※【病気解説一覧】のリンクを記事に最後に貼ってあります。様々な病気や検査について語っておりますので、普段から気になってるものを探していただければ幸いです。



下痢の患者さん、多いです。


まあ大体は胃腸炎か過敏性腸症候群の類いなんですが、たまに難病と言われる病気の方もいらっしゃいます。


そんな訳で、今回は下痢について、特に潰瘍性大腸炎を中心にお話したいと思います。


何故なら患者さんの数も増えてる印象がありますし、早期の治療介入が大事だからです。



自分は下痢の患者さんにまず次のように説明します。


・下痢の原因はだいたい3つに分けられます。


感染性胃腸炎

突然出てくる5-6回以上(出来れば10回以上欲しい)の下痢で、2-3日ピークで、1週間で治る。ウイルス性ではなく細菌性ならもう1週間かかることもある。


炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎)

1ヶ月以上続く3-10回下痢で、ジャムみたいな粘血便や透明か白っぽい粘液便が混じる。思い返してみれば10代の頃からそういうことがあった。


過敏性腸症候群

男の子に多い。学生時代から下痢になりやすくて、多めの水分や油や乳製品でひどくなる。


他にも抗生剤なんかが原因の薬剤性腸炎もありますが、まあ大体こんなもんです。


感染性胃腸炎は既に記事がありますのでこちらをどうぞ。


過敏性腸症候群ともう1つの炎症性腸疾患クローン病については、また別の機会にご説明させていただきます。


特にクローン病の本質は回腸末端の粘膜全層性炎症で、故に目立つのは下痢というよりも右下腹部痛です。今度時間をかけてじっくりと......。



さてさて。それでは今回の目玉潰瘍性大腸炎についてご説明させていただきます。


【潰瘍性大腸炎の基本】

・残念ながら完全には治ることはない一生お付き合いする下痢の病気です。

・自分で自分を攻撃する自己免疫性疾患で、リウマチとかの膠原病と同じ部類に入ります。まあアレルギーみたいなもんです。

・炎症は粘膜、粘膜下層に及びます。ここが全層性のクローン病と異なる点です。

※出典:メディカルブレイン

炎症がひどく長いと癌の発生もあり得えます。10年以上経過で数%のリスクです。

・癌の発生を防ぐ意味でも、悪い状態(活動期)を良い状態(寛解期)にして維持することが大切です。

※出典:持田製薬株式会社

・だからこそ年1回必ず大腸内視鏡を行い、粘膜の評価と癌の発生がないかをチェックします。

症状と内視鏡所見が基本的に一致するので、外来では「便の回数、出血と粘液がないか」を訊かれます。

※出典:持田製薬株式会社


【潰瘍性大腸炎の検査】

①採血

・慢性炎症、貧血、低栄養が目立ちます。粘膜の炎症が長く続き、栄養も消費されてしまい、潰瘍からは出血が続くからです。

・具体的にはHbAlb(アルブミン)低下血小板血沈(赤沈)上昇です。

②CT

・典型的な所見は直腸から口側大腸に広がる大腸壁の肥厚です。

直腸で炎症が始まり、口側へ広がっていくからです。

③大腸内視鏡

・血管透見の消失、びらん、発赤、膿性粘液、潰瘍、これらが連続して認められます。

※出典:持田製薬株式会社


【潰瘍性大腸炎の範囲】

・前述したように潰瘍性大腸炎の炎症は直腸から始まり、口側に向かっていくとされてます。

※虫垂開口部もそうなんですが、今回は置いておきます。

そして潰瘍性大腸炎は炎症の範囲で次のように分類されます。

・直腸だけなら直腸炎型。

・直腸からS状結腸なら左半大腸炎型。

・直腸から盲腸までなら全大腸炎型。

※出典:IBDステーション


何故こんな分類をするかって言うと、範囲が広い方が癌化しやすいですし、治療の方法論とも関係するからです。では治療に参りましょう。


【潰瘍性大腸炎の治療】

・既に書いたように炎症のある活動期と炎症のない寛解期があります。

・活動期から寛解期にもっていくことを寛解導入、寛解期を保つことを寛解維持といい、治療はこの2つに分けられます。

寛解導入の薬は5ASA製剤、ステロイド、α4インテグリン阻害薬、免疫調節剤、生物学的製剤、JAK阻害薬、血球除去療法などがあります。

寛解維持の薬は5ASA製剤、免疫調節剤、生物学的製剤、JAK阻害薬などです。


【潰瘍性大腸炎の薬】

それではそれぞれの薬について説明して参りましょう。最近、本当に色んな薬が出てきました。選択肢が増えるのはいいことですが、それぞれの副作用をよく聞いて使った方がいいですね。


①5ASA製剤(メサラジン)

