雨に濡れた羽 | くま店長のレモンクッキーのかけら


くま店長のレモンクッキーのかけら

「次のにするか・・・」

少し先の青信号は ぼくの到着を待ってはくれないだろう

しとしとの雨で重たくなったぼくの足はいつもよりものんびり屋だった

小走りすることもなく右目にとびこんできた 丸い屋根の下にもぐり

ぼくのふかふかの毛よりも少しうすいベージュ色の傘を閉じる


あたりからはささやかな鳥の声

誘われるように キョロキョロしてみる


ななめ前には 早足で歩く ひよどり

電線には 雨雲色の 鳩

葉を落とした木には まるまった すずめ

一番高台のアンテナには 勇ましい とんび


みんな雨の中 朝ごはんの木の実でも探しに来たのかなぁ?


「ピリッ」   袋をやぶき 木の実・・くるみのクッキーを1枚手にした

「カリッ」   バターの香り・・

「ザクザク」 たくさんのくるみが口の中でさわがしくなる


ハードだった週末で疲れたぼくの体はほどよい甘さにやさしく包まれた・・・


昨夜のひとときに酔いしれてしまっていたぼくは

雨の中の鳥たちに気づき後ろめたく目をそらした

いつの間にか傘が足元に ちいさな水たまりを作っていた


「早く雨がやむといいな」

ぼくは力強く まとわりつく雨にむかって

「パンッ!」  と羽のかわりの傘をひらいた