ストーリーの結末等にふれている部分がありますのでご注意下さい。
雪はすっかり止んで日の光は強い。息子は突然現れた遊び相手に大喜びで子犬のように積もった雪と戯れている。
甥御さん、子供がお好きなんですね。
「そうだね。サンヒョクもよく小さい時の彼と遊んであげてたんだ。何だか10何年か前の光景を見ているみたいで不思議だよ。」
そう、サンヒョクは息子が生まれた時もすぐ駆けつけてくれて
「これで僕も立派なおじさんだ」
と笑っていたっけ…。
おじ様、何だか以前お会いした時よりお元気になられたみたいで本当によかった。
「そうだね。彼のお陰かな。それにどんどん大きくなる可愛い孫達もいるしね。」
最後のセリフはおば様の事を思うと素直には頷けない。
おじ様は真面目な顔になって、
「ユジン、今日はサンヒョクの葬儀の事思い出させてしまったね。私もまだ葬儀の日の事は思い出したくないんだ。いや、思い出そうとすると頭が真っ白になってしまう。」
私も同じです。
いえ、おじ様達が受けたショックとは比べ物にならないけれど…。
おじ様が振り切るように明るい口調で言葉を続ける。
「そうだ、ヒョンスの、ユジンのお父さんのお墓参りもするんだろう?
私達も一緒について行っていいかな?きっと可愛い孫達を独り占めにして友達甲斐のない奴だと怒ってるぞ。」
そうですね…。でも父のお墓は山の上の方なので雪があると足場が悪くて。それに母と妹がちょくちょく行ってるはずですから、今日でなくても。
「こらこら、ユジン。友達の、いや義理の弟だな。そのお墓参りにきて自分のお父さんのお墓には行かないつもりかい?義理とはいえ、そんな親不孝な子を娘にした覚えはないぞ。」
おじ様がふざけて私の頭をコツンとするとふりをした。
亡くなった父は幼かった私を怒る事はほとんどなかったそうだが、時折私がいたずらをすると頭をコツンとするふりをしたらしい。
小さなユジンはその時目をまん丸にしてお父さんに必死でしがみつき「お父さん、ごめんなさい、ごめんなさい」とあやまっていたと。
私にその記憶はない。妹は母からその話を聞くと「お姉ちゃんがそんな事するなんて」といつも笑う。
次の瞬間私は片手は娘の手を繋いだまま、片手はおじ様の腕をしっかりと握っていた。
「お父さん、ごめんなさい…。」
思わず涙がこぼれ、雪の上にポタポタっと落ちた。
おじ様は私の背中を何度も、何度も優しく叩きながら娘にこういった。
「お母さんはときどき泣き虫になるね。子供の時からちっとも変わらない。」
娘はおじ様を、いえ私のお父さんを見上げて大きく頷いた。