映画感想 謎の男VS警察「爆弾」(ネタバレあり) | 隅の老人の部屋

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今回は物語の結末について一部言及していますのでご注意ください。

取調室の場面をメインに描いた、胸くそ版「ユージュアル・サスペクツ」(1995)といった趣きの作品です。

原作も面白そうなのですが、読んでいません。


酒屋で暴れた男(佐藤二朗)が逮捕され、
担当の等々力(染谷将太)が取り調べを始めます。
スズキタゴサクと名乗るその男は、霊感が働いたと称して秋葉原における爆破事件を予告し、
本庁から派遣された清宮(渡部篤郎)と類家(山田裕貴)が取り調べを交代します。

見るからに社会の底辺で蠢くクズを装ったスズキを、

エリート意識の高い警察官僚たちは舐めてかかり翻弄され続けて、

ついには未曾有の同時多発テロを阻止できるかどうかという事件に発展してしまいます。
あからさまに無能な管理職のあやまった方針も、さらに事態ををさらに悪化させていました。

動きが少なくなりがちな展開の中で、刑事昇進を狙う矢吹(坂東龍汰)とタメ口の後輩・倖田(伊藤沙莉)の制服警官バディによるフライング気味な活躍が良いアクセントになっています。

実力のある俳優をそろえたキャスティングも魅力でした。
中でもやっぱり佐藤二朗の存在感が圧巻で、
序盤の机を挟んで染谷将太と対峙する姿を真横から捉えたカットでの顔の大きさの差には圧倒されました。

緊張感にあふれた展開ですが、
それなりに有能そうな清宮が、類家の忠告も聞き入れずに尋問を打ち切ってしまう場面は、
ストーリーの都合みたいに感じられて違和感がありました。

スズキは警察を騙してバカにすることに喜びを見い出す確信犯で、
劇中ほとんど真実を語っていないように思えます。
類家による最後の推理も、完全にだまされているように感じました。
最期の爆弾は、数が売れるものに仕掛けられていたので、
あまり早くに仕掛けてしまうと爆発時間前に売れて見つかってしまう危険性があります。

とすれば爆弾が仕掛けられたのは、せいぜい事件が始まる前日で、
それまではシェアハウスでの殺人は起きていなかったことになります。
いくらスズキが知能犯だとしても、すべての物語を組み立てて、
追加の時限爆弾やトラップを仕掛けるには、
時間が足りないのではないでしょうか。

それどころか3人がテロに対して計画書でも残していなければ、スズキには事件の概要すらつかめないはずです。
さらに、たとえそのようなものがあったとしても、新聞販売所には到達できないでしょう。

スズキは最初から犯罪に加わっていたと考える方が自然です。
おそらく首謀者で、3人だけでなく石川の母親も操られていた気がしました。
スズキは、自信家の類家が敗北は自分だけのせいではなくスズキも知らなかったからだと、
言い訳的な理由づけしてしまうようにミスリードしていったのではないでしょうか。

2時間20分近い上映時間を一気に見せきる力を持った作品です。
フィルモグラフィーを調べたら、永井聡監督作品は全て見ていました。
多岐のジャンルにわたる作品群でどれも面白かったのですが、
本作が一番優れていたと思います。
(「いぬのえいが」(2004)も大好きなのですが、複数の監督によるオムニバスなので)