伊集院 静「愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない」(集英社文庫・720円+税) | 野球少年のひとりごと

野球少年のひとりごと

本のことを中心に、関西学生野球や高校野球のことをつぶやいています。
また、父・洋画家「仲村一男」の作品を毎日紹介しています。

午後から泉南に住む弟がやってくる。わたしと三つ違いの弟は東京の法政を出ていて、このたび総理大臣に選ばれた菅さんのの1年先輩(菅さんは法学部、弟は経済学部)であり、そういうことから話題が始まる。2時間ほど話して帰る。その後わたしはいつものように45分ほどのウォーキングに出かける。一休みをする運動公園では、貝塚ボーイズ(中学生が対象の硬式野球チーム)がピッチングマシンを相手にシートバッティングをやっている。

 

シートバッティングは、もともとはメジャーリーグから伝わった練習法と聞いているが、フリーバッティングとは違い試合形式でのバッティング練習で、ヒットを打てばランナーとして塁上に残る。そしてアウトカウントや塁上にいるランナーとの兼ね合いでバッティングも工夫がいる。これは守備側も同様である。60年以上前に、わたしが毎日ほどその練習を見に通った岸和田高校の野球部では当時すでにそのような練習が行われていて、後年いろいろなことが分かってくるとそれが画期的なことだと理解できた。当時の岸和田高校は府立の進学高校(学区でトップの)であるのにかかわらず夏の大会の大阪予選(秋も同様)におけるベスト8の常連校で、決勝に進出したことも複数回あり近畿大会に出場し(惜しくも選抜には出場できなかったが)たこともある。監督である木村進一(戦後すぐに平安が全国優勝したときの監督で、隻腕の監督としても有名であった)の野球に対する考え方の開明的であったこと驚くばかりである。それと同じく当時では珍しかった(大学のアメリカンフットボールの練習では見かけるようになっていたが)短距離でのインターバル走法なども取り入れていた。そういうことを思い出させてくれる、今日のシートバッティングであった。

 

母校の野球部の今日のゲームである。同志社大学を相手に5-3での勝利。ただ、エース高野くん(4回生、出雲商)が6回まで1点に抑えて3-1とゲームを作ったが、7回にさらに1点を取られ降板(1死も取れずに)、後を継いだ宮崎くん(2回生、東海大仰星)が1点を献上するものの後続を断ち8、9回も零点に抑え前節の京大戦に続き2勝目をあげる。今シーズン初登板の宮崎くんのピッチングは当然のことにまだ見ていないが、速球派の左腕らしい。珍しくも、スポーツ推薦による入学ではないようなので大学に入り、山口ピッチングコーチ(黄金時代の阪急で活躍の)の好指導を得て大きく育って欲しいものである。明日は宮崎くんと同じ2回生の定本くん(三重)が先発するものと思うが、こちらはスポーツ推薦組で将来のドラフト候補であるが、とにかく目前のゲームでしっかり結果を出して欲しいと思う。前節で活躍の横手投げの桃尾くん(3回生、滝川第二)なども見てみたいひとりである。残念ながら、主催者の関西学生野球連盟がまだ「無観客試合」に拘っていて、わたしのような古くからのファンさえも入場できない。このナンセンスさ(東京六大学などと比べても)馬鹿馬鹿しい限り。まあそれにしても、ここまで3連勝で今日京大に勝った立命と並び首位を維持している。昨秋に続く連覇、そして神宮大会での準優勝(慶応に負けての)の雪辱を果たして貰いたいものである。

 

本の話である。今日アマゾンから届いたのは、伊集院 静「愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない」(集英社文庫・720円+税)と「伊集院 静の流儀」(文春文庫・533円+税)の2冊である。伊集院 静のものを読むのも大変久しぶりであるが、彼も立教大学の野球部のOBである。従って、彼が書く野球に因んだ小説やエッセイは他の作家のものとかなり違っていると思う。立教の野球部時代の話などわたしなどには「涙なしに」読めないところがある。立教の野球部というと、先述の岸和田高校の野球部からも進学した(岸和田高校の野球部の主力選手は代々慶応に進学することが多いが)選手がいて、亡くなってしまったけれど独特の演技ぶりで活躍の俳優高橋悦史などもそうである。高橋悦史の同期に長嶋茂雄や杉浦忠がいて、つまり東京六大学で4季連続優勝をした黄金時代に。因みに、伊集院 静は1950年生まれ。立教の野球部は肘の故障で途中で退部しているようである。今日届いた2冊は、読了の角田光代「物語の海を泳いで」(小学館・1600円+税)に紹介されていて読む気になったものである。以下に、その角田光代の文章を引用する。

 

『愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない』(集英社文庫)は、スマートに生きることのできない三人の男たちを描き出す。弱さを隠しているつもりで、隠しきれない。へらへらとおもねり、乱闘騒ぎを起こし、やせ我慢する。この男たちは、まるで時代に淘汰されかのように消えていく。淋しくってたまらないのは、彼らがいなくなっていくことでもあり、彼らを許し受け入れるような時代が終わってしまったことだ。

『伊集院静の流儀』(文春文庫)、すごいタイトルだなと思いながら頁を開き、落涙。あの大きな地震の直後、仙台に住む伊集院氏が書いた言葉の重みに胸打たれた。ソフトカバーの洒落た本だが、しかし中身はすごく濃い。対談にうなづき、人生相談に笑い、そして短いエッセイに泣いた。とくに、サントリーの広告の手書きの短いエッセイが、猛烈にいい。

 

「愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない」 ベストセラー「いねむり先生」と対をなす伊集院文学最高傑作 ひとり、またひとりと去っていった友よ。また飲もう。 ミリオンセラー「大人の流儀」シリーズ 伊集院静 自伝的小説の最高峰

 最愛の妻をなくし、酒と博打に溺れていたユウジ。競輪記者エイジと出会い、似た者同士の二人は意気投合する。また、弟分的存在で亡き妻とも親しかった芸能プロ社長三村との再会。そして、執拗に小説執筆を勧めてくる編集者木暮がいて。生きるのに不器用な“愚者”たちとの出会いと別れが、過去に縛られるユウジにもたらしたものとは―。男たちのこの上なく切ない絆を描く自伝的小説の最高傑作。

 

「伊集院静の流儀」 すぐに役立つ人になるな。 新社会人必読!伊集院静の“粋”を結集した決定版 大人って何だ? 大人とは、一人できちんと歩き、自分と、自分以外の人にちゃんと目を向け、いつでも他人に手を差し伸べられる力と愛情を持つ人だ―。おろかな拝金主義が、この国をみにくくゆがめ、大震災は、かけがえのない日常を粉々にしてしまった。再出発の今こそ、君はほんとうの大人として、立たねばならないのだ。

 

 

写真は、東山丘陵で撮影する。