※【病気解説一覧】のリンクを記事に最後に貼ってあります。様々な病気や検査について語っておりますので、普段から気になってるものを探していただければ幸いです。



肺炎のワクチンってありますよね。

65歳以上で定期接種の対象となるヤツです。


あれって何の菌に効くかご存知でしょうか。


まあ「肺炎球菌ワクチンってのが正式名称ですから、そのままですよね。すみません。


肺炎球菌ってのは、普段は鼻や喉に住んでて、疲れて免疫が落ちた時とかに暴れ出して、肺炎とか中耳炎とか髄膜炎を引き起こしちゃうんですな。


そんでもって肺炎の原因菌No.1です。全体の20-30%を占めます。


確かにワクチンを打つことに意義はあるでしょう。


しかし肺炎の原因菌は他にもある訳で、逆に言えば70-80%は他の菌が原因であり、ワクチンはそいつらには効かず予防にはならないってことです。



※出典:肺炎のおはなし


だから肺炎球菌ワクチンを打ってたとしても治療は大事なんですよ。そして治療の中心は抗生剤です。


今回はそんな肺炎抗生剤の関係について解説して参ります。



さて肺炎は大きく分けて2種類があります。


市中肺炎院内肺炎です。


市中肺炎は病院外で発生する肺炎。

院内肺炎は病院内で発生する肺炎。


まずこの2つについてざっと説明します


【市中肺炎】

定型肺炎(細菌性肺炎)異型肺炎(非定型肺炎)があります。違うのは原因菌であり、故に効果のある抗生剤も異なります。


※出典:兵庫医科大学病院


定型肺炎(細菌性肺炎)

原因菌は上述した肺炎球菌が代表。

・効果のある抗生剤はペニシリン系。商品名はアモキシリンサワシリンオーグメンチンなどです。

異型肺炎(非定型肺炎)

原因菌はマイコプラズマ、クラミジアレジオネラ

・効果のある抗生剤はマクロライド系ニューキノロン系です。マクロライド系の商品名ジスロマック。ニューキノロン系の商品名はクラビットアベロックスなどです。

※ウイルス性肺炎については今回ちょっと置いておかせて下さい。インフルエンザやCOVID-19等による肺炎もありますが、今回は抗生剤が効く肺炎について触れたいので...。


【院内肺炎】

いわゆる誤嚥性肺炎ってやつが主ですね。嚥下の機能、飲み込みの力が落ち、口の中の菌が肺の中に入ってしまうんです。

※出典:バランス

厳密には病院の外でも起きるんですが、要は病気がある人、或いは高齢者で予備力のない人がなりやすい肺炎ってことです。

原因は主に嫌気性菌です。口の中にいます。

・効果のある抗生剤は点滴だとペニシリン改良系アンピシリンスルバクタムの合剤、商品名はユナシンS。ただユナシンは錠剤が限定出荷で手に入りにくい。そして点滴のクリンダマイシン系商品名はダラシン。こちらはダラシンカプセル処方できます。



ところで風邪のほとんどはウィルスです。ですから風邪そのものが肺炎になることは稀です


しかし、風邪の記事でも説明しましたが、最初は風邪、つまりウィルス感染でも、後になって細菌が混合感染することがあります。痰が黄色くなったりすることがその表れです。


風邪をひいて免疫力が失われると細菌達が暴れだすのです。この細菌が肺炎の原因になるかもしれないんです。


だからクリニック等で処方される最初の抗生剤は意外と重要です。


【抗生剤は原因菌耐性菌を考慮する】

肺炎で入院する際、採血やレントゲンやCTだけでなく痰培養血液培養マイコプラズマクラミジアレジオネラの検査を行い、原因菌を同定します。しかしクリニックでは行いません。これら検査結果が出るのには時間がかかり待ってられないからです。

クリニックに求められるのは、患者さんの年齢や状態、症状などから原因菌をその場で判断し、抗生剤を選択することです。或いは処方しない判断も大切ですね。


ではそれぞれについて考えてみましょう。

元気な患者さんの抗生剤

・誤嚥性肺炎の嫌気性菌を狙う必要はありません。狙うべきは肺炎球菌マイコプラズマクラミジアレジオネラです。ちなみにレジオネラにはお湯を使い回す浴場で感染する特徴的なエピソードがありますね。

※出典:ユビー

・復習すると肺炎球菌狙いならペニシリン系(商品名アモキシリン、サワシリン、オーグメンチン)、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラ狙いならマクロライド系(商品名ジスロマック等)かニューキノロン系(商品名レボフロキサシン、アベロックス、ジェニナック、グレースビット、シプロキサン)です。

・さあ何を処方しましょう。ちなみにマクロライド系は肺炎球菌にはやや弱い(静菌性)。ニューキノロン系肺炎球菌にも効く、広く強いで絨毯爆撃系です。ペニシリン系はマイコプラズマやクラミジアやレジオネラには効きません

・あれ?全部に効くならニューキノロン系一択じゃんと思われるかもしれませんが、ここで耐性菌の問題が出てきます。抗生剤は何度も使っていると効かなくなってしまうんです。

免疫力が弱い高齢者には強い抗生剤が必要なのに効かないのは大問題です。出来れば温存しておきたいところです。

・ですから症状が軽度の場合そこまで強い抗生剤は要りません。処方するならペニシリン系。商品名サワシリンアモキシリンでしょう。絨毯爆撃ではなく、一発で仕留めるスナイパーライフルのようなイメージです。

・敢えてマクロライド系もいいでしょう。ジスロマックがおすすめです。ニューキノロン系の下位互換のイメージで使ってます。ちょっと下痢が多いのが難点ですが、そんなに強い抗生剤はいらないんです。

・ちなみによく批判される第三世代セフェムのセフゾン、メイアクト、フロモックスもそこまで悪くはありません。広めでやや絨毯爆撃っぽいんですが強さはないんです。


②高齢者や持病のある患者さんの抗生剤

・一方で、肺炎になると命取りになってしまうような患者さんの場合は出し惜しみしてる場合じゃありません。がっつりいきましょう。

・嚥下機能が保たれてる高齢者にはニューキノロン系をいっちゃいましょう。商品名アベロックスなんかおすすめです。

・寝たきりに近い方で誤嚥性肺炎の嫌気性菌狙いなら、ペニシリン系クリンダマイシン系併用を推します。商品名オーグメンチンダラシンですね。ちなみに上述した最強王者ニューキノロン系ですが嫌気性菌には効きませんのでご注意を。


思いのほか長くなっちゃいました。すみません。今回はこれくらいにします。抗生剤についてはまた違う角度から解説しようと思います。


それでは皆さん、お疲れ様です。


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