原作とアニメ版は観ていません。
不良物コミックは人気コンテンツですが、
私自身はほとんど読んだことがありません。
リアルタイムだった「夕焼け番長」でさえ全巻は読んでいなくて、
学生時代に人気だった「ビーバップハイスクール」も
映画版はほとんど見ているのに対し原作は最初の2、3巻しか読んでいません。

不良物は若手のイケメン俳優を起用して
女性観客も動員できるというメリットがあるようです。
今回も女性観客の割合が多く感じました。
一匹狼の桜遥(水上恒司)は不良校の風鈴高校にテッペン取ったると
イキッて転校してきます。
ところが2年の間にすっかり様変わりしていて、
風鈴高校の不良たちは防風林と呼ばれ、
街を守る自警団的存在として人々から慕われていました。

防風林のトップ、梅宮一(上杉柊平)は、屋上で野菜を育てている温厚な人物です。
この物語の最大の謎は
高校の屋上に建物より遥かに長い樹齢があると思える巨樹がそびえていることでした。
もしかしたら巨樹の存在は、
この物語が一種のファンタジーであることの意思表示なのかもしれません。
元々は人が好さそうな桜は勢いに飲まれて巡回に連れ出され、
防風林と行動を共にするようになっていきます。
桜は半身が髪の色も目の色も異なる容貌をしていて、
そのことから差別を受けて育ち、
一匹狼となったようです。
桜は見た目で差別することのない防風林のメンバーに少しずつ心を開いていきます。

街にはスラム化した立ち入り禁止の区画があって、
獅子頭連の対抗勢力、獅子頭連のシマとなっていました。
獅子頭連と獅子頭連の抗争をメインとしてストーリーが進んでいきます。
この作品の特徴は手下格も含めて
それほど凶悪そうな容貌をした者がいないことでした。
みんな、どこか心優しそうに見えます。
獅子頭連のトップ(なぜか頭取と呼ばれています)、兎耳山(とみやま、山下幸輝)は、
カットによっては黄色いカズレーザーに見えました。

もう一つの特徴はBLを思わせる描写が何ヵ所かあることで、
これが今風なのかなあと感じました。
本格的なBL物ではないので、みな片想いで発展することはありませんが、
抗争の裏には兎耳山の梅宮に対する愛憎が秘められています。
ちなみにマドンナ的存在の橘ことは(八木莉可子)に惚れる奴はひとりもいません。
![]()

ケンカのシーンに迫力がないわけではないのですが、
どこか好きな同志がじゃれあっている印象が付きまとって、
緊張感には欠けています。
全体を包む和やかな雰囲気が魅力と言えば魅力でした。
余談ですが普段は穏やかな主人公を描いた不良物としては
江口洋介と織田裕二が共演した「湘南爆走族」(1987)がお気に入りです。




