映画感想 異色のボディ・バイオレンス・ラブストーリー「愛はステロイド」(ネタバレあり) | 隅の老人の部屋

隅の老人の部屋

映画やドラマの紹介。感想を中心に
思い出や日々の出来事を書き込んでいこうと思います。

原題「LOVE LIES BLEEDING」、愛は血を流すといった意味のようです。
住んでいるのは大半ホワイトトラッシュみたいな町を舞台に、
レズビアンのカップルが殺人事件に絡んでいく犯罪映画で、
A24作品なので異色なのが当たり前という気もしました。

筋金入りのレズビアンといわれるルウ(クリステン・スチュワート)は勤務するジムで
マッチョな流れ者ジャッキー(ケイティ・オブライアン)に一目ぼれ、
さっそく近づいて関係を持ち同棲します。

ヴェガスのボディビルコンテストで優勝を目指すジャッキーに、
ルウはステロイドを投与、
ジャッキーは筋肉が異常に発達するとともに精神を侵されていきます。

ルウが毛嫌いしている父親(エド・ハリス)は表向きジムや射撃練習場を経営する実業家、
裏では銃の密輸を行う地元裏社会の大物で、
地元の警察も手下扱いですが、
FBIに目をつけられていて、
不利な証言をしそうな者は始末しています。

一方、ルウの姉ベス(ジェナ・マローン)は夫のJJ(デイヴ・フランコ)から激しいDVを受けていて、
洗脳状態のベス本人はそれを受け入れていますが、
ルウはJJに強い憎しみを抱いています。

ベスが重傷を負ったとき、
ルウの憎しみに感化されたジャッキーの精神が暴走してJJを惨殺してしまいます。
事件を知ったルウが殺人を父親になすりつけようとしたことと、
死体を運ぶ途中でルウの元カノ・デイジーに目撃されたことから、
事態はどんどん悪化していきます。

という展開でストーリー自体はステロイドをドラッグに置き換えたら、
わりと普通の犯罪サスペンスかな、
とか思いながら中盤までは見ていました。
特筆すべきはキャスティングの面白さで、
エド・ハリスは出てきただけで怪演という独特の空気感を出しています。
バイセクシャルを公表しているクリステン・スチュワートの端正で男前な風貌は役に見事ハマっていました。
マッチョなボディのケイティ・オブライアンは笑顔が無邪気そうで狂気に陥った時とのギャップに圧倒されます。
ジェナ・マローンは出演作を見るのが10年ぶりくらいでエンドクレジットまで分かりませんでした。

予告編からクライマックスは超人ハルク(1977~ルー・フェリグノのテレビ版のほうです)みたいになるのかなと考えていましたが、
想像の上を行く展開で観客席から笑いが起きるほどでした。
幻覚か現実かも分かりません。

さらに凄みを感じたのは、
普通を装っていたルウが実は父親譲りの非道な性格の持ち主で、
父親への異様な憎しみも、
自分の残酷さから母親に見捨てられたことを転嫁するためだったのでは、
と思えてくる終盤です。
ジャッキーもステロイドを打たれなければ、まともに生きられたでしょう。

Wikiによればケイティ・オブライアンは空手とハプキドー(韓国の武術だそうです)の黒帯を持つ武道家でもあり前職は警察官、
ボディビルをしたこともあったそうですがステロイドの蔓延を嫌って短期間でやめたようです。
フィルモグラフィーを見ると役の大小は別として「ブラックライトニング」(2018~)、「エージェント・オブ・シールド・シーズン7」(2020)、「マンダロリアン・シーズン2、3」(2020~)、「アントマン&ワスプ:クアントマニア」(2023)、「ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング」(2025)とDC、マーベル、スターウォーズからMIまで制覇、新作は「バトルランナー」(1987)をエドガー・ライト監督がリメイクした「ランニング・マン」(2025)とドラッグクイーンとゾンビの戦いを描いたホラーコメディ「Queens of the Dead」(2025)とのことです。