英語タイトル;DRIFTING SCHOOL
製作年;1995
監督;J.J.ミムラ
脚本;エリック・シャーマン、ヒデヒロ・イトウ
音楽;ソムトウ・スカーリトクル
出演;ドレイク・ベル、ビリー・ドラゴ、ババ・スミス、ヘンリー・シルヴァ、小西博之
(ネタバレあり)
楳図かずおの傑作「漂流教室」の外国人キャスト版実写化です。
「伝説のコミックがハリウッドで蘇える」がキャッチコピーの日米合作というふれこみですが、実態は日本資本によるビデオ用作品といったところでしょう。
監督J.J.ミムラの正体は「キタキツネ物語」(1978)で助監督をしていた三村順一という人らしいです。
原子力衛星にトラブルが発生、ロサンゼルスへと落下していく。
ケニー少年(ドレイク・ベル)は、従兄弟ジョンのバスケ試合を見にモンロー高校へとやって来ていた。
また一方では超能力を持つ殺人鬼キング(ビリー・ドラゴ)が警官を精神操作して脱走、モンロー高校へと逃げ込む。
将軍(ヘンリー・シルヴァ)の指揮の下、衛星はビームによって破壊されるが、発生したエネルギー波がモンロー校を時空のかなたに運び去ってしまう。
当然モンロー校への送電もストップし、ジョンたちが非常発電機を探していると、発明オタクのポールが光線銃を作り上げていた。
バスケのコーチ、ジャクソン(ババ・スミス)らとともに行方不明者を探しに外に出たジョンは血まみれのスニーカーを発見。
ジャクソンは警官の射殺死体も見つける。校長までも殺されていた。
翌朝になってようやく外を見た登場人物たちは、学校の周辺が消え去り荒野の真っ只中にいることを知る。
いくらなんでも理解しがたい展開です。
殺人事件が起こっているのに外部に連絡しようとは誰もしないし、家に帰ろうとする生徒もいません。
しかも、この異常事態に対して登場人物の反応が薄すぎて説得力にも欠けています。
みんな脚本読んで知ってましたよって顔をしてます。
校門の外には学校に取り残された者たちの名を記した石碑があったが、ケニーの名前だけがなかった
キングは超能力で数人を操り高校を占領、抵抗したジャクソンを射殺した。
迫力のない殴り合いになった後、キングは女生徒ナンシーを人質に人質にピックアップ・トラックで逃走。荷台に乗ったケニーも連れ去られてしまう。
バスケ対戦校のコーチ役で出演していた小西博之もここで死亡。
その頃、現在の自宅にいるケニーの母親は、ケニーの危機を悟っていた。
ケニーとナンシーが公園跡に逃げ込むと、時空を超えて意思を通じた母親が催涙スプレーを残しておいてくれた。
しかし古くなりすぎていて使えない。オマヌケ。
銃を手に迫るキング。そのときモンスターが現れ、隙を突いてケニーたちは仲間の元に戻ることが出来た。
指揮権を握った生徒オオトモは弱者切り捨ての方針を打ち出す。
それを知ったジョンは彼と対立、オオトモをぶちのめす。
すっかり反省して真人間になるオオトモ、ってジョン・フォード映画かこれは。
ポールは洞窟を探検してTVスタジオを発見、そこにあったビデオテープを再生する。
それにはモンロー校消失のニュースが収録されていた。
ケニーはニュース映像の母親に語りかけて必要な薬をスタジオに隠してもらように頼む。
薬を見つけて喜ぶケニーたちをモンスターが襲ってきた。
ここで生徒の一人サムが犠牲になる。
ほかの生徒を逃がすためサムが自ら犠牲になるという展開なのですが、
演出に緊張感がないため普通に全員逃げられたように見えてしまい、
無駄死にと思えてしまいます。
学校に戻るとキングが食料を奪っていた。彼はモンスター化し始めてしまう。
助けを求めるキングをポールが光線銃で始末する。
ポールが調べた結果、怪物は放射能で変異した人類だと分かる。
生徒たちはショックを受けた様子もなく、怪物どもをぶっ殺そうぜ、とか嬉々として言ってのける。
ジョンたちは怪物と戦うパワーを得るため洞窟に向かう。
洞窟の奥にはなぜか原子力発電施設があった。
なんだかマッド・サイエンティストっぽくなってきたポールは、周囲の制止も聞かず設備を稼動させる。
暴走した原発の振動で洞窟の一部が崩れ、ジョンは岩の下敷きとなって死んでしまう。
そこにモンスターが襲ってくる。
ケニーは光線銃でモンスターを消滅させた。
ポールは光線銃で時空に穴を開け、自分たちの時代に帰るつもりだった。
だが、残されたエネルギーは子供一人分しかない。生徒たちはケニーを一人送り返すのだった。
皆が石碑に戻るとそこには大統領となったケニーからのメッセージが刻まれ、石碑の下のシェルターに必要な物資が保管されていると記されていた。
根本的にビデオ用の低予算作品として90分で映像化するのは無理がありすぎました。
いくら科学オタクでも一介の高校生のポールが次々と真相を言い当てるのも都合よすぎます。
いとも簡単に光線銃とか作っちゃうのは、悪名高い「レイダース/失われたゾンビ」(1986)レベルです。
母親と時空を超えて意思疎通する主人公という重要な展開も、親子の絆を感じさせた原作に比べ、その場しのぎのご都合主義にしか見えません。
モンスターを消滅させた光線をケニーに照射するクライマックスも無茶に思えました。
大林宣彦監督版、本作、そして窪塚洋介主演のテレビドラマと3度映像化された「漂流教室」ですが、いずれも原作の足元にも及んでいません。
「漂流教室」を本気で映像化するなら、しっかり予算をかけて3部作くらいにしないと無理なのではないでしょうか。
ビリー・ドラゴ、ヘンリー・シルヴァという新旧の悪役俳優が出演し、ババ・スミスは「ポリス・アカデミー」のハイタワーが当たり役。というわけでギャラには、そこそこ予算を使ったのかもしれません。
そのせいで予算が足りなくなり、映像がしょぼくなったという可能性もあります。
もっともビリー・ドラゴ以外は皆前半しか出番がないのですが。
余談ですが、このひどい脚本を書いたエリック・シャーマンについてIMDbで調べたら、脚本は数本のみで本業はプロデューサーのようです。
アニメ「鬼滅の刃」や「ベイブレード」の製作者と記載されていて驚きました。
おそらく英語吹き替え版を作ったという程度なのではないでしょうか。IMDbの記事も鵜吞みにはできないなと思いました。