※【病気解説一覧】のリンクを記事に最後に貼ってあります。様々な病気や検査について語っておりますので、普段から気になってるものを探していただければ幸いです。


ケーキは正義。池袋のお店にて。



肺炎の記事で触れた抗生剤。


どうせなら肺炎以外に使う抗生剤も解説したいと思いました。


その時の記事も難しかったかもしれませんが、今回も同様です。研修医の先生に指導するような感じで記事を書いてみようと思います。


独断と偏見は間違いなく入ってますんで、入門編と捉えて参考にしていただけると幸いです。


さて、自分が抗生剤を初めて知ったのは火の鳥黎明編です。


主人公の少年、その姉が破傷風にかかり生命の危機に瀕します。するとその場に居合わせたよそ者の医師が、村人に青カビを大量にかき集めるよう指示し、主人公の姉にのませたのです。

※出典:火の鳥黎明編


結果、主人公の姉は助かるというエピソードです。


青カビに含まれるペニシリンですね。含まれる成分はわずかなのでたくさん飲ませたのです。


子供心に「菌で菌をやっつけるの?」と不思議に思ったものです。


現在、抗生剤はペニシリンのみならず、様々な種類があります。それぞれの特徴を、開発の歴史を含めて解説して参ります。


尚、言うまでもありませんが、抗生剤はあくまで細菌に効くのでありウイルスには効果はありません。


【グラム陽性菌とグラム陰性菌】

・まず下図をご覧ください。


※出典:シングラム。


・細菌はグラム陽性菌グラム陰性菌に大別されます。細菌学者グラムによって発明された細菌を色素によって染色する方法で、細胞壁が染まります。染まるのがグラム陽性菌、染まらないのがグラム陰性菌です。

・火の鳥にも出てきた人類初の抗生剤ペニシリンβラクタム系の抗生剤であり、細胞壁を破壊することで殺菌作用を発揮します。つまりグラム陽性菌には無類の強さを発揮します。しかしグラム陰性菌に効かないのがペニシリンの問題点だったんです。


では具体的に、グラム陽性菌とグラム陰性菌にはどのような菌があって、どんな感染症の原因になるんでしょう。

【グラム陽性菌・グラム陰性菌】

①グラム陽性菌

・肺炎球菌:肺炎。

・溶連菌:扁桃炎、蜂窩織炎、伝染性膿痂疹(とびひ)。

・腸球菌:腸の常在菌。身体が弱ると尿路感染などの原因になる。

・黄色ブドウ球菌:皮膚の常在菌。蜂窩織炎、せつ(おでき)などの皮膚感染症。

・クロストリジウム属:破傷風など。

②グラム陰性菌

・大腸菌:尿路感染、胆道感染(胆嚢炎・胆管炎)。

・クレブシエラ:尿路感染(膀胱炎や腎盂腎炎)、肺炎、胆道感染(胆嚢炎・胆管炎)。

・サルモネラ菌:細菌性腸炎。

・他、緑膿菌やペスト菌。


どうでしょう。ペニシリンのみでは少なくとも膀胱炎、腎盂腎炎、胆嚢炎とは戦えないことが明らかです。次にこちらをご覧ください。


【グラム陽性・陰性に対する抗生剤の効果】

--------------------------グラム陽性------グラム陰性

ペニシリン系-----------------強-----------------無

第一世代セフェム-----------強-----------------弱

第二世代セフェム-----------中-----------------中

第三世代セフェム-----------弱-----------------強

第四世代セフェム-----------中-----------------強

カルバペネム-----------------強-----------------強

ニューキノロン--------------強-----------------強

マクロライド-----------------強-----------------弱


なんのこっちゃと思われますよね。とっつきにくいのは確かですが、でもどうかこちらを参考にしながら下を読んでいただきたいんです。


①ペニシリン

・すでに述べたように細胞壁を破壊するんですからグラム陽性菌には強い。しかしグラム陰性菌には効かない。ここが問題でした。

②セフェム

・そこで「グラム陰性菌にも効く抗生剤」を目指しセフェムの開発が進みました。これも青カビから作った抗生剤でありペニシリンと同じβラクタム系です。

・しかし出来上がった第一世代セフェムは、グラム陰性菌に少し効きましたが十分ではありませんでした。表では評価です。グラム陽性菌にはです。要するにペニシリンとほぼ変わらず、現在もグラム陰性菌狙いでは使われてません。

