DT SWISSの本気のホイール作りシリーズ 「RWS」システム | ヒト・モノ・アソビ... 人生を楽しく快適にしてくれる素敵なものたち

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今回はDT SWISSのスポークでもハブでもなく、ホイールでもなく、その構成部品の一部であるクイックリリース「RWS」についてです。
 
まず、この周辺の言葉の整理が必要です。あまりに乱れてしまっています。 まずクイックリリースをクイックレリーズと呼ぶのは英語ー独語、あるいはカメラ用語の混在ですので論外、今後はクイックリリース(quick release)と表記することにします。
種類、としてクイックリリース、スキュアー、スルーアクスルと分類されるように表記(認識)されている方が多くみられますが・・・
・クイックリリース…シマノ、カンパ、マヴィックに代表されるレバー操作で締付/解除されるタイプ
・スキュアー・・・・(レバーではなく)工具や専用キーを使って固定/解除するタイプ
・スルーアクスル・・・クイックシャフト自体が車軸になっているもの
・・・残念ながらこれらは間違っているようです。クイックリリース、英語では「クイックリリーススキュワー quick release skewer」といいますから、クイック(リリース)とスキュワーは種類別されるものではありません。スキュワーとは「串」という意味ですから、中空のアクスルに対して中を通る細いシャフトであることからそう呼ばれているというわけです。しかしクイックリリースの定義は少しあいまいです。元はカンパニョーロが開発したレバーで開閉できるカムレバー式のものを、それまでは蝶ナットで締め付けていたものに対してクイックリリースと呼んだことがその名称の始まりです。しかし工具を使用して締め付けるものに対しての「工具不要という意味」でのクイックリリースであればより広い範囲での製品をクイックリリースと呼ぶことになります。スルーアクスルであってもカムレバーなどでクイックに操作するものもあれば、工具を使うものも含まれていますが、車軸(アクスル)そのものですのでスキュワー(細い棒)とは呼ばれません。しかし、「スルーアクスルスキュワー」という商品も売られているんですね。太い串もあるだろう、ってことでしょうか。
 
そんな名称、分類の混乱も誤認もあるためか、DT SWISSではホイールの固定システムは一貫して「RWS」と呼ばれています。このシステムには「クイックリリーススキュワー」「スルーボルト」「スルーアクスル」の全てを包括していて、全てに共通しているのはレバーを回して締め付けることです。
え!?レバーを回して締めるってクイックリリース(カム式)では「御法度」だし、締め付けが不十分なのじゃないの? いいえ、結論としては一般的なカムレバー式のクイックリリースに比べて「回して締める」RWSのほうが大きな固定力で締め付けることができ、数値的には25%以上も強く締めることができるというのがDT SWISSがこの固定方法を選択している理由です。「回して締めるなら工具を使って締付ける方式(間違ってスキュワーと呼ばれているもの)のほうが強く締めれるぞ」ごもっともです。工具を使用して締め付けるのであればピストなどの「固定ナット」で締め付けるものが一番です。しかし工具無しの情況で、すなわち「クイック」にホイールの脱着を求められる条件下ではこの「RWS」が最良の選択となるようです。貫通穴を通る「スルーアクスル」に関しては固定力を大きく求めていませんが、9/10㎜アクスルの従来タイプですとフォークもしくはフレームに「切り欠き」があって固定されるため、できれば強固な締付けが求められます。左右のフォークブレードが別々に捻じれるフロントフォークではしっかりと連結して捻じれを抑えることが求められますし、前後方向に位置決めがなされる「ロードエンド」式のフレームではやはり駆動力に負けない強固な固定力が求められます。ディスクブレーキの採用とスルーアクスル化が同時に進行しつつあるとはいえ、ディスクブレーキの9/10㎜アクスルのバイクも多数あり、やはり強固な固定を求められます。また、直径5㎜のクイックシャフトで最大限の締め付けを実現するためのRWSですがそれでもさらに強固な固定が可能なものが「スルーボルトRWS」です。スルーアクスルのようにフォーク/フレームを貫通する長さのアクスルボルトにネジを切っって固定する方法ですが、クイックシャフトの5㎜xピッチ0.8に対して10㎜x1.0ですのでネジ勾配が小さくでき、つまり小さな回転力で大きな締付力を発生することができます。おそらくスルーボルト自体がDT SWISS独自のシステムだと思います。
 
回して締めても強い力で固定できる秘密はそのアルミレバーの下に組み込まれたスラストワッシャーによるもの。自由に回転できるそのワッシャーのおかげで強い締付けでも回転の抵抗になることなく必要な強さで締め込むことができます。
締付けによる高い固定力を実現しながらさらに念を入れるという本気なDT SWISSの他社にはない拘りが、フォーク/フレームへの当たり面の「材質」です。フレームやフォークはハブのフランジ面とクイックリリースのナットやレバーによって挟まれて固定されますが、どんなに強い締付けであってもその材質が滑りやす組み合わせとなってしまっては「強い固定力」とはなりません。フレームの材質には、カーボン、アルミ、チタン、スチールなどがありますがこれらが柔らかな材質であればフランジ面の滑り止めが食いついて滑りにくくなります。ところがDT SWISS以外のほとんどすべてのメーカーではハブのフランジもクイックシャフトのナット、レバー共にアルミ製となってしまっています。結果的にフレームの材質によっては滑ってホイールがずれてしまったり、摩耗して固定が不十分になってしまったりしています。ところがDT SWISSのハブ、RWSにおいては全てにスチールを組み込み、滑りや摩耗が発生しないようにしています。手間もコストもかる上に重量スペックでは不利になりがちなことですが、頑な姿勢での製品作りがうかがえるところです。実際、ホイールの固定が原因の異音発生やホイールのズレがありません。メッキエンドのスチールフレームには今となてはほかに選択肢がないといえるでしょう。それだけで十分に価値のあるクイックシャフトとなっています。ホイールやハブのメーカーとは別にクイックリリースシャフトだけを「シマノを」、「カンパを」と指定して別購入することはまずないと思いますが、逆にDT SWISS「RWS」に関してはホイールメーカーを問わずに別売でも買う稀有な価値があるといえるでしょう。