(再録)石川英輔「泉光院 江戸旅日記」(講談社・1748円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2022.1.31既出)

午後から、書斎を中心に2階の3つの洋室に掃除機を当てる。先日来、書斎の床に直置きの本を本箱に収めているが、書斎を含め8本ある本箱はすべて二重に本を並べているので、隙間を見つけるのは難しいところがあるが、何とか十数冊を組み入れることが出来た。裏庭に設えた読了の本専用の倉庫にも2本の本箱を入れ、旧居時代に読んだ8000冊ほどは段ボール箱(100個ほど)に収めている。近年に読了のものはその倉庫の本箱に収納して来たがそれも一杯になり、この数年のものは書斎に置いている。14帖ある書斎も随分手狭になりつつある。倉庫にある段ボール箱に収納のものなどは点検のうえ捨てる手もあるが、その手間を惜しんでいる(それに掛る時間を読書に割きたい)。そして、早ければ今週中にも東京早稲田の古書店に注文した「大岡昇平集」(全18巻)が到着する。まあ、いわゆる「断捨離」などというつまらないことをせずに、本に埋もれて暮らしてゆくつもりである。

 

本の話である。幕末とは直接関係ないが江戸時代を描いた、石川英輔「泉光院 江戸旅日記」(講談社・1748円+税)と飯島和一「始祖鳥記」(小学館・1700円+税)の2冊のことを。石川英輔「泉光院 江戸旅日記」は、副題に「山伏が見た江戸期庶民のくらし」とある、文化文政の6年間、南は鹿児島から北は秋田まで日本を歩き回った僧・泉光院の見聞記。1994年に購入しているので28年ぶりに日の目を見ることになる。もう1冊の、飯島和一「始祖鳥記」の著者、飯島の長編小説の多くは書き下ろし(雑誌などの連載を経て出版されるのではなく)で、寡作ながらすべてが問題作である。本書で中山義秀文学賞を受賞している。他にも、『雷電本紀』や大佛次郎賞受賞の『出星前夜』、司馬遼太郎賞受賞の『狗賓童子の島』など見どころが大変多い。

 

石川英輔「泉光院 江戸旅日記」 泉光院の足跡→砂土原→宮崎→鹿児島→指宿→阿蘇山→長崎→名護屋→彦山→中津→小倉→長府→萩→広島→津和野→大山→鳥取→大江山→丹後半島→三方五湖→伏見→京都→福知山→姫路→大坂→草津→白山→金沢→能登→富山→野麦峠→松本→身延山→甲府→江戸→秩父→前橋→日光→浅間山→戸隠→立山→鶴岡→出羽三山→本庄→金華山→仙台→山形→那須野→筑波山→成田→銚子→鎌倉→箱根→下田→富士山→岡崎→岐阜→伊勢→白浜→和歌山→吉野→高砂→今治→大分 他

 

   

 

飯島和一「始祖鳥記」 ひたむきにおのれを生きた世界最初の“鳥人”備前屋幸吉! 迷わず、おのれを生きることです。

 空前の凶作、貧困で、人心が絶望に打ちひしがれた暗黒の天明期、大空を飛ぶことにおのれのすべてを賭けた男がいた。その“鳥人”幸吉の生きざまに人々は奮い立ち、腐りきった公儀幕府の悪政に敢然と立ち向かった。 

 構想十三年。伝説の著者が心血を注いだ、熱い熱い830枚!

 おれはこんなところで何をしているのか。

 いずれ永遠が目をさませば、この生は即座にかき消える。あまりにも、己はつまらぬことにこだわりを持ち過ぎた。(備前屋幸吉)/決断したら、変えてはなりません。たとえば、どんなことが起ころうと……。腹を固めて流れ続けることです。思いが強ければ、流れがせき止められることはありません。(巴屋 伊兵衛)/最も良質の心を備えた者が、最も酷い目を見る。いつだってそうだ。(三階屋甚右衛門)/既に備えた力に安住している者には、単に醜さしか感じない……意気地のないのは船主船頭の己ばかりだ。(福部源太郎)…これまで、嵐を越えずに咲いた花などなかったように思う。

 

   

 

写真は、東山丘陵運動公園の遊歩道で撮影する。