ハンナ・アレント「暗い時代の人々」(ちくま学芸文庫・1400円+税) | 野球少年のひとりごと

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孫娘たち(中1になる双子の)は、夏休みに入っても進学塾通いで、毎日夕方から母親の車で南海貝塚駅前にある進学塾まで出かけている。帰宅するのはいつも10時過ぎで、それから入浴し一服してから2時間ほど塾の宿題をこなし、就寝するのは12時30分というハードスケジュールである。地域いちばんの進学校を目指すのに必要かもしれないが、まだまだ先は長いので息切れしないようにして貰いたい。そのふたり学校の夏休みの理科の宿題で、ひとりは裏庭にたくさん発生した「蝉」を、もうひとりはこちらは娘がたくさん飼っている(数十匹はいる)「クワガタ」を、研究テーマにするらしい。何をどのように研究するのか興味がある。さて、私の子供時代の思い出であるが、夏休みの宿題で粘土細工の「ワニ」を作ったことがある。褒めるのがたいへん上手だった(成年になるまで何かにつけ、いつも褒められていた気がする)父が、普段より大層に「いいのが出来た」と褒めてくれた。どちらかというと不器用な私である(図工が5段階で2か3のことが多かった)が、父の言葉に支えられて自信をもって学校へ提出したら、その日のうちに足の1本が折れてしまった。その後の顛末については思い出せない。

 

本の話である。昨日の続きで、ハンナ・アレントの主要著作を収めた5冊からなる「ちくま学芸文庫」の残り3冊である、「暗い時代の人々」(ちくま学芸文庫・1400円+税)、「政治と約束」(ちくま学芸文庫・1400円+税)、「責任と判断」(ちくま学芸文庫・1600円+税)のことを。

 

「暗い時代の人々」 レッシング、ローザー・ルクセンブルク、ヤスパース、ヘルマン・ブロッホ、ベンヤミン、ブレヒト……自由が著しく損なわれた時代、荒廃する世界に抗い、自らの意思で行動し生きた10人。彼らの人間性と知的格闘に対して深い共感と敬意を込め、政治・芸術・哲学への鋭い示唆を含み描かれる普遍的人間論。『全体主義の起源』、『人間の条件』、『革命について』といった理論的主著を側面から補うにとどまらず、20世紀の思想と経験に対する貴重な証言として読まれるべき好著。

 

   

 

「政治と約束」 古代ギリシアで栄えたのち、西欧政治思想の「永遠の真実」によって阻まれ、マルクスの「歴史的必然」により沈黙させられた<政治>。それは、全体主義の「恐怖による同一化」を経て、いまや社会の「必要」に応える手段へと矮小化されている。はたして、政治にはまだ何らかの意味があるのだろうか。人間の絶滅可能性がすぐそばにある時代にあって、政治が約束するのは<自由>と<世界>の復興である。世界を気遣い、人間の複数性による終わりなき<活動>と新しい始まりへの展望を説いた、アレント渾身の書。

 

 

「責任と判断」 立ち止まって考えろ!それだけが善く生きる道だ!! 待望の文庫化

 「歯車理論」や「小物理論」の虚偽を突き、第三帝国下の殺戮における個人の責任を問う「独裁体制のもとでの個人の責任」、アウシュヴィッツ後の倫理を検討し、その道徳論を詳らかにする講義録「道徳のいくつかの問題」など、ハンナ・アレント後期の未刊行論文集。ユダヤ人である自らの体験を通して全体主義を分析し、20世紀の道徳思想の伝統がいかに破壊されたかをたどる。一方、人間の責任の意味と判断の能力について考察し、考える能力の喪失により生まれる<凡庸な悪>を明らかにする。判断の基準が失われた現代こそ、アレントを読むときだ。

 

   

 

フランスで描いた水彩によるスケッチから

「洋画家 仲村一男」のホームページ

 http://www.nakamura-kazuo.jp/