(再録)中村 稔「束の間の幻影(銅版画家 駒井哲郎の生涯)」(新潮社・2000円+税) | 野球少年のひとりごと

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(再録・2021.12.8既出)

12月に入って、何も予定がないと言うか唯一の予定が本を読み進めることで、午前中に、堀江敏幸「定形外郵便」(新潮社・1800円+税)を読了し、午後からは、並行して読んでいる宮田毬栄「忘れられた詩人の伝記(父・大木惇夫の軌跡)」(中央公論新社・4600円+税)に取りかかっている。宮田毬栄「忘れられた詩人の伝記(父・大木惇夫の軌跡)」は、大判で2段組480頁の大部のものであるが、大木惇夫の次女である宮田毬栄(中央公論社で『海』の編集長などを務めた)の文章も凜然としていて、気持ちのよい読書になっている。もともと自伝や評伝の類いが好きなこともあるが、本書は類書の中でも群を抜くほどの成果といってよく一気に読ませるところがある。近年のものでは、黒川創「鶴見俊輔伝」(新潮社・2900円+税)や佐々木実「資本主義と闘った男(宇沢弘文と経済学の世界)」(講談社・2700円+税)に匹敵するだけのものだと思う。来年にかけて、「安岡章太郎集」全10巻(岩波書店)と並行する形であるが、本箱にある伝記や評伝を読んでみようと考えている。先ずは、中村 稔「束の間の幻影(銅版画家 駒井哲郎の生涯)」(新潮社・2000円+税)あたりから試みることになりそうである。

 

中村 稔「束の間の幻影(銅版画家 駒井哲郎の生涯)」 高雅な、抒情にあふれる画面に潜む孤独と狂気。 銅版に刻みこまれた 夢の傷あと

 僕等を不意打ちする幻影の素晴らしさ

 敗戦まもない混迷の時代に突如現れた鬼才駒井哲郎。日本画壇に於ける新分野、“銅版画”に自らの芸術的衝動を構築したいと願った青年は、孤独な作業に煩悶しつつ未踏の世界を築きあげて、逝った。/銅版画家の複雑な人柄と作品を愛し、親しくつきあった詩人が、R夫人への日記体書簡等未公開の資料を駆使し、綿密な考証と批評を以て探るその精神の惨劇。

 

   

 

写真は、貝塚市二色浜から「コスタ・ミラにしきのはまベイタワー」を撮影する。