ども、OKKAです。
今回紹介するのは、第28回小説すばる新人賞受賞の作者が、ちょっと変わった趣向で描くクローズドサークルのミステリ!
「私雨(わたくしあめ)邸の殺人に関する各人の視点」(渡辺優 双葉社)です!
嵐の私雨邸に取り残された11人の男女。
資産家のオーナーは密室で刺殺され、世にも珍しい〈探偵不在〉のクローズド・サークルが始まる。
館に集ったのは怪しい人物ばかり。いったい誰が犯人を当てるのか。各人の視点からなされる推理の先に、思わぬ悲劇が待っている。
(アマゾン紹介ページより)
読み終わった感想は…。
実験的だけど、かなり緻密に練られたミステリだなあ!やられた!
でした!
すばる新人文学賞を受賞した「ミステリ畑」ではない著者が書いたからか、かなりメタ要素の強いミステリになっています。
ご都合主義的に発生する「クローズドサークル」。
何のために作られたのかわからない「密室」。
嘘か本当かわからない「ダイイングメッセージ」。
そして「読者への挑戦」…など、本格ミステリによくある設定が、これでもかと盛られています。
でも、「名探偵」はいなくて、事件に巻き込まれたミステリ同好会の二ノ宮、雑誌編集者の牧、被害者の孫の梗介のそれぞれの視点から、物語が語られていきます。
かなり実験的な感じの作品だし、登場人物の誰にも感情移入できない(おそらく意図的にそう描いています)ので、ちょっと読む人を選ぶと思いますが、個人的にはかなり気に入りました!
二ノ宮が、目の前で殺人が起こっているにも関わらず、「こんな機会はめったにない」と素人探偵をかって出るサイコパスな感じとか、登場人物が「毒入りチョコレート事件」よろしく自分の推理を繰り広げるところとか、「ミステリ」の文脈をちょっと斜に構えた感じで描いているのが、なんともユーモラスで面白かったです。
特に、ミステリ同好会の先輩である一条が、ダイイングメッセージを見つけたとき、「ダイイングメッセージすな」と呟くところはちょっと笑ってしまいました。
でも、構成はかなり本格的で、犯人が分かった時は「なるほど、確かにそれまでの描写を読み解けば犯人がわかるようになっている!」と唸りました。これはわからなかった。やられました。
ネットのレビューでは、「動機に納得がいかない」という意見もありましたが、個人的にはこれは「メタ・ユーモア・ミステリ」だと受け取ったので、それほど気にならなかったですね。
(もっとよくわからない動機のミステリもいっぱいありますから…。)
ということで、お気に入り度は80点でした!