政治哲学
マイケル・サンデル教授による「ハーバード白熱教室」は、昨年テレビで放映されて話題になった後も、多くの人を惹きつけているようですね。
私から説明するまでもないことですが、ジョン・ロールズなどのリベラリズムが「正義」を「公正」の観点から構成し直したのに対し、自由至上主義(リバタリアニズム)から批判が加えられ、その後、共同体の重要性を前提として、その中における個人の価値観を尊重する共同体主義(コミュニタリアニズム)を主張するサンデル教授が登場しました。
これまでの日本では、このような政治哲学を真正面から論じることはあまりなかったように思います。
もちろん、政治学や哲学の分野、特に学会や一部の誌面では議論されていたのでしょうが、それが実際の政治に影響を及ぼしたり、政治の側がそれに興味を示すことは少なかったように思います。
よく言われるように、日本では右肩上がりの経済成長が長く続いたため、資源の分配や所得の再分配といった財政の役割が上手く機能していたかのように見えたことが、政治哲学が語られなかった、あるいは必要とされなかった一因のように思います。
しかし、バブル経済が崩壊し、1990 年代の長い停滞、財政赤字の拡大、景気の回復が見込めない状況などが続く中、現在は、否応なく「再分配」の意義や効果・影響を真剣に考えざるを得ない状況に立ち至っており、それぞれの拠って立つ政治理念、政治哲学が問われていると思います。
税と社会保障の一体改革について議論する際、単に増税の可否だけに焦点が当てられがちですが、議論の前提となる政治的理念、政治哲学を国民に示しながら、納得が得られる公正な再分配の方法を話し合っていく必要があると思います。