「岸辺露伴」シリーズや「正直不動産」などの人気コンテンツだけでなく、
本作や「オリバーな犬たち」のようなマニアックな作品も映画化されるNHK作品。
上映回数が少ないこともあって満席で、
幼い子供連れもけっこういてEテレの底力を感じました。
1970年代、岡本太郎の発言や芸術作人を元に製作された人気特撮ドラマの映画版という設定で、
製作当時の時代感を出そうとしている点では、
内容が現代的すぎた「バズ・ライトイヤー」(2022)より努力が感じられます。
アナログ放送時代のテレビ映像としてはともかく、
映画の画面としてはちょっとボケすぎになっている気はしますが。
1970年の大阪万博が開催されるなか、
3大奇獣が現れ、でたらめな巨人タローマンが親子丼にします。
地球防衛隊には未来からアンドロイドがやってきて
昭和100年には宇宙万博が開催されているということでした。
昭和がそこまで続いているとすると、
昭和天皇がどうなっているのか気になるところですが言及されません。
その宇宙万博がテロリストに狙われていて、
現在過去未来は連動しているという考えから、
宇宙万博が消滅すれば70年の大阪万博も消えてしまうということになり、
地球防衛隊の隊員たちは未来へと向かいます。
未来ではみな秩序正しく暮らしていて、
でたらめな行動は誰もとりません。
心にでたらめさが多く町に受けいれられない少女が辺境に暮らしていたりします。
だが、それには裏があり、
でたらめを否定する支配者が日本人からでたらめの力を吸い取り、
宇宙人にエネルギーとして売っていたのです。
テロリストとされたのは自由なでたらめを求めるレジスタンスでした。
支配者の正体は誰か、そしてレジスタンスのリーダーは?
ということでストーリーは昔のディストピア物の王道パターンになっていきます。
ほとんど役に立たないタローマン8兄弟の登場とか、
ナンセンスギャグの連発もあって予想以上に楽しめました。
世界的に評価される芸術性と子供にも愛される親しみやすさを両立させた岡本太郎の爆発力を再認識させられる作品です。
サカナクションの山口一郎が少年時代に見てグッズも買ったという設定なので、
この劇場版が製作されたのは1990年前後あたりなのでしょうか。
山口一郎が実は未来人でタイムトラベルして見たという可能性もあります。
余談ですが芸術家の世界観が実体化するというテーマでは、
サルバトール・ダリの作品をモチーフにした荒巻義雄の短編SF「柔らかい時計」がなかなかの傑作でした。