・そこで第二世代セフェムを作ると、グラム陰性菌に中くらい効くようになりました。その代わりにグラム陽性菌への力も落ちてになりました。中途半端な抗生剤ですよねぇ。

・さらに第三世代セフェムを作ると、遂に逆転します。グラム陰性菌にはとなるもグラム陽性菌になりました。これくらいになるとけっこう使われますね。膀胱炎にはフロモックス(錠剤)みたいな印象ありますもんね。逆にグラム陽性菌狙いではもう使われませんね。

・そこで第四世代セフェムグラム陰性菌のままグラム陽性菌に上げたんです。医者の中のイメージは強く広い。世界ランカーくらいのイメージです。

③カルバペネム

・βラクタム系の最終進化形態です。ニューキノロンと並んで最強王者の1人。広く強い。グラム陽性菌にも陰性菌にも強です。誤嚥性肺炎の原因菌である嫌気性菌にも強い。弱点は異型肺炎の原因菌であるマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラに効かないこと。

④ニューキノロン

・細胞壁破壊ではなく細胞のDNA合成そのものを阻害。カルバペネムと並んで最強王者の1人。広く強い。グラム陽性菌にも陰性菌にも強です。異型肺炎のマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラにも強い。弱点は誤嚥性肺炎の原因菌である嫌気性菌に効かないこと。

⑤マクロライド

・ニューキノロンの下位互換。グラム陽性菌に効果を発揮。グラム陰性菌には弱い。ただマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラにも効果を発揮。嫌気性菌には効きません。使い勝手はいいです。


※出典:m3


他にもアミノグリコシドとテトラサイクリンがありますが割愛させていただきます。理由はちょっと疲れたからです笑


【具体的な抗生剤の使い方】

・以上をまとめるとこんな感じになります。

①気管支炎(グラム陽性菌)・扁桃炎(溶連菌)

・ペニシリン(錠剤サワシリン・錠剤オーグメンチン)、マクロライド(錠剤ジスロマック)、ニューキノロン(錠剤レボフロキサシン・錠剤アベロックス)から選びます。

②定型肺炎(肺炎球菌)

・ペニシリン(点滴ユナシンS)、ニューキノロン(点滴パシル)から選びます。

③異型肺炎(マイコプラズマ等)

・マクロライド、ニューキノロン(点滴パシル)から選びます。でもまあニューキノロンが多いかな。

④誤嚥性肺炎肺炎(嫌気性菌)

・ペニシリン(点滴ユナシンS)、カルバペネム(点滴フィニバックス)、クリンダマイシン(点滴ダラシン)から選びます。

⑤尿路感染(大腸菌等)

・膀胱炎:第三世代セフェム(錠剤フロモックス・錠剤メイアクト)。

・腎盂腎炎:第三世代セフェム(点滴ロセフィン・点滴スルペラゾン)など。

⑥胆嚢炎(大腸菌・クレブシエラ等)

・第三世代セフェム(点滴ロセフィン・点滴スルペラゾン)。

⑦蜂窩織炎やおでき(黄色ブドウ球菌)

・第一世代セフェム(錠剤ケフラール)、マクロライド(錠剤ジスロマック)、ニューキノロン(錠剤レボフロキサシン・錠剤アベロックス)から選びます。


種類多いですよねぇ。

これでも自分が処方する薬のみ記載しました。

医者は日々診療で経験を積み重ねながら自分なりのレシピを作っていくものです。参考程度にとどめて下さいね。



本日は以上です。お付き合い頂きありがとうございます。それではみなさん、お疲れ様です。


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