には美味しい酒造りに心血を注ぐ名醸造家、瀬那覇仁裕(滝藤賢一)に交渉します。
現在手掛けている酒に集中したいと一旦は断られますが、
仕事に区切りがついたことと、
まじむの実家である豆腐店を訪れた仁裕がまじむが手作りの良さを知りながら育ったとを察したことにより、
引き受けてもらえることとなりました。

いよいよ最終プレゼンテーションとなり、
事業化に対して万全な体制を整えたライヴァルに対し、
まじむは沖縄人の心情に訴えた異色のプレゼンテーションを行って勝利を得ます。
やがて完成したラム酒に、仁裕は「風のマジム」と名付けるのでした。

まじむの熱意が実を結んでいく終盤の展開には感動させられました。
原作は読んでいないし、実際のの経緯についても知らないのですが、
ネットで調べるとモデルとなった金城社長も酒好きらしく、
物造りに愛情は必要なんだなあ、と思いました。

伊藤沙莉は演技も上手いですが、

お兄さんがクズ芸人で売っているせいか苦労人感があって

バラエティとかに出演しても物腰が柔らかいのが素敵です。

インディーズ作品としては実力のある充実したキャスティングも魅力です。
特に、まじむを応援しつつも、一方では自分の豆腐店を継いでほしかった祖母に扮した高畑淳子の粋と寂しさを表現した演技には胸を打たたれました。
ヒロインのアンチテーゼとして描かれる、ある意味損な役回りを演じたシシド・カフカも上手いです。
メチャクチャ有能なのにビジネスを優先するあまり人々の共感を得られないという、ちょっと気の毒なキャラでした。
まじむにラム酒のことを教えるバーのオーナー役の染谷将太や、
酒造りとなると没頭してしまうこだわりの醸造家役の滝藤賢一も、
魅力的な人物像を創り上げていました。

とりあえず帰りにカクヤスで格安のラムを買ってみました。
本作のモデルとなった南大東島のグレイスラムはコルコルというブランド名で販売されています。