・基本中の基本の薬。まずはこれをベースとして始め、他と組み合わせることが多いです。

寛解導入にも寛解維持にも使えます

・通常の薬と異なり、血中濃度を高めるというよりも、直接その場に薬を届けて効果を発揮する感じです。

・最も副作用が少ないので安心して使えます。ただ肝障害とかはあります。

・飲み薬、坐薬、注腸があります。炎症の範囲によって使い分けます

・まず飲み薬で始めます。最大1日4800mgまで増やせます。

・それでも寛解が得られない場合、直腸なら坐薬、直腸からS状結腸なら注腸と併用するんです。

※出典:持田製薬株式会社


②ステロイド(プレドニゾロン)

副作用が多いので寛解導入のみに使用されます。

・5ASA製剤を複数使っても寛解導入ができなかった場合、次に使われることが多いです。

・錠剤、点滴、坐薬、注腸、フォームと色々あり、やはり炎症の範囲によって使い分けます。

・直腸なら坐薬、直腸からS状結腸なら注腸かフォーム、全結腸なら副作用覚悟で錠剤です。錠剤は血中濃度を高めて効果を発揮します。

・副作用は感染しやすくなる、長く使ってると骨粗鬆症になる、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になりやすくなる、などです。

・2週間1日20-40mg投与、その後減らしていき終了します。※入院なら1mg/kgというもっと多い量で使えます。


③α4インテグリン阻害薬(カログラ)

・新薬です。免疫の伝達回路を遮断します。

寛解導入のみに使います。

・ステロイドに比べると副作用が少ないんでその代替として使われることが多いです。

・実際、副作用は咽頭炎、頭痛、肝障害など軽いものが多いんです。

・ただし起きるとやばい進行性多巣性白室脳症を防ぐために「最大6ヶ月、休薬8週」を守る必要があります。これがあって使いづらく避ける医者も多いです。

・飲み薬です。


④免疫調節剤(イムラン)

寛解導入にも寛解維持にも使えます

・ステロイドを減らしていく時に悪くなってしまいやめられない時、併用してステロイド終了にもっていくことが多いです。

・最終的に5ASA製剤との組み合わせで使うことが多いです。

・ただ効果が出るのに数ヶ月かかります。少量の25mgから始めて少しずつ増やすのがコツです。

・また採血項目のMCV100以上が効いてる目安です。参考にして下さい。

・副作用は感染しやすくなる、肝障害、血球減少などです。やはり少量から始めたいです。

・尿酸の薬との併用で副作用が強くなることに注意です。

・飲み薬です。

※同じ種類にタクロリムスもありますが、寛解導入のみで、頻回の血中濃度測定が必要で、とにかく煩雑で外来での使用は事実上不可能であり、自分はあまり使いません。


⑤生物学的製剤(レミケード)

寛解導入にも寛解維持にも使えます

・5ASA製剤にα4インテグリン阻害薬、或いはステロイドを使ってもダメな時、5ASA製剤を残してこの薬を使います。

・副作用は感染しやすくなる、B型肝炎が悪化することがある、発熱などです。

・点滴です。0週目、2週目、6週目、その後8週毎のように使います。前投薬を含めると3時間くらいはかかります。


⑥JAK阻害薬(ゼルヤンツ)

・新薬です。寛解導入にも寛解維持にも使えます

・免疫の伝達回路を遮断します。

・副作用は感染しやすくなる、血球減少、肝障害、悪性リンパ腫のリスクが上がるなどです。ちょっと使いづらいんですよねぇ。

・飲み薬です。


⑦血球成分除去療法(Lcap Gcap)

寛解導入のみです。

・炎症で活性化されてしまった白血球などを、透析の応用でフィルターを使って除去します。

・腎臓内科の先生に依頼します。


⑧手術(大腸全摘)

・活動期の治療を全てやってもダメな時、出血が止まらない時、潰瘍が深くて穴があいてしまった時などに行います。

・1回ですむ方法と2回に分けて行う方法があります。炎症が強いと縫ったところがくっつきにくいので状況に応じて一時的に人工肛門にすることもあります。

・外科の先生から「こうなる前にもっと早くもってこい」と言われることもあるんですが、最終手段なので緊急手術以外ではよく考える必要があると思っています。



長くなりました。


他にもストレス、感染性胃腸炎でも悪くなることがあること、安定してるならクリニックでもいいですが、不安定なら設備や入院施設がある病院の方がいいことも付け加えさせていただいて終わりに致します。


それでは皆さん、お疲れ様です。



他の病気解説一覧はこちら。


「いつでもCTその日に説明」「発熱外来」「同じ日に胃カメラ大腸カメラ」「予約なしインフルエンザワクチンコロナワクチン」、他にもニーズに応えられるよう出来ることはなんでもやってます。