トメが入院して5日経った。
ふつうの入院のように、家族が病室まで付き合うこともなく、
入院支度を整えてあげることもなく、
どんな病棟なのか私たちは見ることもないまま、現在に至っている。
「入院? けっこうです!」
あの日、完全拒否モードに突入したトメを落ち着かせるため
看護師さんや相談員さんが、さりげない演技で頑張ってくれた。
「じゃあ、とりあえずどんなお部屋なのか、見るだけ見てみます?」
と見学に連れてってくれて、ハイ、ジ・エンド。
トメはそのままスンナリ(なのか?)入院と相成った。
私も夫もトメに「じゃあね」すら言えずじまいだったのだが、
医療保護入院だと、こういうパターンが珍しくないらしい。
入院セットを申し込んでいたので、入院準備も上靴(リハビリシューズ)のみ。
ほぼ、身ひとつで入院した形だ。
入院するとは思えないほど身軽で、なおかつ経済的なのがありがたい。
トメにはこれまでなんどか「施設入所」を打診していた。
強気な言動とは裏腹に、失禁などが増えたいたせいか
トメは以前より気弱になっていて、なんとなく「もう観念」という感じはあった。
とはいえ、今回の入院はきっと青天の霹靂だったろう。
ちょっとかわいそうな気もしたが、
「罪悪感をもつ必要はないですよ。今まで十分やってきたのだから
これからはご家族も一休みしてください」
と医師から繰り返し言われたことで、もう割り切ることにした。
病室に連れていかれた後、トメはしばらく不機嫌で、
入院着になることも拒否していたらしい。
本来なら、入院着に着替えたあと、私服は家族が持ち帰るのだが
「今日のところは難しそうなので、次回まで預かっておきますね」と看護師。
次回。次回っていつなんだろう・・。
とりあえず、入院後の面会は可能とのこと。
事前予約すれば、3人まで面会することができる。
地味にコロナ感染症が増加傾向らしく、面会は衝立越しらしい。
ただ、面会可といっても、近々には無理で
「1週間~10日くらいは面会を遠慮してほしい」と指示があった。
家族の顔を見て、里心がつかないように? なのかな。
そこは言われた通りにしようと思う。無理に会いたいわけでもないしね。
それにしても、だ。
意外なほど、入院以降は病院からの連絡がほとんどない。
既往症の薬の件と、徘徊の転倒で歯医者にかかったことについて
医療情報の連携の確認があったくらいだ。
けっこうアッサリというか、クール。
入院時の面談が時間も内容もかなり濃密だったので、当然の結果なのかも。
でも、気になるといえば気になるのだ。
入院生活のあれもこれもが知りたい訳じゃないけれど、
ちゃんと食べているのか、眠れているのか、排泄問題はどんな感じなのか、
ほかの患者と問題を起こしてやいないか・・と。
わざわざこちらから聞くものでもないし、緊急性もないから、放っておけばいいのかな。
むしろ、あえて距離を置くよう仕向けられている感もある。
入院させて安心したはずが、まだ安心しきれていない自分がいる。
手枷足枷をようやく取り外してもらったのに、
まだ、その解放感に慣れなくてちょっと戸惑っている、そんな今日この頃。