(再録)ロジェ・グルニエ「パリはわが町」(みすず書房・3700円+税) | 野球少年のひとりごと

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また、父・洋画家「仲村一男」の作品を毎日紹介しています。

(再録・2021.12.21既出)

早朝に目覚め、ふと年賀状の文章の訂正を思いつくと寝られなくなってしまい、睡眠不足のまま日中を過している。午後に、日本生命の担当者が来られて20分ほど要件を話し帰られた後に、いつもより少し早いが冷たい珈琲でドーナツを囓りながらパソコンに向かっている。その頃にアマゾンから荷物が届き開封すると、ロジェ・グルニエ「パリはわが町」(みすず書房・3700円+税)と雑誌「& PREMIUM 2月号 やっぱり、おやつは大切。」(マガジンハウス・850円)が現れる。ロジェ・グルニエ「パリはわが町」(みすず書房・3700円+税)は、昨日届いた、ムック「& BOOKS 素敵な人になるための読書案内。」(マガジンハウス・1500円+税)の「心がふるえる言葉を紡ぐ、エッセイの魅力。」の項で、書評家の江南亜美子が紹介していて読む気になったものである。いわく「リューベック通り30番地、ポン=デザール、市庁舎広場……。ノルマンディ生まれの97歳の作家が、長年住んだパリの土地にまつわる記憶をつれづれに語る。印刷工だった祖父、連行されたユダヤ人夫妻、ジャン・ジュネのいたサンテ刑務所、「パリ解放」の日のホテル・リッツなど、近しい人々の思い出や実際の体験を、グルニエは散歩するように想起する。「パリの文学的足跡」が刻まれた名エッセイ。」とある。わたしにとって「パリ」は訪れることがなく終わった町であるが、父が1年近く暮らしその後も2度訪れて街路を中心に風景を描いた町でもある。書斎にも何枚かパリを描いた風景画がある。それらを通じて馴染みとなった町を本書で散策したいと思う。何よりも父の足跡を訪ねる楽しみでもある。もう1冊の、雑誌「& PREMIUM 2月号 やっぱり、おやつは大切。」では、沢山の洋菓子や和菓子がカラフルに紹介されている。夫婦して洋菓子や和菓子が大好きなわたしらにとって、コロナ禍に出かけなくて済む(つまり取り寄せのきく)これらの特集はありがたいところがある。いくつか取り寄せることになると思う。

 

ロジェ・グルニエ「パリはわが町」 人生の住所録 短篇の名手が、所番地を手がかりに数多の出来事と出会いを想起する断章=自伝。20世紀の都市パリを生きた作家たちを偲ぶ「愛情地理学」にして人生のアドレス帳。

 「はたして自分が田舎者なのかパリっ子なのか、わたしにはわからない。わたしはたまたまノルマンディに生まれた。そして、わたしの作品の大部分は、子供時代や思春期を過したポーの町とベアルヌ地方から着想を得ている。けれども、わたしの町ということになれば、それはパリである。本当のパリっ子とは、別の土地で生まれ、パリで生きるのが征服することであるような人間をいうような気がするのだ。それには、セーヌ河にかかる橋を渡って、目をみはるだけで十分だ。夢ではなくて、わたしはパリにいるではないか!」(本書より)

 1943年以来ずっとパリに暮らす、97歳の作家が、19世紀パリの印刷工だった祖父の住所を皮切りに、数々の思い出と出会いにあふれる町を言葉で散歩する。占領から解放される現場に立ち会い、カミュのもとで編集発行された<コンパ>紙のジャーナリスト、ガリマール社の編集者として、多くの作家を知ったグルニエの、親切な道案内で路地裏を歩いてゆく読者に、パリは新たな相貌をみせてくれるにちがいない。

 本書には、ジッド、サルトル、ジュネ、バタイユ、フォークナー、ヘミングウェイ、カルペンティエルなどが姿をみせ、今は亡き親しい友人たち(ブラッサイ、パスカル・ピア、クロード・ロワ、ロマン・ギャリ)も生きているようだ。都市を舞台とした愛情地理学にして、人生のアドレス帳。

 

   

 

雑誌「& PREMIUM 2月号 やっぱり、おやつは大切。」 あんこ、チーズケーキ、レモンケーキ、プリン、チョコレート、バターサンド、クッキー缶……。 みんなが夢中になっている、お菓子の話。

 

   

 

写真は、東山丘陵で撮影する。