ホイールメインテナンス(ベアリング交換)のヒントとアドバイス | ヒト・モノ・アソビ... 人生を楽しく快適にしてくれる素敵なものたち

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工具不要でラチェット機構のメインテナンス(洗浄、給脂)を手軽に行うことができ、常にベストコンディションで使用できることで定評のあるDT SWISS製ホイール(ハブ)。ラチェット機構についてはその通りですが、では回転の性能を左右するハブベアリング(ホイールベアリング)についてはどうでしょうか。コンポーネントメーカーのホイール(ハブ)については調整式のベアリングを採用しているため、定期的なベアリングの洗浄、や給油、そして厄介な「調整」の必要がありますが、DT WISSやその他のメーカーに関しては「シール付きカートリッジベアリング(ラジアルボールベアリング)」を採用しています。このカートリッジベアリングはシール構造がしっかりしていることに加え、ラジアル荷重に対して許容強度、耐摩耗性に優れているため、長期にわたって給油や調整の必要がありません。高強度、高速度なオートバイなどにも採用されているようにメインテナンスに神経を使うことなく高性能を維持できる構造を採用しています。

しかしながらそんなカートリッジベアリングも「永久」の性能ではありません。ある程度の距離や年数を使用すれば摩耗は生じますし、経年によるシールの劣化によって封入グリスが徐々に流出し、そこに水分が入ることによる錆の発生、あるいは砂塵の侵入による摩耗増進などでやがてベアリングを交換する必要があります。その際にも摩耗劣化したカートリッジベアリングをユニット単位で簡単に交換できる、ということがまた長所となっています。「簡単に」とは書きましたが、調整式のベアリングに比べて、というただし書きは必要です。圧入されているベアリングを抜き去り、圧入するためにはいくつかの専用の工具類は必要となりますし、組み込まれているハブの中心部にアクセス、分解作業をするための工具と作業手順が必要となっています。

DT SWISS製品の場合、これらの作業に必要な工具類、そして方法をネットの動画で紹介しており、環境や技術能力が許せば、ユーザー自身でこれらの作業を行うことができる準備が整っています。実際にできるできない、はともかく必要な準備はされているというわけです。

そこでここではそれらの作業を示した動画の紹介をするとともに、実は補足したほうが良い点をご紹介したいと思います。 
DT SWISS メインテナンス動画
「ハブベアリングの交換方法」

はこのリンクの通りです。動画を見る限り「道具さえあれば」基本的なことを手順通りに辿れば簡単な作業にも見えます。しかし、実際にはショップでもない個人でそれほど頻繁に発生するでもないこれらの作業のために工具類を買いそろえるのか、というところですがw。
動画が英語ということもあって説明が不十分ではないか、という点は「リングナットを緩める」です。動画の中でもさらっと説明がありますが、「実際に使用されてきたリングナットはペダルを踏む力でとてつもない強い力で締め付けられていて簡単には緩みませんが」というところです。実際にこの点は経験豊富な?ショップでも大変苦労する点で、作業環境や作業経験が十分ではないユーザーの作業では諦めざるを得ない可能性も十分にあるのです。
それでも「やるぜ」という屈強なユーザーさんのためにアドバイスをするとすれば・・・ 『必ずマニュアル動画の通りの道具、手順を守ってください』。大切なことなので太字でもう一を書きます。必ずマニュアル動画の通りの道具、手順を守ってください」。リングナットツールを「バイス(万力)に取り付けてください」という説明がありますが、これをスパナやモンキーレンチ(調整式スパナ)で回そうとした場合、最悪スパナが口を開いてしまったり、リングナットツールが破損したりする場合があります。高トルクのボルト/ナットを2面スパナで回そうとしてはいけないというのが常識であるように、スパナやモンキーでは2面間を広げようとする力が大きく発生します。「せん断力」という正方形の物をひし形に変形させようとする大きな応力がかかるためです。また「リングナットをバイスで固定してホイール側を回すようにして緩める」と指示されています。スパナやモンキーレンチをリングナットツールにかけてテコの様にして回そうとする場合、回転力(トルク)だけでなく回転軸に対して「曲げる」方向の力も作用してしまいます。リングナットから斜めに外れてしまう方向への力が発生するのです。工具に大きな力が掛った状態で斜めにズレてしまうとリングナットツールが外れてしまったり、あるいはその際にハブアクスルが曲がったりダメージを与えてしまうことになります。そうならないためにはホイールを両手で持って回すような、これを「偶力」と呼びますが、この場合は回転力は与えても曲げる力は作用しません。さらに良い方法としてはリム単体ではなくなるべく太いタイヤを装着して手で保持しやすくすると同時に外径を大きくしてより大きな回転力で回すことです。それでもさらに大きな力が必要な場合に長いレバー(テコ)で延長するのであれば回転中心を対象にした2本を延長してやはり「偶力」で回すようにしなければなりません。その他、はめ合い結合であれば穴側を熱して膨張させて外す、もアイデアですがネジ結合の場合は熱膨張で雄ネジと雌ネジのピッチが変わってしまえばますます緩まないことになりかねませんからやはりマニュアル動画に無いことはすべきではありません。そして組立時の説明にあるように次回以降のことを考えて組時にネジ部に焼付や電食を防ぐための十分な油脂を付け、ロックタイトなどを使用しないことです。

以上のことを正しく守って作業をすれば、ユーザー自身でも「簡単に」ホイール(ハブ)のメインテナンスが可能だということです。現実的には工具を揃えるにしても、作業環境を整えるにしても、頻度(と作業精度)を考えれば専門のショップにご依頼されることを強くお勧めしますw(我田引水) まさか専門ショップで上記のような「NG作業」が行われるようなことはない「ハズ」ですので安心してお任せしてよいと 思います。

オキドキライフスタイルではDT SWISSを始め、カンパニョーロ、MAVIC、その他のOEM製品(ホログラムノット、ボントレガー、ロバルなど)などのメのインテナンス作業も行っております。消耗によるベアリング交換はもちろん、今後のメインテナンスや機能低下の不安をゼロに近づける「ベアリングのステンレス化」作業も積極的にお勧めしています。どこで求めたどんな製品でもお気軽にご相談ください。製品をお送りいただいて作業をする「技術の通販」も行っています♪