今回は作品が持つ謎の部分にも言及しているのでご注意ください。
ベルギー・オランダ合作によるダークなタッチの青春映画です。
エヴァはカメラマンの助手として働いていますが、
心を閉ざした生活をしていて彼女に好意を寄せる男性にも心を開くことがありません。
両親のことも毛嫌いしていて、そのため妹とも仲たがいしてしまいます。
ある日、エヴァは少女時代に水の事故で亡くなったヤンの追悼会開催をネットで知り、
13歳の夏を回想します。
エヴァは両親と妹の4人で暮らしていましたが、
父親は貧乏な暮らしに嫌気がさして愚痴っぽくなる時があり、
母親はアル中気味で、しばしば昼間から寝ています。
エヴァにはティムとラウレンス二人の友人がいます。
もともとは4人組で、もう一人が亡くなったティムの兄ヤンでした。
思春期になったティムとラウレンスは女性に興味を持ち始め、
街の女の子にクイズを出して正解すれば金を払う代わり、一回間違えるごとに服を一枚脱ぐというゲームを仕掛けます。
エヴァはゲームに加担しながら、二人が自分に興味を持たないことに不満を覚えてもいます。
エヴァはある日父親から最高の難問クイズを教えてもらうのですが、
残念なのはこの難問が簡単すぎることです。
中学生レベルであれば答えにたどりつける子は少なからずいると思えるレベルです。
ストーリーの都合上、無理やり難問として描いている印象を受けました。
街にいつも乗馬で外出するエリザがやってきて、エヴァは仲良くなります。
エリザは両親に捨てられて大叔母と暮らすようになったと話し、
唯一の心のよりどころが愛馬でした。
エヴァも馬を可愛がって近くに生えていた草花を食べさせますが、
それが毒草だったため馬は死んでしまいます。
嘆き悲しむエリザにエヴァは真実を隠しますが、
秘密を告白するゲームでティムとラウレンスには話してしまいます。
このあたりで、その後に起こる悲劇の展開についてもある程度予測がついてしまうのが、
ちょっと残念でした。
長い年月を経ても癒えることのなかった痛みや怒りというテーマは伝わってくるので、
ミステリー仕立てにしなかった方が心に響いたのでは、
と思ってしまったのですが、
観終わってから考えると実は映画では直接描かれなかった
もう一つの真相があるのではないかということに気づきました。
ヤンの追悼会でエヴァは一つの思い出話をしますが、
それこそヤンの死んだときの出来事ではなかったのかということです。
一人で陸に戻ったエヴァは、ことの重大さに口をつぐんでしまったのではないでしょうか。
本来秘密にすべき馬の出来事を口にしてしまったのも、
さらに重大な秘密を抱えていたため、と考えれば納得がいきます。
エヴァが最後の行動を起こすのに、ヤンの追悼会の日を選んだのも理解できます。
長い年月が経っても人生の時を進めることができなくなってしまったエヴァの哀しみがひしひしと伝わってきました。
余談ですがゲームに参加する少女のTシャツの柄がぼかして消されている場面があって、
ティーンエイジャーの女の子が映画館で映せないほどの過激な柄?と気になって調べたら
鉄腕アトムとウランちゃんのプリントでした。
著作権ってここまで厳しくなってるのか、とこれはこれで驚きました。
この作品は「映画史に残る後味最悪<胸糞映画>の傑作」をウリにしていますが、
どうなのでしょうか。
このコピーでは対象となる観客層をせばめてしまっているように感じますし、
内容的にもそぐわない気がします。
ちなみに私にとっての胸糞映画トップはヨーロッパの闇ポルノ業界を描いた「セルビアン・フィルム」(2010)ですが、この作品は内容的に許容できないという人もいると思われ、
他人に薦めることははばかられます。
そこで2番目に頭に浮かんだのは「サマー・オブ・84 」(2017)でした。
隣人が連続殺人犯ではないかと思い込んだ少年が仲間たちとともに、証拠を探しめる、
「スタンド・バイ・ミー」(1986)のサスペンス・ホラー版といった趣きの作品だっただけに、
ラストの展開には本当に嫌な気分にさせられました。