映画感想 異色のノワール・ミュージカル「エミリア・ペレス」(ネタばれあり) | 隅の老人の部屋

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予告編を見て一風変わったノワールと思っていて、
ミュージカルとは知らなかったので少し驚きました。
ミュージカルはなかなかハードルが高いと感じていて
一歩間違うと曲に尺を取られて人物描写やストーリー展開がおざなりになったり
緊張感がとぎれてしまったりするように感じることがあるのですが、
この作品はバランスが取れていて完成度の高い作品に仕上がっています。
曲も歌い上げるというよりは、つぶやくような曲が多く、それが作品内容に合っていると感じました。

 

 

うその多い弁護士活動に嫌気がさしていたリタに極秘の依頼が舞い込みます。
それはメキシコで恐怖の対象となっている麻薬王マニタスが、実はトランスジェンダーで、今までの全てを捨てて、自分らしく生きたいというものでした。

リタは性転換手術を手配し、マミタスは死を偽装してエミリア・ペレスとして生まれ変わります。
4年後、エミリアと再会したリタは再び協力するようになります。
エミリアは、ギャングに殺された被害者の遺体を探し出し、遺族に返還する慈善事業を立ち上げ、社会的に評価される人物になっていきます。

しかし、エミリアがマミタスと気づかない元妻ジェシーが再婚しようとしたため、
子供だけは手放したくないエミリアにギャングの本性がよみがえり、
物語は悲劇へと向かっていきます。

なかなか皮肉なストーリーで、
いくら贖罪的な行動をとっても麻薬王時代にはどれだけの犠牲者を生んだかわからないだけに
報いは当然だったのかもしれません。

ゾーイ・サルダナはやや狂言回し的な役割ですが奥行きを感じさせる達者な演技を披露しています。
カルラ・ソフィア・ガスコンの演技もインパクトがありました。
個人的にはB級アクション「ゲッタウェイ スーパースネーク」(2013)以来久しぶりに見たセレーナ・ゴメスが、
すっかり大人の女優になっていたことに感慨を覚えました。

メインの製作国がフランスで監督脚本のジャック・オーディアールもフランス人ということもあるのかメキシコやトランスジェンダーの描写が現実とは違うという不評も多いとのことです。
あくまで寓話的な物語と捉えたほうがいいのかもしれません。