映画感想 戦時中の日記が怪異を起こす「火喰鳥を、喰う」(ネタバレあり) | 隅の老人の部屋

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KADOKAWAとギャガのインディーズ小品ですが、
水上恒司と宮舘涼太の人気か女性客を中心にけっこう混んでいました。

予告編を見てホラーテイストのミステリーかと思っていましたが、
ミステリー仕立てのホラー映画でした。
ゴア描写やショック演出はありませんが、
謎めいたストーリーで緊張感があってなかなか面白い作品です。

信州の旧家で墓石から一人の記録だけ削り消される事件が起きます。
記録の消された人物、貞市は第2次大戦中南方の島で戦死していて、
彼が日記を書いた手帳が発見され返還されることになりました。

日記には敗色強くなった戦地で生き残った3人の兵士のサヴァイヴァルが記されていて、
現地の火喰鳥を食べようとするところで記述が途絶えています。
この日記が戻されたときから、
日記に火喰鳥を食べたと書き込む者や高熱を出して寝込む者が続出し始めます。

やがて祖父の失踪や、戦地から生還していた老人の焼死など怪異は拡大し、
主人公・雄司(水上恒司)の妻・夕里子(山下美月)は学生時代に付き合っていた霊能者・総一郎(宮舘涼太)を呼びます。
実は夕里子も霊感の持ち主だったことも明かされました。

この3人の三角関係と同時に
大学の化学助教授で超常現象など否定する立場の雄司の、相反する立場の総一郎に対する確執がドラマを盛り上げています。

貞市は戦死せずに日本に生還したという者が現れ、
発見された祖父のトラックは長年放置されていた状態となっており、
削られていた墓石には祖父の死が記され、
ついに現実が侵食され始めます。

日記に込められた生への執念や孤独な霊能者の想いを止めて現実を元に戻すことはできるのか、
雄司の幻覚に現れる少女の正体は何なのか、
ラストまで引きつけられました。
これまでも「空飛ぶタイヤ」(2018)や「居眠り磐音」(2019)で手堅い演出を見せた本木克英の手腕が発揮されています。

ワンシーンだけ出演の佐伯日菜子も上手い効果を上げています。
ちょっと切ないラストシーンも印象的でした。

入場者プレゼントは栞でした。